Sky星を紡ぐ子供たち。祈りと自己犠牲のエンディングはまるでオスカー・ワイルドの幸福な王子
自己犠牲、博愛の精神。
そういった物語に触れるといつも、もしも自分が同じ状況なら…と考えてしまう。
私は"顔も知らない誰か"のために自分の幸せを犠牲にすることができるのだろうか。
◇◇◇
わさびさんの情熱的な紹介記事で知ったSky。
美しく幻想的なグラフィックに惹かれ、いつかやろうと決めていた。音楽が良いというのもポイント高い。
スマホ版、Switchダウンロード版、どちらも無料でプレイ出来るので時間が出来たタイミングで気軽に始めてみた。
のだが、久しぶりのゲーム。
あまり説明もなく進むのでイマイチよくわからない。
とりあえずステージごとのゴールを目指す。


美しいフィールドに飛び出す。
緑溢れる世界。雨に濡れる森。かつての文明が廃れてしまった様子が寂しい荒野に砂漠。
チベット仏教を思わせる寺院?に、ガムランに似た調べが流れる神殿。
なんかフレンド申請してくれてる…?
勇気を出して友達、お願いします!
え、手を繋いだと思ったら一気にゴールまで連れてってくれた?
ふぇぇ!?精霊探したかった…
意思疎通が上手くできないまま、流されるままに進む。(フレンドになってくれた親切なお方、その節はお礼も言えず本当にすみませんでした)
精霊を救う!なんてほとんどスルー状態で、気付いたら最終ステージ。
暗黒竜に怯えボロボロになりながら、ようやく辿り着いたその先のタイトルは
「原罪」
…ドキリとした。
ものすごく馴染みのない、宗教色の強いタイトル。
そういえばSkyはアメリカの会社が開発したゲームだった。
そこからはプレイヤーにとってのライフである光の翼を、一つひとつ行き倒れている子供達に分け与えていく展開。
そう、最後のライフが尽きるまで。
まるで、オスカー・ワイルドの幸福な王子だ。
◇◇◇
幸福な王子。
小さい頃にその童話を知ったとき、私はしきりに「王子は痛みを感じないのか」が気になった。
だって無造作に目玉代わりのサファイアをくり抜いて貧しい民に与えている。
銅像だから金箔を剥がしても痛くはないのだろうが、サファイアを失って目が見えなくなったという描写はあったから、もしかして…。
この、身を削ってでも誰とも知らぬ民を助けようとする王子のことが、得体のしれない不気味なものに思えて子供心に怖かった。
そしてそれはそのまま博愛精神への疑問として心に残った。私には到底理解できない、はるか高みにある崇高な理想だと。
大人になった今、この童話を冷静に思い返すと。
きっと王子は痛みなど感じなかったのだろうと思う。
あの一見崇高な自己犠牲に思える行為は、痛みを知らないから出来たのだ。
そして今更ながらに気付く。
真に自分を犠牲にしたのは、世間知らずの善良な王子に付き合わされたツバメだった。
◇◇◇
仲間が南へ渡っていく中で、世間知らずのオウジサマを1人にできなかったツバメ。
暖かい南に移動しないと死んでしまうのに。
自己犠牲なんて、ガラじゃないのに。
絆されてしまったツバメ。
あぁ、こう考えるとツバメの自己犠牲が理解できる。これはやりかねない。
そして最後、ツバメが死んで初めて。
王子は大切なものを失う痛みを知るのだ。
Skyのエンディングを眺めながら、ツバメの自己犠牲は理解できても結局博愛の精神ってやつはいくつになってもわからないな、と思った。
◇◇◇
ゲームは転生?のような形で再び始まる。
また地道に光の翼を集めて、あの過酷で暗い世界に取り残されている子供たちを少しでも多く救いに行くのだ。
それはまるで、本当の痛みを知らずに己の金箔を剥がし、ツバメに託した王子のように。
◇◇◇
Skyの本番は2周目以降、と言うプレイヤーさんはたくさんいる。
新たな発見があったり、思いもよらない展開になったりする、と。
確かに初見ではわからないことばかりだった。
世界の解釈はプレイヤーそれぞれに委ねられていて、みんな思い思いの時を過ごしながらこのファンタスティックな世界を考察している。
そんなファンの方々からしたら、一周しただけで何がわかるのか、という気分だろう。
それでも。
祈りの際に流れるガムランっぽい調べ。
光の子の視線。
そういったものから感じる、静かで強い「祈り」の力に圧倒されてしまった自分は、まだ2周目に踏み出せていない。
ツバメを通すことでしか自己犠牲を理解出来ない自分は、いまだ王子の博愛の精神を信じ切れていないから。
面白かったとか好きとか、そういった単純明快な表現でこのゲームを説明することは出来ない。
姫を救って魔王を倒してハッピーエンド、という世界に慣れすぎてしまった自分は、この異文化を飲み込むのに時間が必要なのだ。
◇◇◇
ハッピーエンドを無意識に求める自分は、王子とツバメの死が逆だったらいいのにとすら思う。
先に王子が限界を迎えて鉛の心臓だけになって、それをツバメが咥えて南に旅立つ。
鉛だから重たくて咥えられないかもしれないけれど、でもツバメは頑張る。
世間知らずなボンボンに南を見せてあげたいから。
そして南にたどり着いたツバメに、仲間が寄ってくる。
「随分遅かったじゃないか。」
「まあね、酔狂な王子に付き合ってたからね。」
「お前も随分な変わり者だよ。」
暖かい土地で、王子は1人じゃない。
ツバメももう1人で頑張らなくていい。
そんなエンドがあればいいのに。
とはいえ、オスカー・ワイルドの諸事情を考えると当時は2人とも天上の世界に行くしかなかったわけで。現世で結ばれない2人が死んでハッピーエンドと聞くと途端に陳腐な物語に思えてくるから不思議だ。
いや、こんなこと考えるのはやめよう。
童話は童話のままで。
いつか何も考えずにSkyの美しい世界を飛ぶことができるように。
雑なエンドですみません。

