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【#4】10年付き合って結婚した彼女が11年目に別人になった話

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第4話 突然終わる夢


大学を卒業したあとも、
僕は就職しなかった。

昼はフリーター。

夜はライブハウス。

そんな生活を続けながら、
相変わらずバンド活動をしていた。

今思えば、
かなり危うい生活だったと思う。

でも当時は、
不思議と焦っていなかった。

ミナがいたからだ。

「私が養うから、好きなだけ好きなことすればいい」

あの言葉は、
僕の中で想像以上に大きかった。

たぶん僕は、
あの言葉に甘えていた。

大学最後の1年間は、
授業もほとんどなかった。

だから、
スタジオに入って、
ライブをして、
時間ができれば埼玉のミナに会いに行く。

そんな日々だった。

将来なんて、
正直よくわからなかった。

でも、

「いつかなんとかなる」

と本気で思っていた。

若かったんだと思う。

卒業して半年くらい経った頃。

少しだけ、
夢が現実に近づいた気がした。

ツアーバンドの
オープニングアクトに
ブッキングしてもらえるようになった。

ライブハウスの空気。

転換中のざわめき。

少しずつ増えていくお客さん。

「このまま行けるかもしれない」

そんな期待が、
確かにあった。

もちろん、
売れていたわけじゃない。

お金なんて全然なかった。

でも、
夢には近づいている気がしていた。

少なくとも、
当時の僕はそう思っていた。

そして――

そのタイミングで、
父親から連絡が来た。

会社が倒産した。

実家のローンが払えない。

助けてほしい。

頭が真っ白になった。

当時の僕は、
自分の生活だけで精一杯だった。

フリーターをしながら、
バンド活動を続ける。

貯金なんてほとんどない。

将来設計もない。

夢だけで生きていた。

でも、
現実は急にやってくる。

待ってくれない。

あの頃の僕は、
初めて気づいた。

夢を追うことと、
生活することは、
別なんだと。

結局、
僕はバンドを辞めた。

いや。

辞めるしかなかった。

仲間には申し訳なかった。

ライブハウスに行くのも、
少し怖くなった。

夢を諦めた人間みたいで。

実際、
そうだったのかもしれない。

そして僕は、
ミナのいる埼玉で就職した。

同棲を始めた。

人生が、
急に現実的になった。

ワンルーム。

安い家具。

少ない給料。

でも、
不思議と嫌じゃなかった。

仕事から帰ると、
ミナがいる。

それだけで、
ちゃんと生活できている気がした。

たぶんこの頃、
僕は初めて

「結婚」

を少しだけ現実として考え始めたんだと思う。

ただ――

今振り返ると。

この頃の僕はまだ、
“支えられる側”
のままだった。


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