yubiori -Interview #2-
東京横浜を中心に活動するバンド、yubiori。
新しいアルバム『yubiori2』は、アンビエントからエモーショナルハードコアまで、様々なジャンルの音楽を横断してたどり着いた、日本語インディーロックの美しい実りのひとつだと言える。バンドの成り立ちや、生活も含めた音楽活動についてのインタビュー。(#1はこちら)
<文:後藤正文 写真:山川哲矢>(全5回)
「バンドも手軽であってほしい。みんなでスタジオに入って、わっと音を出すっていう楽しさもあるし。その楽しさを大事にしてもらいたいなというのはありますね」
<新型コロナのパンデミックを経て>
後藤:いざyubioriというバンドを転がそうって思ったら、すぐに新型コロナのパンデミックがあって、ライブ活動が難しくなったじゃない? それはやっぱり辛いよね。
田村:ちょっとその辺りの記憶が抜け落ちてるんですよね…。
後藤:しんどすぎて?
田村:そうですね。僕はめちゃくちゃしんどかったですね。新卒で会社入って、すぐにコロナが始まって、在宅しろって言われたけど、「右も左もわかんねえよ」みたいな感じで。ライブハウスにも行けないし、すごい塞ぎ込んでた時期がありましたね。でも、なにかにつけて集まってはいたよね。
阿左美:集まってましたね。
中野:その時にベースの長谷川が辞めてしまって。「これからバンドどうすんの?」ってバンドが止まってる時に、東條が入ってくれて、またバンドが進み始めました。ライブも決まって、コロナ禍でも、無観客ライブをやったりしていました。
田村:配信ライブ、楽しかったよね。youtubeのライブ中にみんなでコメント見たりして、コメントありがとうございますって返事したりして。
中野:別の楽しみがあって、結果的に救われましたね。
後藤:ファーストアルバム『yubiori』(2022/7/13リリース)を作ったのって、その時期?

田村:そうですね。コロナになって1年ぐらいうだうだうだして、曲を作って、レコーディングして、ライブって感じですね。結局それが良かったのかもしれないです。今みたいなペースでライブをしてたら絶対できてなかったと思うし。
後藤:なるほどね。例えば「ギター」(1stアルバムに収録)は1回ライブハウスで観たけど、ライブのハイライトみたいになってるよね。お客さんもみんな歌ってて、感動的だった。
世代的にコロナの煽りを大きく受けたと思うんだけど、今のライブハウスシーンって、俺たち大人から見ると割と活況に見えるというか、若いバンドがみんな格好良くて、ライブハウスで活躍してる人たちが増えたなって感じてるんだけど、それはパンデミックの反動みたいのもがあるのか、それとも、「活動が制限される時期が無くても別に俺たちやってましたよ」って感じなのか、どうなんだろう。
阿左美:一言で「関係ないです」とは言えないですよね。コロナは何かしらに関係はしてると思うんですけど。ただ実感としてないというか。よくよく考えたら、さっき言ってたライブのペースとかもありますし。やっぱりその時期に身の回りで宅録始めた人が結構多くて、音源をすごい作り込んでからライブやりますみたいな人たちはすごく増えてきたかなと思ってて。
後藤:阿左美くんもそのあたりで買ったの?
阿左美:僕はずっと前からやってますね。明らかに宅録できる人が増えていて、音源を作り込んで溜めて、ドカンと出しているのが今のライブハウスが盛り上がっている一因じゃないかなと思います。

後藤:確かに宅録できる人は増えたよね。俺たちの世代のバンドマンは宅録までできるやつはほとんどいなかったから、途方に暮れた人も多かったと思う。自分はエンジニアの勉強をしていたから、機材の相談を受ける機会が増えたんだけど。
田村:同世代からゴッチさんに質問が飛んでくるんですね。
後藤:アジカンもその時期にリモートでのレコーディングが増えて、お互いに家で録った音源ファイルを送り合って。今のバンドマンって、自分たちでしっかりデモ音源を作れる感じなの?
田村:僕らの周りはみんなほぼほぼ作って、メンバーに投げるって話をよく聞きますね。すごいなぁって思います。
後藤:昔は本当にレコーディングスタジオに行ってみんなでセッションするまで、曲の完成形がわからないぐらいの感じだったけど、yubioriの場合は、自分たちでプリプロ(録音の事前準備)までした音源を聞かせてくれたもんね。
田村:そうですね。最近ちょっとずつみんなでできるようになって。ドラムはiphoneで作ったりとか。
後藤:テンポさえ合っていれば、PCで編集できるもんね。その辺が新しい世代よね。
田村:ヒップホップとかが流行ったのって、誰でもとっつきやすいし、始めようと思えばすぐ始められる。音楽業界全体としてはすごくいいことだと思うんですけど、僕としてはバンドも手軽であってほしいっていう気持ちはあるので、「宅録が当たり前でしょ」という風潮にはならないでほしいですね。個人的にはみんなでスタジオに入って、わっと音を出すっていう楽しさもあるし。僕らの次の世代とかも、その楽しさを大事にしてもらいたいなというのはありますね。

