ベトナム|16回目渡航|600km周遊へ挑戦|北ベトナムの原風景に出会う
パスポートを片手に海を渡るのは、もう16回目である。
それでも旅がやまないのは、地図の上でいまだ青く塗り残された、国境沿いの僻地が呼んでいるからだ。
本来なら今回の本命は、ベトナム最北端の秘境ハザンだった。しかし8月は雨や霧の影響を受けやすく、数日かけて広範囲を周遊するハザンでは、一度天候が崩れると旅程全体への影響が大きい。
無理をして挑むより、今回は勇気ある撤退を選び、ベストシーズンまで持ち越すことにした。
その代わりに選んだのが、マイチャウ、プールオン、モクチャウ、そしてタースアである。今回はマイチャウを拠点とし、現地の天候を見ながら行き先を柔軟に変更できる旅程を組んだ。
ハザンのように「行くしかない」旅ではなく、「その日の空を見て決める」旅。柔軟性を最優先に、16回目の僻地巡礼へ出発する。

■これまでの15回渡航の振り返り
これまで訪れた場所は赤、まだ足を踏み入れていない場所は青で示している。前回の渡航では、カオバン、バベ国立公園、ホイアン、チャム島を赤へ塗り替えることができた。
・赤マーク:訪問済み
・青マーク:計画中

塗りつぶした赤が増えるたびに、逆に青い空白の存在感が増していく。これがこの旅を16回も続けさせている理由なのかもしれない。
■前回の失敗を糧に|柔軟性を持たせた複数プラン
前回は悪天候に直撃され、予定の大幅な変更を強いられた。その反省を活かし、今回は最初から「変更前提」で組んでいる。
宿泊やバスは初日以外は事前予約せず、現地の空模様を見ながらその場で判断する。ベトナム国内線の利用がなく、しかも観光シーズンを外している今回だからこそ選べる柔軟な旅のスタイルだ。
プランA (7日):マイチャウ → プールオン → モクチャウ→タースア
プランB (5日):マイチャウ → プールオン → モクチャウ
基本方針
マイチャウを拠点としてバイクを借りて、周遊する計画だ。
プランAの総走行距離は約600kmとなる。疲労や天候、そのときの気分に応じてプランBへ切り替える。
滞在日数に余裕があれば、一度ハノイへ戻り、まだ青いままのカットバまで足を延ばす欲張りプランも考えている。
■狙うスポットたち
600kmのループを示してみた。

