現役世代に負担だけを押しつけるな――市町村発「食のインフラ」は社会からの恩返しになる【N+マーケット】

物価高が止まらない。
米も高い。
卵も高い。
肉も魚も野菜も高い。
コンビニで弁当を買えば、700円、800円は普通になった。
外食をすれば、昼食だけで1000円近くかかることもある。
その中で、若者や現役世代はどうしているのか。
昼食を抜く。
カップ麺で済ませる。
おにぎりだけで我慢する。
栄養よりも安さを優先する。
子どもに食べさせるために、自分の食事を減らす親もいる。
これで本当に、日本は成長できるのだろうか。
政治はよく「成長戦略」と言う。
AI、半導体、宇宙、防衛、スタートアップ。
もちろん、それらも大事だ。
しかし、その前に考えるべきことがある。
働く人が、ちゃんと食べられているのか。
若者が、食費を削らずに生活できているのか。
現役世代が、社会から支えられていると感じられているのか。
私は最近、こう思う。
市町村発の「現役世代食堂」があってもいいのではないか。
これは、単なる安い食堂ではない。
貧困支援だけでもない。
国が上から作る大きな制度でもない。
市役所、区役所、公民館、地域センター、学校給食センター、空き店舗などを活用し、若者や現役世代が安く、栄養のある食事を取れる仕組みを作る。
米が食べられる。
味噌汁がある。
たんぱく質がある。
野菜がある。
仕事帰りに寄れる。
親子でも使える。
一人暮らしでも安心して食べられる。
それだけで救われる人は多い。
料金は、完全無料でなくてもいい。
月額制でもいい。
回数券でもいい。
1食300円から500円でもいい。
ご飯は大盛り無料。
おかわり1回無料。
2回目以降はポイント制。
卵、納豆、肉増しは追加ポイント。
物価高の時代に、無制限の善意だけでは続かない。
だからこそ、続けられる仕組みにする必要がある。
大事なのは、利用者に「支援されている」という恥ずかしさを持たせないことだ。
「貧困食堂」ではない。
「困った人だけが行く場所」でもない。
名前も、もっと自然でいい。
まちの社員食堂。
市民ごはんステーション。
ワーカーズ食堂。
現役世代ごはんインフラ。
誰でも使える。
でも、若者や働く世代を重点的に支える。
この形がいい。
今の日本では、現役世代があまりにも多くのものを背負っている。
税金を払う。
社会保険料を払う。
年金を支える。
医療を支える。
介護を支える。
子育てもする。
奨学金を返す。
家賃を払う。
物価高にも耐える。
老後の不安も抱える。
それでも、政治からはこう言われる。
もっと働け。
もっと産め。
もっと消費しろ。
もっと社会を支えろ。
しかし、人は負担だけでは頑張れない。
社会を支える側にいる人たちが、社会から何も返ってこないと感じれば、社会への信頼は失われていく。
若者が「どうせ自分たちは搾り取られるだけだ」と感じれば、結婚も、子育ても、消費も、挑戦も遠のいていく。
だからこそ、必要なのは支え合いだ。
現役世代や若者に、負担だけを押しつけてはいけない。
今まで社会を支えてきた人へ。
これから社会を支える人へ。
地域が、企業が、自治体が、ありがとうを返す仕組みを作るべきだ。
市町村発の現役世代食堂は、その第一歩になる。
しかも、この構想は行政だけでやる必要はない。
企業がスポンサーになってもいい。
企業は今、高い広告費を使っている。
テレビCM、ネット広告、駅広告、動画広告。
何千万円、何億円というお金が、企業イメージのために使われている。
もちろん広告も必要だ。
しかし、その一部を地域の食堂に回したらどうだろうか。
「この定食は、〇〇企業の協賛で提供されています」
「この地域の若者と現役世代の食を、〇〇企業が支えています」
これは、ただのCMよりも人の心に残るかもしれない。
人は、自分の生活を直接助けてくれた企業を忘れにくい。
400円で温かい定食を食べられた。
子どもと一緒に安心して夕食を取れた。
仕事帰りに栄養のあるごはんを食べられた。
その記憶は、広告より強い。
企業にとってもメリットがある。
地域貢献になる。
ブランドイメージが上がる。
若者に企業名を知ってもらえる。
採用にもつながる。
社員の福利厚生にも使える。
ESGや人的資本経営としても説明できる。
「買ってください」と叫ぶ広告から、
「いつも社会を支えてくれてありがとう。今日はちゃんと食べてください」という支援へ。
広告費の使い方を変えれば、企業と地域の関係も変わる。
