フィンランドのグラスアートミュージアムを巡る。栄枯盛衰の歴史といま
先日、タンペレから車でヘルシンキに戻る途中に、二つのグラスミュージアムに行ってきました。
フィランドグラスといえば、東京都庭園美術館で「フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン」の展示を見に行ったことを思い出します。
今回はそのことにも触れ、フィンランドのミュージアムのご紹介をしていきます。
日本のフィンランドグラスアート展で見たもの
フィンランドのガラス作品といえば建築家で有名なアルヴァ・アアルトの「サヴォイ」、その妻のアイノの「アイノ・アアルトシリーズ」が特に有名で、日本でもおしゃれなカフェに行くとインテリアになっていたり、ドリンクのタンブラーとして出て来ることはよくあり、作者は知らなくても、見たことある!という人は多いのではないでしょうか。
わたしも、もともとその程度の知識しかありませんでした。



専門的なことは、「フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン」展示会を特集した以下の美術手帖さんの記事を読んでいただければと思うので、ここではわたしの拙い感想を述べていくだけになりますが、とても良い展示会でした。
1917年のフィンランド独立後、発展の目覚ましかったガラス産業。
当時製作された多くのアート作品と、現代アーティストの作品を一度に日本で鑑賞できる貴重な機会でした。
展示自体がとても素晴らしいのもあるのですが、東京都庭園美術館というハコ自体がとても美しくて、展示品とその背景が調和し一つ一つの作品が持つ新しい表情に気づかせてくれました。


19世紀の作品全体としては、整ったバランスの中に計算された揺らぎのあるデザイン、自然の造形をシンプルにアイコン化された紋様や形状、複雑さと温かみのある色合いが印象的で、親しみやすさや懐かしさを感じるデザインでした。



フィンランドのデザインは、テキスタイルや建築、家具にも共通して、シンプルな美しさと機能美がありますが、ガラス作品にも、改めて同様のアイデアが見られます。
観賞用であっても、無駄なものがない。
自然にあるものを均整のあるシンボリックなデザインに落とし込む力は、日本のキャラクタライズする力と似て、双方の文化が得意とするところなのかと感じます。
色合いにおいても、鮮やかであっても繊細で複雑な、淡い色合いは日本の伝統色とも深く共通するところがあり、私が感じた”親しみやすさや懐かしさ”はここからきているもののようです。
そして、共通しているところがあっても確実に日本とは違うもので、コンテキストが近いからこそ、日本人にはその違いが斬新に目に映り面白く捉えられることでしょう。




フィンランドの”グラスロード”の今
フィンランドのガラスの歴史
フィンランドでは16世紀にはすでにガラス工場があり、その後フィンランドのガラス産業は発展し当時フィンランドを統治していたスウェーデンでその製品の多くが使用されていました。
しかし、ロシアに併合後、フィンランドガラスはスウェーデンの市場を失い、戦争や物価上層、他国の競争に敗れて衰退していましたが、ロシアからの独立後、デザインで差別化を図ろうと1940年代に再び大きく花開くこととなります。

しかし、1960年のオイルショック後は、多くのメーカーが淘汰され、残ったものの幾つかはイイッタラに吸収されました。
現在も、フィンランドの主要なガラス製品メーカーとしてはイイッタラが機能し、そのほか小さな工房が点在するのみです。
さて、19世紀に多くのガラスメーカーのあったフィンランドですが、首都ヘルシンキと工業都市タンペレを続く道には、その多くが集まっていました。
その中心に、かつて大きなガラス工場があったリーヒマキ(Riihimäki)があります。
ここに、今回訪れたフィンランドガラス博物館(The Finnish Glass Museum)があります。
また、その道の少し先にイイッタラ・ガラス博物館(Iittala Glass Museum)があるのです。
フィンランドガラスの歴史を見て感じる
フィンランドガラス博物館(The Finnish Glass Museum)はヘルシンキ中央駅から電車で約1時間半ほどのリーヒマキ(Riihimäki)駅の近くにあります。(駅からバスで10分)


リーヒマキは「ガラスの街」として有名で、今では大きな製作所はありませんが、大きなグラスアートのビエンナーレが開催されていたりと今もガラスにゆかりのある街です。
リーヒマキのガラス作品は今でもアンティーク市場で人気があります。
そして、かつてガラス工場だった歴史的な建物がリノベーションされ現在はミュージアムになっています。
ここではガラス製作の歴史と、フィンランドの工業や商業としてのガラス製造、アートグラスの歴史を見る事ができます。
個人的に面白かったのは、商業ボトルデザインを、自分も普段使っているイイッタラのグラスのデザイナーがかつて手がけ、現在もそのデザインがボトルに継承されているのに気づいたこと。隠されていた宝ものをみつけた気分です。
以下、印象に残った展示の写真に説明を添えてみました。





ウォッカボトルのデザイン。なんとこちらも巨匠タピオ・ウィルッカラの作品。今も同じデザインがボトルに採用されています。現在売られているイイッタラの商品の中にも似ているものがありますよ。もちろんタピオのデザインです。








ちなみにグラスミュージアムの向かいには狩猟博物館があります。フィンランドの野生の動物や狩猟の歴史に興味がある方はどうぞ。
世界的評価の高いイイッタラガラスのミュージアム
次にやってきたのはガラスだけではなく陶器などテーブルウェアを手がけるイイッタラ(IITTALA)のガラス博物館(Iittala Glass Museum)。
リーヒマキ(Riihimäki)駅から電車で再び約1時間半のイイッタラ(IITTALA)駅の近くのイイッタラヴィレッジにあります。(駅から徒歩で10分)

元工房の建物が現在は博物館になっていて、イイッタラのガラス製造の歴史を見ることができます。
イイッタラは1940年代〜の著名作家のシリーズが今でも人気が高いですが、日本人作家を含む、若手作家の作品も展示されていました。
以下に詳細を画像とともに紹介していきます。














展示を見た後は、別棟のイイッタラのアウトレットショップでお買い物!
フィンランドのイイッタラ各店ではヴィンテージ商品を置いていることが多いのですが、今回の二つの博物館で展示されていたデザインで気になったものと同じシリーズが販売されていて、記念にお買い上げ。
現在は絶版になっているものも多いので、ヴィンテージコーナーは必見です。



別の建物には現在も使われているガラス工房があります。
ミュージアムで展示されていた作家たちがそこで活動しているのかもしれません。
おわりに
フィンランドのデザインと歴史においてガラスは切っても切り離せられないものです。
過去のような繁栄は今見られることはありませんが、そのパッションは今も息づいているし、当時から遺されたものは今もフィンランド人の生活に溶け込んでいます。
また、その多くは実は日本でも知らず知らず目にしていたり、使われていたりするので、それらがどうやってフィンランドで作られてきたかを見るのも楽しいです。
もし、興味があればぜひ、今回ご紹介したミュージアムに訪れてみてください。
ヘルシンキからグラスアートゆかりの地を巡ってタンペレまで道草しながら行く旅も面白いかもしれません。

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