600kmとは、どれくらいの距離なのだろうか。
東京〜神戸、大阪〜博多、サンフランシスコ〜ロサンゼルス、ミラノ〜ローマほどの距離である。
空路では、ハノイ〜ダナンやホーチミン〜ダナンに近い距離となる。
■ マイチャウ(Mai Chau)
Hang Chiều(チエウ洞窟):朝の涼しい時間帯に登る本格鍾乳洞。幻想的な鍾乳石が広がる洞内を探検できる。
Avana Retreat(カフェ利用):高級リゾートの絶景カフェ。圧倒的スケールの朝カフェと棚田を撮影できる。
Mai Chau Ecolodge(展望テラス):テラスからマイチャウ盆地を一望できる絶景スポット。
Thung Khe Pass(トゥンケー峠):白き石灰岩の断崖絶壁が広がる、圧巻の峠道。
サームクー(Xăm Khòe地区)周辺 山岳ロード&田園散策:つづら折りの山岳ツーリングと、のどかな田園風景が広がるエリア。
サームクー周辺温泉:野趣あふれる露天の共同浴槽でツーリングの疲れを癒せる温泉スポット。
■ プールオン(Pu Luong)
Kho Muong Village(コォムオン村):断崖に囲まれた谷底の集落。棚田と石灰岩の景観が広がる、プールオン屈指の秘境。
Hang Dơi(プルオン・コウモリ洞窟):コォムオン村近くの洞窟。洞窟探検やコウモリの群生を観察できる。
Hieu Waterfall(ヒエウ滝):棚田と滝が段々に連なる美しい滝。高台からの景色が抜群。
Eo Ken Viewpoint(エオケン展望台):プールオン全景を一望できる高台の絶景ビュースポット。
■ マイチャウからモクチャウへの移動
Ba Khan Village(バーカン村):巨大貯水池と静かな棚田が織りなす隠れた美景スポット。
Hang Kia Sky Coffee(雲海カフェ):高台テラスから山並みや雲海を望む絶景カフェ。
■ モクチャウ(Moc Chau)
Heart Tea Hill(ハート型茶畑):美しくハート型に整えられたモクチャウ象徴の茶畑スポット。
Ban Ang Pine Forest(バンアン松林):広大な松林と湖が広がり、爽やかな高原の雰囲気を散策できる。
Dai Yem Waterfall(ダイイエム滝):吊り橋や遊歩道から滝全体を見渡せる、雨季におすすめのダイナミックな滝。
Bach Long Glass Bridge(ガラス吊り橋):谷底が透ける巨大なガラス張り吊り橋。絶景展望デッキも併設。
Cloud View Coffee(夕日カフェ):テラス席から夕日と空のグラデーションを眺められる特等席。
Chieng Khoa Waterfall(チェンコア滝):観光地化されすぎていない、美しい水面が魅力の隠れ家的滝。
■ タースア(Ta Xua)
QL37を走る絶景区間:タースアを代表するワインディングロード。棚田や山並みが続く爽快な絶景ルート。
Đỉnh Gió(風の丘):タースア随一の夕景スポット。コーヒー片手に素晴らしい夕焼けを堪能できる。
恐竜の背中(尾根・日の出・雲海):細い尾根道を歩く、タースア最大の代名詞的絶景ポイント。
Mỏm Cá Heo(ドルフィンクリフ):岩の突端から険しい渓谷や雲海を見下ろせるスリル満点の撮影地。
Hang Tàu村(秘境モン族集落):携帯電話の電波が不安定で、昔ながらの暮らしが残る究極の隠れ里。
■往路2.7万円の幸運|そして復路の後悔
往路:VNで思わぬ安値に
中東紛争が起きる前に航空券を確保できていたのは、今思えば幸運だった。
セントレア発ハノイ行きの直行便を、VN(ベトナム航空)とVJ(ベトジェットエア)の2社で比較してみると、意外な結果になった。
通常なら格安航空会社(LCC)のVJが安いと思っていたが、このときはフルサービスキャリアのVNの方が安かったのである。
購入価格は片道約2.7万円だった。
「LCC=最安」と思い込まず、その都度比較してみることの大切さを改めて実感した。
復路:待って損した5.5万円
一方、復路は完全に判断ミスだった。中東紛争のニュースが流れた直後に買っておけばよかったものを、「すぐ落ち着くだろう」と値下がりを待ってしまったのだ。
結果は逆で、日を追うごとに価格は上昇した。しびれを切らして購入したのは5.5万円。執筆時点では、格安のVJでさえ片道7万円近い価格まで上昇していた。
昨年までのような「思い立ったら気軽に飛べる」ベトナムの空気は、正直もうない。中東紛争の余波は、こんな形でも旅人の財布を直撃している。
それでも、青いままの地図を見るたびに、行かない理由より行く理由の方が増えていく。
■最後に
8月はスコールが予想される時期である。僻地の山岳エリア周遊はバイク前提であるため、安全第一を最優先に旅を続けたい。
旅程を詰め込みすぎず、焦らず冷静に判断したい。
ラオス国境沿いに広がるベトナム北部の魅力も、しっかり記事として届けたいと思っている。次は、どの青を赤へ塗り替えられるだろうか。
老若男女のベトナム旅行小説『このままでいいのか』を始めました。もし良ければ一度ご覧になってください。
