「風立ちぬ」堀越二郎とユンカース
先日、久しぶりに映画の「風立ちぬ」を見たのですが、マイナーぶりにヒコーキ好きの私的はツボでした。普通の人ならサラリと流す所ですが、「えー、こんなにマイナーなヒコーキまで取り上げてくれるの?」と嬉しくなります(^^)。
今回から、そこら辺のマイナーなヒコーキたちを取り上げてみたいと思います。お付き合いください。

映画の中では、堀越二郎と本庄季郎は、ドイツのユンカース工場へ視察にいきます。二人はその工業技術の結晶のような金属製の飛行機に感動します。当時のドイツの工業技術は世界トップレベルですから、二人は日本のレベルを思い知らされます。
二郎の夢のなかで現れるカプローニは「設計で大切なのはセンスだ。センスは時代を先駆ける。技術は後からついてくる。我が国も貧乏だ」と二郎を励ましますが、たしかにそういうところはありますよね。
技術の進歩は、よく、先に「こうではないか」と仮説を立てて、それが正しいものであるか実験で検証をしていきますが、この最初の「仮説」を立てるところが技術者のセンスが問われるところであり、ある意味最も重要な部分でもあると思います。
偉大な発明も、ひらめき、インスピレーションで先に結論があって、あとはそれを実現させる努力が延々と続くというかたちが多いですね。
どんな学問でも「起きた事象を詳しく記録する博物学」からはじまり、「起きた事象のメカニズムを解き明かす理学」へと進化し、「理学の成果を工業レベルで実用化させる工学」へと結実します。
しかしながら、日本やドイツは理学があっても、それを工学分野へと発展させるだけの資材が無かったということで、後にアメリカにやられていくわけですね。
■ユンカース社という名門
さて、このユンカースという会社ですが、ドイツの航空機とエンジンを製造するメーカーでメッサーシュミット、フォッケウルフ、ハインケルなどの航空機メーカーと並ぶ大手メーカーです。
有名な飛行機としては、急降下爆撃機で有名なJu87スツーカ、そして兵士たちからタンテ(おばさん)という愛称で親しまれた輸送・爆撃機のJu52 、そして爆撃機、夜間戦闘機としても活躍した万能機Ju88でしょうか。
またエンジンの製造でも有名で、 ユンカース・ユモ004は世界で初めて実戦投入されたターボジェットエンジンでメッサーシュミット Me262 と、アラド Ar234 等のエンジンとなり8000基以上も生産されています。

さて、創立者のフーゴー・ユンカース(1859〜1935)ですが、技術者・発明家・実業家であり、全金属製の飛行機や初期の高速ディーゼルエンジン開発の先駆者として知られています。また自社製の飛行機で運行する現在のルフトハンザ航空の基となる航空会社もつくります。

自由主義的な思想の持ち主であり、アドルフ・ヒトラー率いるナチ党を批判しましたが、これが後で祟り、1934年に自宅軟禁されてしまい、翌年に死去、ユンカース社は収奪されてしまいます。
映画ではこの話を基にして、二郎が思想犯として疑われ、特高(秘密警察)に狙われているエピソードを作り上げています。
世界でも最新の技術をいち早く実用化できる高い技術のあったドイツでしたが、敗戦のためにその技術と人材は、戦後の東西両陣営に流出することになり、冷戦時代のジェット戦闘機開発、ロケット開発、宇宙開発 へと受け継がれていくことになります。
①ユンカースF.13

第一次世界大戦の終わりにドイツで開発された世界初の全金属製旅客機です。
4名の乗客が搭乗でき、当時では先進的な単葉機でした。300機以上が生産され、13年の製造期間と20年に渡って運用されました。ルフトハンザ航空での使用が有名ですね。
下の現存機を見ると、映画のF.13と塗装が同じようですね。直接取材に行っているのかも。


最高速度は173km/h、巡航速度で160km/hくらい。古き良き時代の旅客機です。
②ユンカースG.23/24?
片翼を外したF.13の後ろにチラッと見える飛行機は、ユンカースG.23でしょうか。3発機らしい姿です。
この機体もF.13同様、旅客機として民間輸送会社などで使用されています。


③ユンカースG.38

このシーンの最大の、見せ場である超巨大航空機、G.38です。これも旅客機。
開発当時イタリアのカプローニCa90に次ぐ世界第二位の巨人機でした。Ca90も映画に登場していますから、宮崎駿氏は巨大機が好きなようですな。


G.38は、なんといっても分厚い主翼が特徴的です。なんと主翼内部にも客室があり、エンジンのところまで歩いていけたというから驚きです。
次回はこのG.38と、このライセンスをもらい、日本で開発された九ニ式重爆撃機の話を。
