イタリア古建築をつくる【第9話】 カラヴァッジョにどやされた
【ポポロ門とサンタ・マリア・デル・ポポロ教会①】
完成間近の双子だが、クーポラや鐘楼、オベリスクには金色に輝く十字架を載せるつもりだ。

ただ、十字架を取り付けるのは、献堂直前の作業となる。
十字架にする予定のエッチングパーツ(1/700「日本海軍艦艇の手すり」か1/72「欧州の門扉」を加工する)は入手済みなのだが、制作途中で取り付けたりすれば、とても最後まで無事でいるとは思えない。
実際、制作中の双子は手から何回もころげ落ちている。小さくて丸っこいため、机の下でしばし行方不明になったし。先にエッチングパーツを取り付けていたら破損は免れなかっただろう。
また、双子の周辺建物をベースとなる地面に並べてみたところ、最初につくったレイアウトがじつにいいかげんなことも分かった。建物の位置関係だけでなく、Googleマップをもとに描いた道路もけっこうずれまくっていて、例えば、バブイーノ通り(三叉路の東側。スペイン広場につながっている)は道幅2本ぶんほどの誤差があった。
「要修正を認む」である。
そんなこんなで双子の仕上げは後回しにすることにして、ポポロ門側の周辺建物をつくっていくことにした。
じつは、ポポロ門の西隣には、美術ファンにお馴染みのサンタ・マリア・デル・ポポロ教会がある。
カラヴァッジョの《聖ペテロの磔刑》と《聖パウロの回心》、ベルニーニの《ハバククと天使》が飾られていて、まさにバロック美術の宝庫だ。われわれ遠征隊の本来の目的も、ポポロ門をくぐって双子教会を見ることよりも、この教会のバロック作品を堪能することであった。
とはいえ、模型づくりとなると話は別だ。
当初は、この教会を作り込むつもりはまったくなかった。というか、細かくつくるのは難しいと思っていた。建物の形状があまりにもわかりにくいからだ。
Googleマップの航空写真を見ると、教会の周りに建物が密集していて、どこからどこまでが教会なのかよくわからない。例えば、教会の南側にレオナルド・ダ・ヴィンチ博物館が隣接しているのだが、その屋根にはクーポラが載っていて教会の一部のようにも見える。教会の建物なのか、周辺建物のなのか判然としないのである。
もうひとついえば、建物の魅力が双子ほどではない(ごめんなさい)。
ファサードはルネサンス様式で美しいし、建物内部もバロックとルネサンスの調和の極地として高く評価されているのだが、とにかく建物の範囲があいまいで、なかなか模型づくりのモチベーションが上がらない。正直に言うと、双子のようなかわいらしさが感じられないのだ。
そんなわけで、ポポロ門につながる周辺建物の一部として、単純な立方体の組み合わせで済ませようしたとたん、心の中の天空で雷鳴が轟きわたり、UFOが忽然と現れた。

UFOはしばらく筆者の頭上にとどまっていたが、突然『マグマ大使』のゴア円盤の出現シーンのように目前に迫ると、底面に描かれた大きな顔をこちらに向け、人を殺しかねない形相で「まさか、俺の教会をちゃんとつくらないつもりじゃないだろうな!」と大音声で威嚇してきた。
カラヴァッジョだった。
そう。カラヴァッジョにどやされた。

小心者の筆者としては「も、もちろんつくりますよ。当然ですよ」と答えるしかない。「Google 3Dマップのおかげで、教会のかたちや立体形はある程度わかりますし、双子の周辺建物をつくった経験もいかせますから、大丈夫です」と平身低頭した。
そんな経緯もあって、サンタ・マリア・デル・ポポロ教会の会堂をちゃんとつくっていくことにした。

次回は、心の中のカラヴァッジョにどやされない程度に教会の周辺建物を作り込んでいく。色も塗ろう。
【第10話】ポポロ3兄弟の記念撮影 につづく
【第8話】量産型街並の建設は続く にもどる
【第1話】『サン・ピエトロが立つかぎり』があるかぎり にもどる
