独立に向いてる?向いていない?|私は会社員に戻ることを選んだ(後編)
はじめに
前編では、13年間勤めた会社を辞め、
専門学校の講師になった頃の話を書きました。
講師という仕事は、とても楽しく、
私に新しい世界を見せてくれました。
でも、その経験を通して見えてきたのは、
「楽しい仕事」と「自分に向いている働き方」は、
必ずしも同じではないということでした。
今回は、その続きを書いてみたいと思います。
✦1|楽しい仕事と、不安定な収入
講師の仕事は、本当に好きでした。
学生たちと専門分野について語り、
一緒に作品を作り、成長を見守る。
これまでの仕事とはまた違う喜びがありました。
一方で、現実には 避けられない問題もありました。
学校には夏休みや春休みがあります。
学生にとっては長期休暇ですが、
私にとっては授業がありません。
授業がなければ、
収入もありません。
好きな仕事だけでは生活できない。
その現実を前に、私は学校が休みの日は 事務職のアルバイトをするようになりました。
平日は講師。
学校が休みになればアルバイト。
仕事が嫌だったわけではありません。
むしろ、ありがたいことに 働く場所はありました。
でも、いつも頭の片隅では 数か月先の生活を考えていました。
「この収入で大丈夫だろうか」
「次の学期は何コマ担当できるだろう」
「来年も同じように仕事はあるだろうか」
好きな仕事をしながらも、 生活への不安は消えませんでした。
✦2|私には、この不安定さが合わなかった
講師業を続ける中で、私は初めて 「自営業に近い働き方」を経験しました。
すると、会社員だった頃には 考えなくてよかったことが、 次々と仕事の一部になりました。
数か月先の仕事を考えること。
体調を崩したら、そのまま収入が減ること。
社会保険や老後の資金を自分で準備すること。
収入に波があることを前提に 生活を組み立てること。
もちろん、これを楽しめる人もいます。
営業そのものが好きな人もいますし、
自分で仕事を作ることに やりがいを感じる人もいます。
でも、私は違いました。
一番大きかったのは、 「先が読めない状態」が 思っていた以上にストレスだったことです。
毎月決まった収入があること。
ある程度先の予定が見えること。
それが私にとっては、 安心して仕事に集中できる土台だったのです。
これは、能力の問題ではありません。
努力が足りなかったわけでもありません。
ただ、働き方との相性だったのだと思います。
✦3|会社員に戻るという選択
そんな頃、ありがたいことに、
「会社員として戻らないか」
という話をいただきました。
私は少し考えたあと、
その話を受けることにしました。
不思議だったのは、そのとき、 「負けた」とはまったく 思わなかったことです。
独立した人の中には、 会社員へ戻ることを 失敗のように感じる人もいるかもしれません。
でも私には、そんな感覚はありませんでした。
むしろ、
「自分にはこちらの方が合っていたんだ」
という安心感の方が大きかったのです。
一度経験したからこそ、比較ができました。
会社員だから安心、
自営業だから自由。
そんな単純な話ではありません。
実際に両方を経験したことで、 自分にとって心地よく力を発揮できる環境が どちらなのかが分かったのです。
その経験は、今でも私の財産になっています。
✦4|独立に向いている人、向いていない人
この経験を通して、私は 「向き・不向きはある」と 考えるようになりました。
もちろん、人は経験を積めば成長します。
だから、「向いていないから絶対に無理」 という話ではありません。
それでも、働き方との相性はあると思うのです。
例えば、独立に向いている人は、
・収入の波をある程度受け入れられる人
・営業や仕事を作ることも楽しめる人
・自分で判断することが苦にならない人
・不確実な状況でも動き続けられる人
そんな傾向があるように感じます。
一方で、会社員という働き方が 向いている人もいます。
・チームで成果を出すことが好きな人
・安定した環境で専門性を発揮したい人
・生活基盤が整っている方が安心できる人
・仕事そのものに集中したい人
どちらが優れているという話ではありません。
必要とされる力が違うだけです。
世の中では、「独立=自由」「会社員=安定」 という言葉をよく目にします。
でも実際には、独立にも責任がありますし、
会社員にも自由はあります。
大切なのは、世間のイメージではなく、
自分がどんな環境で力を発揮しやすいかを 知ることなのだと思います。
✦5|40〜50代で独立するなら、準備を
最近は、40代、50代で 独立を考える方も増えています。
それ自体は、とても良いことだと思います。
年齢を重ねたからこその経験や専門性は、 大きな強みになります。
ただ一方で、20代や30代とは 前提条件が違います。
再就職の難しさ。
体力の変化。
家族の状況。
住宅ローン。
老後資金。
考えなければいけないことは、 確実に増えます。
だから私は、独立を考えるなら 「勢い」よりも「準備」を 大切にしてほしいと思っています。
例えば、
数か月分以上の生活費を確保しておくこと。
副業として収益が出る状態を作ってから 独立すること。
継続的な仕事の見込みを立てておくこと。
こうした準備は、 夢を諦めるためではありません。
安心して挑戦するためです。
不安が少ないほど、
人は本来の力を発揮しやすくなります。
だからこそ、焦って飛び込むより、 土台を整えてから進む方が、 長く続けられる働き方に つながるのではないかと思っています。
まとめ
私は、会社員を辞める経験をしたことを 後悔していません。
講師という仕事に出会えたことも、
自営業に近い働き方を経験できたことも、
どちらも人生に必要な時間でした。
だからこそ、会社員へ戻るという選択にも 価値があると伝えたいのです。
会社員か、
自営業か。
正解は一つではありません。
大切なのは、 自分が安心して力を発揮できる 働き方を選ぶことです。
独立が向いている人もいます。
会社員という環境で力を発揮する人もいます。
どちらが優れているのではなく、
自分に合っているかどうか。
もし今、働き方に迷っているなら、 「どちらが正しいか」ではなく、 「どちらなら長く続けられそうか」という視点でも、 一度考えてみてください。
その問いが、 これからの働き方を選ぶ ヒントになるかもしれません。
深鈴

