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ポルノグラフィティ『アゲハ蝶』――冷たい水を求めて|あのころを振り返る #9

先日、ポルノグラフィティの名曲『アゲハ蝶』がドラマ主題歌に決定したというポストが目に入った。
何かの間違いかと思ったが、10月スタートの「良いこと 悪いこと」というドラマの主題歌になるようだ。


同窓会で集まった、小学校の同級生。
タイムカプセルから出てきたのは、6人の顔が塗りつぶされた卒業アルバム。
そしてはじまった、同級生の不審死。
(中略)
容疑者は同級生。真犯人は誰だー?
ノンストップの考察ミステリー。

新土曜ドラマ『良いこと 悪いこと』イントロダクションより


このドラマの登場人物はまさに自分と同世代。
ドラマ制作決定時も、出演者全員が「プロフィール帳」で顔を隠した状態で発表された。懐かしい。
完全に同世代をターゲットに打ち抜きに来ている。


*2001年6月にリリースされた『アゲハ蝶』は、『アポロ』『ミュージック・アワー』『サウダージ』に続くポルノの代表曲のひとつ。
ラテンの雰囲気が印象的で、新たなポルノのスタンダードを確立した。
ちなみに過去13回出場した「NHK紅白歌合戦」では一度も歌われていない



アゲハ蝶と僕


当時の僕は小学三年生だったが、この曲がヒットしたことはよく覚えている。

まだまだ小学生が携帯電話を持っているのは珍しい時代だったが、既に持っていた同級生の女の子が『アゲハ蝶』を着メロにしていた。
その子が使っていた携帯は、カメラもなく、画面も白黒だったと記憶している。

当時、ヒットを飛ばしまくっていたポルノの楽曲は小学生の僕の耳にも届いていた。
前作の『サボテン』も好きだったが、『アゲハ蝶』も好きな曲のひとつだ。

同じくポルノを好きな友人が「歌詞を書いてあげるよ」と自由帳に歌詞を書いてくれて、それを読みながら仲良く歌っていたことも覚えている。我ながら、微笑ましい。

ただ歌詞の意味は全く理解しておらず
「喉が渇いてたんだね」とか
「『冷たい水』の次に『愛して欲しい』って言うの?笑」
なんてのんきに話していた。行間も風情もない。

それでも歌詞は全て覚えたし、小学生の僕にも響いた楽曲だった。


冷たい水を求めて


『アゲハ蝶』が流行し、テレビやCMで流れていた2001年の夏休み。
僕は「冷たい水」を求めて、学校で開かれていたプール教室に通っていた。

無料で参加できるものだったが、地域のスポーツセンターからコーチが指導に来るもので、それなりに本格的だった。
塾やスポーツの習い事をしていなかった僕にとっては、貴重な機会だった。

当時の僕は泳ぐことができず、けのびで3m進むのが精一杯。
僕は運動全般が苦手で、水泳についても「絶対に泳げるわけがない」という自信に溢れていた。情けない。

揺るぎない信念を持っていたのに、プール教室に通っていたら3年目にして急に泳げるようになってしまった。
身体が浮き、手を回し、足をバタつかせる――気づいたら前に進んでいた。

「これが泳ぐということか。いや、自分が泳げるはずがない。」

泳げるはずがないと信じ切っていた。
そのため、泳げている事実が受け入れられず、10mほど進んでも浮いていたはずの足が底についていたことがよくあった。

旅人に尋ねてみた どこまで行くのかと いつになれば終わるのかと
旅人は答えた 終わりなどはないさ 終わらせることはできるけど 

ポルノグラフィティ『アゲハ蝶』より


気づけば水の上を進んでいたが、それでも10mで立ち止まってしまう。自分で「ここまで」と区切ってしまっていたのだ。
僕にとってはこの10mが限界で、自分自身で「終わらせることはできる」ものの最果てだった。

その後、コーチからの「大丈夫、泳げてるよ」という言葉で、やっと泳げている事実を受け入れられた。
それは生まれて初めての「世界が表情を変えた」ような成功体験だった。


当時の僕は「成功体験」がなく、「できない」ことがアイデンティティになってしまっていたと思う。
この経験がなかったら、やる前から諦め、何に挑戦することもない人生を送っていたのかもしれない。

振り返ってみると、この夏が小学生時代で一番平穏な夏だった。


共通言語としてのアゲハ蝶


『アゲハ蝶』はカラオケでも何度も歌った。
上手く歌えた試しはないが、特に同世代や仲間内と行く時は盛り上がる。
それだけ、多くの人に愛された楽曲と言えるだろう。

それを肌で感じたのが、ポルノが初出演した2017年の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」だ。
僕も足を運んでいたが、ポルノのロッキン初出演とあり、ステージが始まる前から高揚感に溢れていたのを覚えている。

3曲目に披露された『アゲハ蝶』では、イントロのクラップからはじまり、間奏の「らららー」では手を振りながら歌った。
ポルノのファン以外の人も集まるフェスで、何万人もが歌い手を振る姿は圧巻で、今でも鮮明に記憶している。

それは巡り合うはずのなかった旅人たちが一瞬のオアシスに集ったような感覚で、平易な言葉にはなってしまうが「音楽の力」を強く感じたステージだった。

その時の映像はなかったが、2011年のライブver.が公式からアップされているので、ライブの雰囲気を味わってくれたら嬉しい。


終わりのない旅


ポルノには自分が2000年代後半(『ジョバイロ』や『ハネウマライダー』のリリース以降)、中高生の頃に一番よく聞いていた。
昭仁さんのオールナイトニッポンも欠かさず聞き、僕の学生時代を支えてくれた。その時の話はまたの機会にさせて欲しい。

ドラマ内の登場人物も出演者も、フェスで一緒に歌った人たちも、あのころ『アゲハ蝶』を聞いていたと思う。
そして、多かれ少なかれ、僕たちは「冷たい水」を求めていたはずだ。
その渇きを経て大人になった僕たちが『アゲハ蝶』を通してつながるのは不思議な巡り合わせだと感じている。

発売から24年が経ち、小学生だった僕も当時のポルノの年齢を遥かに超えた。あの夏から、僕の終わりのない旅は続いている。
新たに始まるドラマも、それぞれの旅を続けている同世代にとってのオアシスのような存在になって欲しい。



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