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行政書士が逮捕?自賠責保険請求と行政書士「知らなかった」だけでは説明がつかない


—自賠責保険請求業務の適法性と別件逮捕の蓋然性について—  


事件発生:福岡で行政書士逮捕──報道が伝えた事実

2026年1月21日、福岡で「行政書士が逮捕」というニュースが流れて、司法書士の地面師関係で落ち着いたかと思いきや、またもやざわつきが再燃しました。
自賠責保険請求で非弁活動疑い 福岡の行政書士法人副代表を逮捕

報道内容のポイント整理(誰が/何を/どんな疑いで)

誰が?
福岡市東区に事務所を構える「ピンチヒッター行政書士法人」の副代表の方がが逮捕されました。
何をしたとされている?
2023年から約1年間、交通事故の被害者6人から依頼を受け、報酬を得る目的で保険会社との交渉や手続きに関与した疑いがもたれています。
どんな疑い?
弁護士資格のないにもかかわらず、報酬を得る目的で代理的な交渉・異議申し立て等の法律事務を扱ったとして、弁護士法違反(非弁活動)の疑いです。

報酬について
報酬として数十万円を受け取った疑いがあると報じられています。

容疑者の供述(報道)
容疑者は、警察の調べに対し「この業務が弁護士法違反に当たるとは知らなかった」と一部否認しているとされています。

個人的な見解:これは別件逮捕だと思っている

個人的な見解として、今回の逮捕は別件逮捕であろうなーと感じています。
弁護士法72条違反(非弁活動)自体は確かに法令違反であり得る行為ですが、警察がわざわざ身柄確保に踏み切るほどの単純な事件とは考えづらいという印象があります。
実際の報道でも、「異議申し立て等を行った」とされる行為に対して逮捕がなされていますが、その論理だけで大規模捜査が動く現実感は乏しい部分があります。  

一部の報道でもありますが、この逮捕が単なる非弁行為の摘発ではなく、より大きな捜査の一環としての「別件逮捕」である可能性が高いと考えています。それについては、なかなか踏み込んだ内容になってしまうので有料部分にて書いています。


平成26年の大阪高裁判決を知っている?

「この判例って最近の話かな…?」と思っていたのですが、令和8年の今ではもう10年以上前の判決になっていました。
行政書士会って、研修があまりちゃんとやられていないですよね。
なのでこういうのを伝える人もあまりおらず、知らない人が多いんじゃないかなという気がしています。
この報道をいい機会というと失礼にあたってしまうかもですが、改めて振り返ってみたい判例の話です。

実は、平成26年の大阪高裁の判断でこの自賠責保険に関して裁判所から明確な評価が出ています

ここまでで「今回の逮捕=非弁行為かどうか」という報道の話をしました。
容疑者の方は「この業務が弁護士法違反に当たるとは知らなかった」と容疑を否認していると報道でありました。
でも。。。これって。。。
実は、平成26年(2014年)6月12日付で大阪高等裁判所が、行政書士と自賠責保険に関する行為について具体的な判断を出しているんです。
オレンジ法律事務所
残念ながら「知らなかった」は不勉強だなという評価をせざるを得ないところです。
そんな平成26年の裁判がどのようなものだったのかを紹介します。


平成26年の大阪高裁の裁判は、ざっくりこういう流れでした(時系列)

1)交通事故が起きる

まず前提として、交通事故の当事者(被害者)がいて、
当然ですが、治療・通院・仕事の支障などで心身ともにしんどい時期に入ります。


2)被害者が行政書士に相談・依頼する

被害者は、保険の手続きがよく分からない、相手の保険会社とのやり取りがしんどい、という理由で、
交通事故を扱う行政書士に相談し、業務を依頼します。


3)契約が結ばれる(報酬の決め方が特徴)

依頼にあたって、行政書士と被害者の間で契約が結ばれます。


4)行政書士が実務を進める(書類作成+中身の組み立て)

行政書士は、必要書類を集めたり、申請書を整えたりします。


5)結果が出る(認定・支払い等)

手続きが進むと、等級認定や支払いなど、何らかの「結果」が出ます。
その結果に応じて、行政書士側は「契約通り報酬をください」と請求します。

ここから話が揉めます。


6)被害者側が報酬の支払いを拒む(ここで争いが顕在化)

被害者側(被害者自身がお亡くなりになって途中で相続人が引き継ぐ形でした。)は、こう主張します。

  •  弁護士法72条の問題で、契約自体が無効だから、報酬は払えない

要は、「払いたくない」わけですが、その建付けとして“契約がそもそも成り立たない”という理屈で争うわけです。


7)行政書士側が提訴する(民事裁判になる)

