見出し画像

宝塚歌劇 舞台感想 桜嵐記

珠城りょう、美園さくらの卒業公演となった、桜嵐記。
私の好きな、上田久美子先生の作品です。
楠木正成の息子、正行の人生を描いた作品で、事前の予備知識はあまり持たずに見たのですが、嗚咽を押さえるのに苦労するほど、胸震わせる作品でした。観終わった時、隣の席で涙を抑える見知らぬ人に、「これは、名作ですね」と話しかけてしまいました。

ネタバレ大いにありの舞台感想なので、ご了承ください。
一度見ただけなので、勘違い思い違いあるかと思います。
二度目を観た後で、追記、訂正あるかもしれません。

二度目の感想はこちら。
https://note.com/otobokedansyaku/n/n4fed2b127247

まず、驚いたのは、観客の拍手まで演出しようとするウエクミさんの、姿勢です。一人の男が現れ、観客を南北朝の時代へと誘います。その際、主役が登場するまで、拍手は開演アナウンスを含め、ご遠慮下さいと言うのです。

これは面白い演出です。
結果、観客はストーリーの流れをつかみ、その他の登場人物を把握した上で卒業される珠城さんの登場を待つわけです。
そこに珠城さん登場!いよっ、待ってました!の拍手です。
まるで、歌舞伎の大向さん気分じゃないですか。

まあ、ツイッターなどのタイムラインを観ておりますと、拍手は観客の自由にするもので、指示されてしたり、やめたりするもんじゃないというご意見も見受けられましたが、私はこの演出、とても好きでした。

光月るうさん演じるこの一人の男、プログラム上で楠木正儀(老年)と書かれておりまして、要するに月城かなとさん演じる楠木正儀の後の姿ってことがプログラム上でわかってしまうんですね。ここ、プログラム上は、謎の老人みたいな表記にして欲しかったなあと思います。
最後の15場で、そうか、この男は正儀だったのかと思わせる方が絶対に良かったのに……勿体ないなあと感じました。弁内侍(老年)も同様。
悲劇の最後が、この二人で救われるように終わるので、気づかずに観ていた方は、そうかあ!そうだったのか!と思えたことと思います。

物語は本当に丁寧に作られていると感じました。

老年の正儀の説明で、物語の流れがわかったところで、華やかなプロローグ。そして、北朝の高師直のいやらしさを見せておいて、羽曳野での弁内侍との出会いを。そして、その後の戦いで正行の人間力を見せて、弁内侍の心がほぐれていく様子などをスピーディーに見せていきます。正時と百合の平和な再会をさらりと挟んで、南朝への戦勝報告の場面となります。
和睦を申し出ようと提案する正行に、南朝の人々は反対する。武士を見下した馬鹿な公家ども……と思わせておいて
ここで、ウエクミさんは、南朝の公家たちの思いを見せるんですね。その心の内には、親への思いや悲願を抱えているがゆえに、正行に無茶な要求をしてしまうのだという人間臭さを見せるんですね。
ここ、上手いなあと感じました。この人々の気持ちがなければ、どうしてこんな馬鹿な公家の為に正行が命を落とさなきゃならないんだ?と思うところですが、それぞれの思いを知れば、だから正行は主君を裏切れないのだと納得し、その思いがたまらなく切なく感じられるんですよね。

面白くない作品は、こういう心の説明がないですよね。ウエクミさんは、そのへんがとても丁寧だと思います。

そして弁内侍をめとらせようとする後村上天皇と正行の友情の様な関係と足利尊氏が正行に北朝への寝返りをすすめるシーン、正行たち兄弟の思いを挟みながら、正行という人間の素晴らしさとあとわずかで命を終えてしまうという見えた結末を暗示させて、
「ああ、どうしてこんな素晴らしい武将が、愛する人とも添えずに命を落とすのか」と観客の泣きの感情を高めていく……

そして、弁内侍との別れのシーン。桜嵐の中でのこのシーンも、無駄なセリフや歌を極力排して、音楽と動きで哀しみを見せてしまう。
泣くやん、泣くやん、二人と桜と音楽で泣くやん。もう、号泣やん。
ウエクミの企み通り、私号泣でございます。

そっから、激しい戦の場面へ。
そして、正行の死。弁内侍への思い。

でもって老年の正儀と弁内侍のシーンね。
ここで初めてこの二人が40年後の正儀と弁内侍だったとわかるように、プログラム作っておいた方がよかったと感じました。

そして、弁内侍が思い起こす、出陣式の日。
晴れやかに、爽やかに、美しく発せられる、珠城さんの
「お別れでございます」(訂正 これ幻聴ですかね?「お別れを、皆さま」でした)がご卒業とかぶって、嗚咽です。
ズカオタの皆様は、こぶしを握り締めて嗚咽に耐えたことと思います。
私は、耐えれず、ごあっふう!
周辺の皆さまは、家で「今日さあ、宝塚観に行ったら、おばちゃんが嗚咽して泣いてたんよ」と噂してるかもしれない……

いやあ、ウエクミさんの珠城さんへの花向けの作品。
素晴らしい名作だと、思いました。

正行は珠城さんのイメージにピッタリの役柄で、今後歴史上の人物として楠木正行が登場すれば、珠城さんが頭に浮かぶだろうなと思うはまりっぷりでした。正時、正儀の兄弟は、対照的な設定がきいていて、鳳月さん、月城さんの美しさ、動きの綺麗さにうっとりします。
海ちゃんも、短い絡みで夫婦の愛の深さを見せてしまう巧みさが光ってました。美しく品のある暁千星さんの後村上天皇、貫禄のある風間柚乃さんの足利尊氏、周りをひれ伏させる恐ろしさの一樹さんの後醍醐天皇。脇を固める演者も素晴らしい集中力。
高師直の紫門さんの化けっぷり。まあ、本当に憎らしい。本当に紫門さんなのか?と何度も見ましたよ。そして千海さんのジンベエの存在感。ウエクミさんの演者の選び方の上手さ、指導の的確さに脱帽です。
さくらちゃんは、歌の上手さで空気を支配していましたね。復讐心だけの娘が、正行との出会いによって柔らかく変化していくのもよかった。

一点、”そんな山道女一人で行けば犯されるのが関の山”って感じのセリフ(不確か)があったと思うのですが、おばちゃんの心をざわつかせる言葉なんですよね。「犯される」っていうのは……
fffで、まあやに「犯された女」と歌わせていた時には、そう思わなかったんです。戦争という、人間の愚かしい行為の果ての究極の怒りをこめて、あえて歌詞にした感じだったから、おぞましい言葉である必要性を感じたんですよね。でも、今回は、わりと軽い使われ方で、”乱暴される”では、駄目だったんだろうか?と感じました。まあ、感じ方だとは思うのですが……

ま、今回感じたのはこんな感じでしたでしょうか。
もう一度だけ、観に行くのでその後で追記するかもしれません。
でも、いい芝居を観ると細胞が活性化するな。
感動の涙は、心の栄養。
また、頑張ることができるよ。ありがとう、ウエクミさん、ありがとう月組の皆さま。

Dream Chaserの感想はこちら
https://note.com/otobokedansyaku/n/n509bf268417c

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集