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【#2】10年付き合って結婚した彼女が11年目に別人になった話

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第2話 決断

返事をもらった時には、すでに0時を過ぎていた。

正確に言えば、僕たちが付き合い始めたのは0時5分。

だから本当の記念日は次の日になる。

でも、そんな細かいことを気にする高校生ではなかった。

体裁上――

いや、ほぼノリで。

僕たちはタケシとモモエと同じ記念日ということにした。

今考えると、かなり無茶苦茶である。

でも高校生なんて、そんなもんだ。


そして迎えた、初デート。 クリスマスイブ。

今でも、不思議なくらい覚えている。

どこへ行ったか。 何を食べたか。 何をもらったか。 全部覚えている。

あの日、僕たちはオムライスを食べた。

なぜオムライスだったのかは覚えていない。

高校生だから背伸びして高級ディナーでも行けばよかったのかもしれない。

でも当時の僕たちにとっては、それで十分だった。

そして、プレゼント交換。

僕からミナにはピアスを渡した。 高校生なりに頑張って選んだ記憶がある。

少ないバイト代の中で、 「喜んでくれるかな」 なんて考えながら買った。

そしてミナから僕へのプレゼントは、 キーケースだった。

これが少し面白い。

あれから約20年経った今も、 僕はその時もらったキーケースを使っている。

ボロボロだ。 革も擦れている。 正直、もう買い替えた方がいい。

でもなぜか捨てられない。

一方で、当時僕があげたピアスはというと――

妻いわく、 「とっくに失くした」 らしい。

ちょっと悲しい。

いや、かなり悲しい。

20年使ってるこっちの気持ち。

でも、そういうところも含めてミナらしい。


高校時代の僕たちは、 今思えば本当に普通のカップルだった。

ショッピングモールに行って、 フードコートでご飯を食べて、 意味もなくブラブラして。

時にはタケシとモモエも交えて、 ダブルデートなんかもした。

映画を観たり、 ゲーセンに行ったり、 くだらないことで笑ったり。

当時は特別なんて思っていなかった。

でも今振り返ると、 たぶんあれは、 絵に描いたような青春だった。


そして大学生になった。


ここから少しだけ、大人に近づく。

とは言っても、 順風満帆な遠距離恋愛――

とは言い難かった。

二人とも地元を離れた。

僕は神奈川。 ミナは埼玉。

絶妙に遠い。 会えないほどではない。 でも、簡単には会えない。

もしお互いの住んでいる場所まで行こうものなら、 軽く2時間以上かかる。

だから自然と、 渋谷 あたりが“中間地点”になった。

思い出の場所、と言うほどロマンチックではない。

ただ、お互い来やすかった。 それだけだ。

でも、会えるだけで嬉しかった。

……とは言え、大学時代の僕たちは、 正直かなりすれ違っていた。

ミナは看護師の学校。 忙しい。 めちゃくちゃ忙しい。

課題も実習もあって、 普通の大学生とは生活リズムが違う。


一方の僕はというと――

かなり自由だった。 いや、自由というか。

単位だけはなんとか確保して、 それ以外は、 バイト、バイト、バンド。

そんな生活。 将来のことなんて、 あまり真剣に考えていなかった。

本気で、 「バンドで食っていく」 と思っていた。

ライブハウスに通って、 スタジオ入って、 朝まで語って。

今思えば、夢見がちな大学生だったと思う。

だから会う頻度も少なかった。

月に1回。 多くて2回。 でも、不思議と続いた。

ケンカもほとんどなかった。 別れる理由なんて見当たらなかった。

ちなみに――

タケシとモモエは 大学生になって割とすぐ別れてしまった。 少し驚いた。

でも、中学から5年付き合ったんだから、 十分すごい。 そう思った。

まさか、その時の僕が、 10年以上付き合うことになるなんて、 これっぽっちも思っていなかった。

そして大学4年。

ミナは短大だったから、 一足先に社会人になった。

看護師1年目。 周りの友達は就活をしていた。

スーツを着て、 説明会に行って、 「将来」を考え始めていた。

でも僕は違った。 就職したくなかった。 本気で。

バンドを続けたかった。 売れると思っていた。 いや、 売れると信じていた。

ただ、それと同時に。 ミナのことも、本気で大切だった。

だから思った。

看護師として働き始めたミナに、

“売れないバンドマン”の彼氏 は迷惑なんじゃないか。

将来なんて見えない男と一緒にいて、 幸せになれるのか。


だったら――


自分から離れた方がいい。


そう思った。


そして僕は、はっきり言った。


「別れよう」



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