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聖書ファクト・シリーズ(1)...欧米を知る上で必須

表紙写真:聖書のマニュスクリプト 
Ancient Manuscripts In a Digital Age - WSJManuscript_2048x.webpより

The pen is mightier than the sword. 文よく武を制す。

筆者は1960年プロテスタント教会で洗礼を受けた。洗礼名はナタナエル(Nathanael/英語ではNathaniel)。高校2年生の夏だ。当時宣教師Charles Eagle先生が無料で英語を教えてくれた。と言っても英語で説教しただけだが、当時ネイティブ英語を聞ける唯一の機会。土曜日の夕方はワクワクしながら通った。とても優しい先生で英語が好きになった。それ以来、邦訳・英訳聖書は愛読書である。ちなみに時には邦訳、英訳と比較する為、仏訳聖書も読む。大学時代には聖書研究会に出入りし、ヘブライ語(旧約)、古代ギリシャ語(新約)に通じた先輩から神学に近い解説を受けたこともあるが、基本は個人的に読み個人的に感ずることにしている。

筆者の英訳、仏訳、邦訳聖書と聖書辞書・聖書マップ

英語はもちろんのこと、歴史、特に世界史が大好きになった。新約・旧約聖書の背景チグリス・ユーフラテスのメソポタミア文明からエジプト文明、そして、ギリシャ・ローマの地中海文明。中世、近世、現代に続く西洋文明、新大陸アメリカ文明などなど過去から現代にいたるまで追うっているうちに、政治、社会、経済、文化、哲学、文学、そして科学の全分野でキリスト教抜きでは語れないことが分かった。大学、大学院ではピューリタン文学John BunyanPilgrim's Progress について学士論文と修士論文を書いた。

The Pilgrim's Progress by John Bunyan, a Project Gutenberg eBook.

その延長で東部ニューイングランドのピューリタン植民地を築いたPilgrim's Fathersに興味を持つようになり渡米した。1968年だ。ところが驚いた。随分多くのアメリカ人と接したが聖書をあまり読んだことが無いらしい。日本人の多くが仏教か神道か儒教の伝統を受け継いでいるが経典を読んでいる人は少ないのと同じだ。

The Massachusetts Puritans: What You Need to Know! - The History of the ...
(ニューイングランドのピューリタンpinterest.com)

とは言え聖書を抜きには欧米は語れない。欧米の主要大学は元は神学校であった。その名残か今でもBiblical studiesというコースがある。筆者もアメリカで履修した。そこでまた現地学生の多くがあまりにも聖書の知識に乏しいかったので改めて驚いた。日本から来て何でそんなに知っているんだ?と言われて閉口したものだ。別に彼等を責めているわけではないが、聖書が曲解されても分からずそれが故に誤った判断をしてしまうのを危惧した。一例を挙げよう。

1968年は大変な年だった。4月4日テネシー州メンフィスで公民権運動のリーダーMartin Luther King博士が暗殺された。筆者その一週間ほど前にグレイハウンド・バスで通過したカントリー・ウエスタンで有名な町だ。そこからアラバマ州、ミシシッピー州を通りルイジアナ州に入りニューオリンズ経由でバトンルージェまで深南部を旅した。その道中で何度もKKKが黒人と白人の恋愛を描いたA Patch of Blue上映中の映画館をぐるりと囲みピケを張っているの様子を目撃した。[1]  テレビではアラバマ選出の民主党上院議員 George Wallace 氏は公然と人種差別(racial segragation)政策を掲げ、1968年の大統領選民主党指名候補として賑わせていた。

それら人種差別者たちが使ったロジックは、旧約聖書の創世記9章に書かれているノアによるハムへの呪い(Curse of Ham - ”Racism and Slavery”)である。[2]  欧米キリスト教界は、この逸話を曲解し無理やり黒人差別そして奴隷化につなげてきた。George Wallace氏とその支持者もそうだ。聖書は一切そのようなことを述べていないが、アメリカの南部にはそのようなロジックを疑いもせず公然と口にし人種差別を行い、万が一Wallace氏が大統領に選出されたら制度化されてしまうところであった。

Ham Mocking Noah - Curse of Ham | Bíblico, Estudos bíblicos 
(ノアを侮辱するハムpinterest.com)

政治はそれぞれの国の国民の総意であり部外者がどうのこうの言うべきではないと思う。しかし事情を知らずに誤った判断に巻き込まれるのは御免だ。1968年から10年続いた留学生活で、多くのアフリカ系アメリカ人と交流できたのは上記のロジックの誤謬をいち早く見抜けたからだ。

現在引退した身、外国人との交流の機会は少なくなったが、2014年以前の現役生活ではほぼ毎日様々な人種的背景を持つ人々と交流できた。今、アメリカで国外追放をされている人々を見ながら彼等の顔を思いう浮かべ、アメリカの為政者達が手を置いて誓いをする聖書を読み返した。イエス・キリスト自身がまた弟子たちも同じように追放されている。パウロなどは自ら追放され幽閉されながらも弟子のピレモンが所有する異邦人の奴隷オネシモを慮り手紙を書いている(別稿使徒パウロの異邦弱者への慈愛「ピレモンへの手紙」参照)。

Apostle Paul’s Spiritual Experience: A Universal Manner of Being
(幽閉中のパウロ netage.org)

このシリーズでは欧米社会の隅々までに影響を与えている聖書の知られざる歴史的、社会的ファクトを拾い出す。聖書は本当にそう言っているのだろうか?聖書の時代はどうだったんだろう?そんなことを自問し答を探り色々な事象に当てはめてみたい。

次回はアメリカの英語公用語政策に関し、聖書の世界色々なファクトを拾う。ただ単純に、キリストが生きている時代に当時ガリラヤ地方を統治していたローマ帝国がギリシャ語を公用語にすると言ったらどうなんだろう?その前にイエスは何語を話したんだろう?こんなこと考えながら公用語論の是非を考えたい。

[1] ほか、To Kill a Mocking Bird  , Guess Who's Coming to Dinner, To Sir with Love なども南部ではピケの対象になった。
[2] WikipediaThe ‘Curse of Ham’: how people of faith used a story in Genesis to justify slavery 実は、セム、ハム、ヤぺテによりWhite, Black, Yellow, Brownの人種を色分けしようとした動きもあった。

1 The three sons of Noah Japhet Shem & Ham | Bible noah, Bible ...              (中世の聖書曲解の世界観, pinterest.com提供)

聖書ファクト・シリーズ(2)...聖書の世界は多文化・多言語,現アメリカのようだった」に続く


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鈴木佑治 N.Yuji Suzuki サポートいただけるととても嬉しいです。幼稚園児から社会人まで英語が好きになるよう相談を受けています。いただいたサポートはその為に使わせていただきます。