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マーケティング本のペルソナ設計は、採用ターゲット設計と同じである。

「どんな人を採りたいか」が、ふわっとしている。

採用の相談を受けるとき、最初に聞くことがある。

「どんな人を採りたいですか」

返ってくる答えは、たいてい曖昧だ。「優秀な人」「コミュニケーション能力が高い人」「主体的に動ける人」——どれも、悪くはない。でも、具体性がない。

この曖昧さが、採用がうまくいかない原因の一つになっている。誰を採りたいかが曖昧だと、どこで募集すればいいか、どんなメッセージを出せばいいか、何を基準に選べばいいかが、すべてぼやけるからだ。

ここで役立つのが、マーケティングの「ペルソナ設計」という手法だ。

マーケティングでは、「誰に売るか」を、具体的な一人の人物像にまで落とし込む。この手法は、そのまま「どんな人を採りたいか」という採用ターゲット設計に使える。今回は、マーケティングのペルソナ設計を、採用に応用する方法を考えてみたい。


ペルソナ設計とは何か

マーケティングのペルソナ設計とは、「ターゲット顧客を、具体的な一人の人物として描く」手法だ。

「30代女性」という曖昧な括りではなく、「34歳、都内在住、共働き、子どもが一人、平日は時間がなく、休日にまとめ買いをする、健康志向だが手間はかけたくない」——というように、まるで実在する一人の人物のように、具体的に描く。

なぜ、ここまで具体的にするのか。

具体的な人物像があると、その人に「刺さるか」を判断できるからだ。「この商品を、この人は買うか」「このメッセージは、この人に響くか」——具体的な一人を思い浮かべることで、判断の精度が上がる。

「みんなに売れる商品」を目指すと、誰にも刺さらない。「この一人に刺さる商品」を目指すと、結果的に同じような多くの人に刺さる。これが、ペルソナ設計の考え方だ。


採用ターゲット設計に、そのまま使える

このペルソナ設計は、採用ターゲット設計にそのまま応用できる。

「優秀な人」という曖昧な括りではなく、「採りたい人物」を具体的な一人として描く。

例えば、こうだ。「32歳、現在は大手企業で〇〇の業務を担当、安定した環境にいるが裁量の少なさに物足りなさを感じている、家庭があり転職には慎重だが、より成長できる環境を探している、年収は現状維持以上を希望」——というように、具体的に描く。

ここまで具体的にすると、いろいろなことが見えてくる。

この人は、どの媒体を見ているか。どんな言葉に反応するか。何を不安に感じ、何を求めているか。どんなメッセージなら、この人の心が動くか。

「優秀な人」では、これらは考えられない。でも、具体的な一人を描くと、すべてが具体的に考えられるようになる。


ペルソナ設計が、採用の各段階を変える

採用ターゲットをペルソナとして設計すると、採用の各段階が変わる。

母集団形成が変わる

ペルソナが「どの媒体を見ているか」がわかれば、そこに絞ってアプローチできる。あらゆる媒体に出すのではなく、ペルソナがいる場所に集中できる。

メッセージが変わる

ペルソナが「何を求め、何を不安に感じているか」がわかれば、それに応えるメッセージを作れる。スカウト文も、求人票も、ペルソナの心に刺さる内容になる。

選考基準が変わる

ペルソナが明確だと、「この候補者は、ペルソナに近いか」で判断できる。「なんとなく良さそう」という曖昧な判断ではなく、明確な基準で選考できる。

口説き方が変わる

ペルソナが「何を重視するか」がわかれば、内定後の口説き方も変わる。その人が大切にしているものに焦点を当てて、入社の意思を固めてもらえる。

ペルソナという一人の具体像が、採用活動全体の解像度を上げる。


ペルソナ設計の注意点

ただし、ペルソナ設計には、注意点もある。

一つは、「妄想のペルソナ」を作らないことだ。

ペルソナは、具体的であるべきだが、根拠のない想像で作ってはいけない。実在の人物——例えば、自社で活躍している社員、過去に採用したかった候補者——を起点に作ると、現実的なペルソナになる。「こんな人がいたらいいな」という願望ではなく、「実際にこういう人がいる」という現実から作る。

一つは、「ペルソナに縛られすぎない」ことだ。

ペルソナは、判断の軸を与えてくれる。でも、ペルソナと完全に一致する人しか採らない、となると、視野が狭くなる。ペルソナはあくまで「中心となる像」であり、それに近い多様な人を受け入れる柔軟さも必要だ。

一つは、「ペルソナを関係者で共有する」ことだ。

採用に関わる人全員が、同じペルソナを共有していないと、判断がバラつく。ペルソナを言語化し、面接官や経営層と共有する。これで、全員が同じ像を見て採用できる。


なぜ採用は、ペルソナ設計をやらないのか

マーケティングでは当たり前のペルソナ設計が、なぜ採用では行われていないのか。

一つは、採用を「マーケティング活動」として捉えていないからだ。マーケティングの手法を、採用に応用するという発想がない。

一つは、「優秀な人なら誰でも」という発想が抜けないからだ。ターゲットを絞ることへの抵抗がある。「絞ると、母集団が小さくなるのでは」という不安だ。

でも、マーケティングが教えるのは、「絞った方が刺さる」という逆説だ。ターゲットを絞ることは、母集団を小さくすることではない。「刺さる確率を上げる」ことだ。

「誰でもいい」という採用は、「誰にも刺さらない」採用になる。具体的なペルソナを設計することが、結果的に、より多くの「採りたい人」に届く採用につながる。


最後に

マーケティング本のペルソナ設計は、採用ターゲット設計と同じだ。

「誰に売るか」を具体的な一人の人物として描くペルソナ設計は、そのまま「どんな人を採りたいか」という採用ターゲット設計に使える。

具体的なペルソナを描くと、母集団形成、メッセージ、選考基準、口説き方——採用の各段階の解像度が上がる。「優秀な人」という曖昧な括りでは見えなかったものが、具体的な一人を描くことで見えてくる。

注意点は、妄想ではなく実在の人物を起点に作ること、縛られすぎないこと、関係者で共有することだ。

「優秀な人なら誰でも」という採用は、誰にも刺さらない。マーケティングのペルソナ設計を採用に取り入れて、「この人に届ける」という採用に変えること。それが、採用の精度を大きく変える。

次にマーケティングのペルソナ設計の本を読んだら、それを「採用ターゲット設計の教科書」として読んでみてほしい。


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