最後の外食【食べられなくなっていく日々①】
もう二度と
この子を外食に連れて行くのはやめよう。
店を出た時、私はそう心に決めた。
テイクアウト、またテイクアウト
その頃、息子は
学校の給食をほとんど
食べられなくなっていた。
「ほとんど」というのは
一日一品を食べるだけ。
献立によっては
一品も食べない。
給食だけでなく、
外では食べたくない。
家なら食べる。
という状況だった。
外食を嫌うようになった息子のために
よほどのことがない限りは
家で食べられるように
最大限、配慮した。
仕事が立て込んで
帰りが遅くなる夜はヘロヘロで…
夕飯を作れず、
ささっと外食したいが
仕方なくテイクアウト頼みになってしまう。
時間が遅いことも
田舎なこともあり
選択肢は少ない。
牛丼屋か、チェーンの弁当屋か
はたまたコンビニか…
たまに食べるのはいいけど
昼も夜も丼ものや揚げ物が続き
もう飽き飽きしていた。
そして、どんどんたまる
山のような3人分の弁当のゴミにも
うんざりしていた。
温かいものを
ちゃんとした食器で食べたい!!
限界を迎えた私なりに、
考えて考えて
ひとつの提案をした。
「今日はチェーンの定食屋、行こう!」
息子は即座に
「えぇ…!いやだ」
と拒絶した。
いつものことだ。
うん、想定内。
でも今から
食材を切って火にかける気力なんて
微塵もないし、
また弁当を食べるのも限界!
「たまにはいいじゃん」
そう言って
不貞腐れて
ぶつぶつ文句を垂れる息子を
私は半ば無理やり車に押し込んだ。
選んだ店は、
私なりに考え抜いた
「息子にとっての安全圏」だ。
・薄暗くない。
・騒がしくない。
・人の往来が気になりにくい半個室。
・何より、外食拒否が始まる前は
息子が機嫌よく食べていた店だ。
これ以上の選択肢はなかったと思う。
席についた瞬間、終わった
なんとか定食屋にピットイン!
しかし、席についた瞬間
息子はテーブルに顔を伏せ
私たちのことも
メニューすらも見ようとしない。

そうなっちゃうわけね…
しかし飲食店で
子供と言えども
もう小3だし
人数分の注文しないのはマナーに反する
と思った私と夫は
アイコンタクトと口パクで相談し
息子の分を含めた
3人前の定食をオーダーした。
運ばれてきたのは、
息子の好物のからあげ定食。
揚げたてで、いかにも美味しそうに
お皿の上でキラキラしている。
昼食から7時間、
何も食べていない
空腹の子供の前に鎮座する
好物のからあげ定食。

ほれ、どうよ!
食べたくなるでしょ!
いや、食べてくれ!
頼むから一口でいいから食べてくれ。
せめてお茶だけでも飲んでくれ。
そう祈りながらも
過剰に勧めるのは違う気がして
「どうぞ食べて」という素振りをせず、
「おいしそう〜」と言いながら
先に食べ始めることにした。
お腹が空けば、自然と食べるだろう
という、淡い期待とともに。
やっと顔を起こした息子を見ると
涙をポロポロこぼしながら
唐揚げ定食をにらみつけている。

食べられない情けなさ。
強制的に配膳されたことへの怒り。
自分が食べられなかったご飯が
破棄になるかもしれないという悔しさ。
息子は食べ物を残すことが大嫌いだ。
だから
「食べなければ捨てられる」
という状況を作れば、
口をつけるかもしれない。
すごく荒っぽいやり方で
私は食べさせようとしてしまった。
「どうしても食べられない」
と
「残したくない。捨てたくない。」
とが、せめぎ合って…
息子を追い詰めてしまった。
息子の葛藤がわかったのに、
息子の涙をみて胸が痛んだのに
それでも、やさしくできなかった。
連日の仕事の疲れと、
この期に及んでも
断固として食べない息子へのイライラが
私の中でぐるぐるしていて
これは甘え?わがままなのでは?
わざと親を困らせてる?
とも思ってしまい
息子の気持ちが見えているのに、
寄り添えなかった。
途方に暮れた夜
結局、張り詰めた空気に耐えかねた夫が
「食べないならパパ食べるよ?」
と助け舟を出し、
からあげ定食は無事、
夫の胃袋へ消えていった。
息子は無言のまま、
うなずくこともなく
涙を流して定食を睨んでいた。
出されたお茶さえ、口にしなかった。
店を出て、駐車場を歩く。

3人とも一言も発さず。
こんな状況でも
頑なに食べない事態にまで
なってしまったのか
そう思うと、ただただ途方に暮れた。
そして、もう二度と
外食へ連れ出すのはやめよう
と思った。
その後、食欲不振によって
給食や家庭で何が起きていたのか。
渦中で私が感じたことを
そのまま書き残していこうと思う。
②に続く___
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