ハワイ編第8話 Alter ego「分身」
暫くの間、僕もMrs.パーマーもこの時間の太陽をじっと見ていた。
太陽の輝きは、その分身をハレクラニのプールにも
映し出していた。
そして太陽の分身は無数に存在して、その輝きを
いたるところに分配していた。
今、僕たちは太陽とプールの太陽の分身の両方を浴びている。
その輝きに包まれて、Mrs.パーマーが言った。
「どう?わかった?」
「陽の当たる場所だけが、太陽の存在ではないとわかりました」
「そうね。あなたはやはりあなただった」
「ありがとう」
僕たちは太陽に向けて軽くグラスを重ねた。
カウアイ島の植物もマウイ島もそして僕自身も
生まれ変わることができる。
何かをきっかけに。
そして、僕はMrs.パーマーに問いかけた。
「あなたは誰なのですか?」
Mrs.パーマーは一瞬、眉をひそめたが、にっこりと笑った。
「私はそうね、ここに来て、永遠を感じてるの」
「永遠?」
「そう。時が止まるっていうでしょう?」
「ええ」
「でも、それは一瞬の時もあれば、長く続くこともあるのよ」
「‥」
「時間はね、その気になれば、自分で止めることができるの」
「つまりそれは、ある種の努力や能力も必要ということですね」
「そうかもしれない。でも、あなたは既にそれを持っているのよ」
Mrs.パーマーはそう言って、デッキチェアから立ち上がって
サングラスをその上に置いた。
あのバーで、初めて見た彼女の美しい瞳の記憶がよみがえった。
凛々しく曇りのない、意志の強い瞳。
そして、白い水着に包まれた手足の長いその美しい肢体。
「あなたにも私のことを話さなきゃね」
そう言って、心地いい滑らかな風と共に揺れている
太陽の分身の中へ彼女は飛び込んでいった。
ハワイ編第9話へ続く
■ ハワイ編 第9話「Mrs.パーマーの物語-はじまり - Mrs. Palmer: The Sun's First Light」

