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アフリカが及ぼす影響

遠いアフリカの災害が、あなたの財布を直撃する話。

今日は話を戻して、アフリカ大陸が気候変動から実際にどれだけの影響を受けているのか。そして、それが日本に住む私たちの生活と、どうつながっているのかです。

災害は、確実に増えている。

アフリカへの気候変動の打撃は、「気温が上がって暑い」という話だけではありません。
深刻なのは、サイクロンと洪水です。
アフリカにおける雨に関連する自然災害は、過去50年でおよそ10倍に増加しました。

近年の被害は、規模も頻度も桁違いになっています。

2019年のサイクロン・イダイは、1,000人以上が亡くなり、約32.5億ドルの経済損失をもたらした、アフリカ史上でも最悪級のサイクロンとなりました。

その翌月には、観測史上最強クラスのサイクロン・ケネスが上陸。

さらに2023年のサイクロン・フレディでは、マラウイだけで679人が死亡、537人が行方不明となり、アフリカ史上でも最大級の人的被害をもたらしました。

国連の報告では、2015年から2021年までの気候関連災害によって、アフリカはGDPの12.3%に相当する損失を受けたとされています。

なぜ、温暖化がサイクロンを強くするのか。


「気温が上がると、なぜ暴風雨が激しくなるのか。」
サイクロン(地域によって台風・ハリケーンとも呼ばれます)のエネルギー源は、海から蒸発する水蒸気です。
暖かい海水から多くの水蒸気が蒸発し、それが上空で雲になるとき、「潜熱」という熱が放出されます。
この熱がさらに上昇気流を強め、巨大な雲と暴風雨を発達させます。

つまり、
海が暖かいほど、水蒸気という「燃料」が増え、サイクロンはより強くなるのです。

ここで重要になるのが、「クラウジウス・クラペイロンの法則」です。
この法則では、気温が1℃上昇すると、空気が保持できる水蒸気量は約7%増えるとされています。

海水温が上がる。
水蒸気が増える。
サイクロンの燃料が増える。
結果として、豪雨や暴風が激しくなる。
物理学で説明できる現象です。

実際、マダガスカル周辺を襲った近年のサイクロンについても、国際的な研究グループは、温室効果ガスによる温暖化が降雨量を増加させた可能性が高いと結論づけています。

そして、その影響は日本へ届く。


「遠いアフリカの話」
そう思うかもしれません。
でも、その影響はすでに日本の食卓へ届いています。

バニラの話。
マダガスカルは、世界の天然バニラのおよそ8割を生産する国です。世界のバニラ価格は、この島国の収穫量に大きく左右されます。
2017年、サイクロン・エナウォがマダガスカルを直撃しました。
多くの農園が大きな被害を受け、バニラの供給は急減。
国際価格は急騰し、一時は「銀と同じくらい高い香辛料」とまで言われました。その影響は、日本のアイスクリームや洋菓子にも及びました。

チョコレートの話

もっと身近なのは、チョコレートです。世界のカカオの約半分は、コートジボワールとガーナで生産されています。
近年、この地域では干ばつや豪雨、病害などが重なり、大幅な減産となりました。
その結果、カカオの国際価格は歴史的な高値を記録しました。
日本でもチョコレートの値上げや内容量の減少が相次ぎました。
さらに、将来的には気候変動の影響によって、西アフリカのカカオ栽培に適した地域が大きく減少する可能性も指摘されています。

タコの話

そして、たこ焼きです。
日本が輸入するタコの多くは、西アフリカのモーリタニアやモロッコからやってきます。
特にモーリタニアは、日本の食文化と深い縁があります。1970年代後半、JICAの専門家が現地へタコ壺漁を導入し、それが今では国を代表する輸出産業へと成長しました。

しかし、そのタコも年々高くなっています。
ゆでダコの小売価格は、この10年ほどでおよそ2倍になりました。
スーパーでは「マグロ並みの値段」と言われることも珍しくありません。
その背景には、海水温の変化による海洋環境への影響があると指摘されています。
海水温の上昇は、タコの餌となる貝類や甲殻類、生息環境に影響を与え、資源量の減少につながる可能性があります。
一方で、価格上昇には、漁獲規制、世界的な需要の増加、円安なども重なっています。

つまり、気候変動だけが原因ではありませんが、気候変動は価格を押し上げる重要な要因の一つになっています。
たこ焼きが以前より高く感じる背景には、西アフリカの海で起きている変化も関係しているのです。

排出していないのに、最も苦しんでいる。

アフリカのCO₂排出量は、世界全体のわずか数%です。それにもかかわらず、世界で最も深刻な気候変動の影響を受けています。

そして、その影響は、
バニラ。チョコレート。タコ。
こうした商品の価格として、日本にも返ってきます。
遠い国の問題ではありません。
私たちの暮らしと、すでにつながっています。

だから、「現状を維持する」ことに価値がある。
ザンビアの森を守る話を書いてきました。
正直に言えば、「アフリカの自然を守りたい」という思いの中には、「私たち自身の生活を守りたい」という思いもあります。

アフリカの森が守られ、気候が安定していることは、
チョコレートも、バニラも、タコも、これから先も当たり前に食卓へ並ぶことと、決して無関係ではありません。

遠い国の森を守ることは、実は、自分たちの暮らしを守ること。

カーボンクレジットという仕組みは、そのつながりに具体的に参加する方法の一つだと考えています。

気候変動は、もはや環境問題だけではありません。

食料安全保障であり、経済であり、スポーツであり、私たちの暮らしそのものの問題です。

だからこそ、今できることを、一つずつ積み重ねていく。

それが未来の日本にも、未来のアフリカにもつながっていくと思っています。


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