ハワイ編第6話「太陽と時間の物語」
Mrs.パーマーが、太陽について、僕に役割があると言ったあの日から、数か月が過ぎていた。
僕は相変わらず、仕事に追われていた。
だがそれは、残念ながら、彼女の言うような意味での「戦略的思考」に基づいたものではなかった。
それでも、仕事があるというのは、有難いことだった。
僕は仕事の合間に、何度目になるのか分からないまま、太陽にまつわる映画を繰り返し観ていた。
『太陽がいっぱい』(Plein soleil)
『太陽はひとりぼっち』(L'eclisse)
『太陽が知っている』(La Piscine)
そして、
『ショック療法』(Traitement de choc)
『レッド・サン』(Soleil Rouge)
太陽は、単なる光ではなかった。
それは、人間の本質を露わにする存在だった。
ゴッホの「種まく人」に描かれた太陽は、黄色く燃えている。
欧米の子供たちは、太陽を黄色で描くことが多いという。
一方、日本の子供たちは、太陽を赤で描く。
『レッド・サン』という題名は、
単に色を示しているのではなく、日本人そのものを象徴しているのかもしれなかった。
太陽は、文化によって違う意味を持つ。
だが、その本質は変わらない。
僕は、村上春樹の『東京奇譚集』を読み返した。
その中の「ハナレイ・ベイ」を読み終えたあと、吉田羊が主演した映画も観た。

そして僕は、カウアイ島へ向かった。
Mrs.パーマーに出会う前、
彼女がかつて訪れた場所を、自分の目で見てみたいと思ったからだった。
シダの洞窟。
ワイメア渓谷。
雨上がりの太陽が、すべてを新しくしていた。
濡れた葉は光を返し、
山肌は、まるで呼吸をしているかのように見えた。
太陽は、そこにあるものを変えるのではない。
ただ、それを見えるようにしているだけだった。
つまり、目を凝らさなくてはならないということ。
僕は、その光の中で、立ち止まっていた。
Mrs.パーマーの言葉を思い出していた。
「あなたには役割がある」
太陽について書くこと。
それが何を意味するのか、
僕はまだ、完全には理解していなかった。
だが、ひとつだけ確かなことがあった。
僕はすでに、太陽について学び始めていたのだった。

ハワイ編第7話へ続く
ハワイ編 第7話 「午後の太陽ーハレクラニで再会した日」