ここで行政書士側が「報酬を払ってください」と裁判を起こします。


8)第一審(地裁)の判断内容

この事件では、まず第一審(地方裁判所)で判断が示されています。

第一審の裁判所は、行政書士が行った業務について、形式的には「書類作成」に見える部分が含まれていることは認めつつも、業務全体の目的や内容を総合的に見ると、単なる書類作成にはとどまらないと判断しました。

具体的には、

  • 交通事故という、もともと権利関係の争いが生じやすい案件であること  

  • 行政書士が、結果(等級認定や支払額)を意識した形で書類の内容を組み立てていたこと  

  • 報酬が、作業量ではなく結果に結びつく形(成功報酬的)になっていたこと  

といった事情を踏まえ、実質的には、依頼者の権利を実現するための「法律事務」に踏み込んでいると評価しました。

つまり、第一審の裁判所は、当該契約は弁護士法72条に違反する非弁行為を内容とするものであり、契約自体が無効であるとして、行政書士側の報酬請求を認めませんでした。

この第一審判決に対し、
行政書士側は「あくまで書類作成業務であり、行政書士の業務範囲内だ」として不服を申し立て、事件は控訴審、すなわち大阪高等裁判所へと進むことになります。


9)大阪高裁の判断(ざっくり結論)

控訴審である大阪高等裁判所も、結論としては第一審の判断を維持しました。
つまり、行政書士側の主張は認められず、報酬請求は否定されたということになります。

大阪高裁が重視したのは、「形式的に何と呼ぶか」ではなく、実際に何を目的として、どこまで踏み込んで行われた業務なのかという点でした。

行政書士側は控訴審で、
・自分が行ったのはあくまで書類作成であること
・交渉や代理をしたわけではないこと
を強調します。

しかし、大阪高裁は、
行政書士が等級認定や支払額といった結果を意識し、依頼者に有利になるよう事実の取捨選択や表現の組み立てを行っていた点に着目し、それは単なる書類作成ではなく、実質的に法律事務に当たると評価しました。

そのうえで、

  • 交通事故という性質上、権利関係の争いが生じやすい案件であること  

  • 依頼者に有利な結果を得ることを前提に、事実の選別や表現の組み立てが行われていること  

  • 成果と結びついた報酬体系になっていること  

といった事情を総合すると、この業務は単なる書類作成の範囲を超え、依頼者の権利を実現するための法律事務に当たると評価せざるを得ない、と判断しました。

その結果、大阪高裁も第一審と同様に、当該契約は弁護士法72条に違反する非弁行為を内容とするものであり、契約は無効、行政書士側の報酬請求は認められないと結論づけています。

10)この大阪高裁の判断が示している「線引き」ははっきりしている

ここで整理しておきたいのは、この大阪高裁の判断が
「行政書士が自賠責保険に関わる業務は全部ダメだ」
と言っているわけではない、という話ではありません。

裁判所が示している線引きは、明確です。

問題にされたのは、行政書士がその業務の中で、交渉や権利実現を目的とした関与をしていないかという非弁行為にあたるところがあるかどうかの一点です。

行政書士が予定されている業務は、法律上、

  • 書類を作ること  

  • 書類を整えること  

  • 書類を提出すること  

ここまでです。

それ以上のこと―相手方とやり取りをして条件を動かすこと、結果(等級や金額)を取りに行くこと―そこまでを業務として引き受けることは、予定されていません。

法律上の整理としても、行政書士は「代理人」ではありません。
依頼者の意思に基づいて書類を整え、届ける「使者」です。


11)それでも、自賠責の書類作成業務が不要という話ではない

ここまで読むと、
「じゃあ、自賠責の書類作成業務なんて、やらない方がいいのでは?」
と思われる方もいるかもしれません。

ただ、個人的には、必ずしもそうではないと考えています。

自賠責の書類作成業務には、今でも行政書士が関与する意味がある場面はありますし、現実的に助かっている人がいるのも事実です。

ただ、この話をここで書き始めると、かなり長くなってしまうので、今回は割愛します。


12)次は「なぜ別件逮捕と感じたのか」という話へ

以上を踏まえたうえで、
冒頭に触れました、「別件逮捕なのではないか?」ということの私の考察を書いていきます。

ここから先は、やや踏み込んだ内容になるため、有料部分で書くことにします。


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