さらに、マイナンバーカードやデジタルIDを使えば、全国共通の仕組みにできる可能性もある。
市川市で登録した人が、船橋でも、松戸でも、宮崎でも、大阪でも使える。
仕事の出張先でも使える。
帰省先でも使える。
旅行先でも使える。
まさに、食のふるさと納税のような仕組みだ。
地域ごとに、おいしい市民食堂がある。
宮崎なら、鶏、豚、野菜、地元米。
北海道なら、じゃがいも、牛乳、鮭。
新潟なら、米と味噌汁。
千葉なら、魚、野菜、落花生。
大阪なら、安くてうまい定食文化。
その土地の食材を使い、地域の飲食店が調理し、企業や自治体が支え、若者や現役世代が食べる。
これは、地域経済の循環にもなる。
地元の米農家を支える。
地元の八百屋を支える。
地元の飲食店に仕事が生まれる。
管理栄養士の仕事も生まれる。
シルバー人材や主婦層、学生アルバイトの雇用にもなる。
公共施設の空き時間も活用できる。
つまり、これは単なる食堂ではない。
若者支援。
現役世代支援。
農業支援。
地域経済支援。
健康政策。
孤立対策。
物価高対策。
企業の地域貢献。
自治体の公共施設活用。
すべてがつながっている。
もちろん、個人情報の扱いには注意が必要だ。
マイナンバーカードを使うなら、本人確認だけにとどめるべきだ。
食堂の利用履歴を行政や企業が細かく見るような仕組みにしてはいけない。
どこで、いつ、何を食べたか。
これは立派な個人情報だ。
だから、利用は匿名IDで管理する。
企業スポンサーには個人名を渡さない。
自治体にも詳細な食事内容までは渡さない。
集計するのは、利用回数、地域別人数、補助額、食材使用量などに限定する。
本人が同意しない限り、所得情報や健康情報とは結びつけない。
良い政策ほど、信頼を壊してはいけない。
この仕組みは、国が最初から大きく作る必要はない。
むしろ、各市町村が小さく始めればいい。
市役所の食堂を夜だけ開放する。
公民館の調理室を使う。
学校給食センターの空き時間を活用する。
地元飲食店に委託する。
地元農家やJAから米や野菜を仕入れる。
企業スポンサーを募る。
月額制や回数券で利用者を集める。
まず半年やってみる。
どれだけ利用されたのか。
1食あたりいくらかかったのか。
利用者の満足度はどうか。
地元食材はどれだけ使えたのか。
現役世代の生活支援として意味があったのか。
数字で見ればいい。
うまくいった自治体には、国が後から備蓄米や補助金で支援すればいい。
最初から大きな制度にすると、事務局、委託会社、中抜き、申請書類、実績報告ばかりが膨らむ危険がある。
本来の目的はシンプルだ。
若者と現役世代が、ちゃんと食べられること。
働く人が、明日も頑張れること。
地域が、社会を支える人たちに恩返しすること。
食品の消費税を一律0%にするという議論もある。
それも一つの考え方だ。
しかし、財政を心配するなら、別のやり方もある。
食品全体を一律で下げるのではなく、
米、味噌、卵、納豆、野菜、学校給食、地域食堂、現役世代食堂など、生活の基礎に絞って支援する。
そうすれば、政策効果が見えやすい。
何食提供されたのか。
いくら補助したのか。
どの地域の食材が使われたのか。
誰の生活に届いたのか。
一律減税よりも、現場に届く支援になる可能性がある。
政治は、もっと生活の現場を見た方がいい。
昼食を削る若者。
コンビニ弁当で済ませる一人暮らしの社会人。
子どもに食べさせるために、自分の食事を減らす親。
税金も社会保険料も払っているのに、何も支えられていないと感じる現役世代。
この人たちが倒れたら、日本は終わる。
成長戦略とは、半導体に補助金を出すことだけではない。
AIに投資することだけでもない。
大企業を支援することだけでもない。
働く人がちゃんと食べる。
若者が健康でいる。
現役世代が社会を信じられる。
地域が人を支える。
それも、立派な成長戦略だ。
現役世代に負担だけを押しつける国ではなく、
支え合いによって、現役世代に恩返しする社会へ。
市町村発の現役世代食堂。
企業スポンサー型の食のインフラ。
全国で使える、食のふるさと納税のような仕組み。
これは、派手ではない。
しかし、今の日本に本当に必要な政策だと思う。
米がある。
味噌汁がある。
たんぱく質がある。
野菜がある。
温かいごはんを、安心して食べられる場所がある。
そこから、もう一度この国を立て直してもいいのではないか。
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