後藤:どっちも、それぞれの良さがあると思う。本来宅録って、気軽にバンド組めないみたいな、人と会うのが苦手だとか、社交性がない人たちを救う表現方法でもあったから。俺もそうだけど、オタク気質な人たちがわーっとひとりでやれるみたいな。
<緊張と弛緩。感情の流れを音楽のなかで捕まえること>
後藤:yubioriのいいところは、宅録しづらい曲ばっかりじゃん。アルバムのデモ音源を聞かせてもらって面白いなと思ったのは、テンポが揺らいでいることで。「この人たちクリックを聞かないで作ってるのかな?」っていう驚きがあって。でも、それってとてもいいことだと思うんだよね。「テンション上がったらテンポぐらい上がるでしょ」っていうのが、本来の音楽のあり方だって思うから。でも作品にするときの難しさも、レコーディングで体験したじゃない?
中野:全部録り直しだ…とかありましたね。
後藤:1曲を2つに分割して、Aから録って、その後Aを聞いてBを録るみたいな、そういう試行錯誤が面白かった。そういう音楽の捕まえ方が他のバンドと違うなって思う。「テンポが揺らいだってよくない?」みたいなことって、いつからみんなでそういう話をしてるの? 例えば、「Maxとき」や「いつか」もテンポチェンジがあって、曲を通して一定ではないよね。緊張と弛緩があるっていうか、感情の流れがちゃんとあって、すごく音楽的でいいなって思う。そういう楽曲についてのあれこれは、どうやってみんなで話し合ってきたのかなってすごく興味がある。
田村:最初に揺らいだのはいつなんだろうね。最初に出したデモシングル「yubinori E.P.」は多分テンポは一定かな。
中野:全部一定ですね。
田村:あとは、ファーストを作るまでの過程の中で「それやってもいいんだ」ってことになったことだよね。
中野:「ギター」もそうだし。
田村:ファーストアルバムの1曲目の「雪国」もそうですね。長谷川(ハセコー)が「Bメロをめちゃくちゃゆっくりにしましょう」って急に言い出して、「何言ってんだこいつ?」みたいにみんなで思ったんですけど、「やってみたらいいじゃん」みたいな感じで。あとは、さっき出てきたAcleが学生時代からめちゃくちゃテンポが変わりまくってたんですよね。急に早くなったり遅くなったりっていうのをめちゃくちゃやってたんで、それがかっこいいなと思って、「じゃあ俺らでもできるな」っていうのはあったと思いますね。
後藤:中野くんや東條くんが別で組んでるバンドAcleの影響もあったってことなんだね。
中野:当時、自分はAcleに入ってなかったんですけど、そばで聞いててAcleがやってんだったらやってみようと思って。リファレンスにもAcleの楽曲がありました。

田村:急に早くなるのとか、かっこよかったもんね。最初に聞いたときはびっくりしましたね。
後藤:自分たちでやってみて、やっぱりしっくりくると。
田村:そうですね。それはあると思います。みんな急にテンポが変わるのはやってるような気がしますね。流行りなのかな。
後藤:増えてきてるんだ?
田村:そんな気がしますね。
後藤:yubioriのデモを聞いて、「これめっちゃ練習しないといけないやつじゃん!」って思った。
田村:レコーディング大変でしたね。
中野:大変でしたね。プリプロで泣きそうでした。
後藤:プリプロから大変だったんだね。
中野:そうですね。「これできんのかな?」って思ったんですけど、みんなにサポートしていただきました。
後藤:レコーディングは本当に良かったよね。ドラムの音がみるみる良くなった。only in dreamsで一緒にやるって決まる前に、多分俺、yubioriの音源をSNSでシェアしてるよね?
田村:はい、インスタのストーリーですね。
後藤:何あげてた? 「雪国」?
田村:「映画の中に」ですね。ファーストの2曲目をあげていただいてて、びっくりしたよね。
阿左美:仕事が終わった後に「ゴッチさんが聞いてるぞ、ゴッチさんが俺らの曲聞いてる!」って電話がかかってきました。
田村:いや、多分そのときはゴッチって言ってたと思う。笑
後藤:なんか居酒屋みたいなところで、みんなで座ってるのか立ってるのかわからないバンドの集合写真のことも覚えてるんだよね。

左から中野、東條、田村、阿左美、長谷川(ハセコー)
田村:当時はそのアー写でしたね。あの居酒屋はもうなくなってしまったんですよね。いいところだったんですけど。
後藤:それで俺はyubioriを初めて知ったかな。
田村:ありがとうございます。そのきっかけがなかったら、僕らもメールを送ってなかったと思います。
後藤:俺もなんでyubioriをやろうと思ったか、未だに思い出せない。何かピンと来るものがあったんだなと思って。面白くなるなんじゃないかなって。デモを聞いたり、一緒に作業をやってるうちに、どんどん好きになっていった。今では普通にファンだと言っても過言じゃないくらい。
初回のインタビューはこちら。

『yubiori2』 2025年7月2日リリース
1.Maxとき
2.いつか
3.思い出した時のために
4.終わらない
5.春になれば
6.deep blue
7.super blue
8.せめてそれだけ
9.山の向こう
10.二等寝台
11.すばる
12.rundown
yubiori
東京・横浜を中心に活動中。日々の生活の中で闘い続ける人々に寄り添う言葉とメロディ、エモーショナル・ハードコアからインディフォークを横断する幅広い音楽性と、感情が爆発するライブパフォーマンスが魅力。2022年には1stフルアルバム『yubiori』をリリースし、全国ツアーを敢行。2024年にはキャリア初のワンマンライブ「ASAP」を新宿Marbleで開催。今年4月に同会場で行われたワンマンライブはソールドアウト。同年10月には、新メンバーとしてTrp.大野莉奈が加入。より多彩で深みのある音楽を生み出し、ライブハウスシーンで注目を集めている。
