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“kawaii”が所在地ではありません。(2025/7/19 ukka 10th Anniversary Live vol.4 第2部 葵るりプロデュースワンマンライブ ~ ukkawaii world!? ~)

(※以下の文中、敬称略で失礼します。また、ライブの内容や引用したメンバーの配信内容、そこからの解釈については記憶に基づく部分も多く、実際と異なる点があるかもしれません。ご容赦ください)

Where are we from?

バンドやアイドルのライブで時折耳にするフレーズがある。

「福岡市博多区からやって参りましたNUMBER GIRLです」
「インディーズOrange Owl Records所属、ホーム心斎橋BRONZE、私らがTETORAでした」
「東京下北沢、さとりモンスターはじめます」

出自を明らかにする自己紹介の決まり文句。
地名や所属を頭につけて活動の起点を宣言するひと言は、ステージとをつなぐ合図であり、ある種の「所在地」を示すものだ。

じゃあ、ukkaの所在地とはいったいどこにあるのだろう?

「かわいい」ではなくて”kawaii”

2025年、ukkaはデビュー10周年を迎え、7人それぞれがプロデュースを担当する定期ワンマンシリーズを展開している。これまで3回を終え、迎えたこの日は4回目。全7回のちょうど折り返しにあたる。

プロデューサーを務めたのは葵るり。タイトルは『ukkawaii world !?』。その名が示す通り、テーマに据えられたのは“kawaii”だった。

この日の昼帯では、葵るりの生誕ソロライブが行われた。
翌日に21歳の誕生日を迎える門出として、アイドル好きの彼女が憧れ続けていた古今東西の「かわいい」へとまっすぐに近づこうとする時間。軽やかな歌声や仕草には、遊び心だけではない、憧れに向かい合う真摯さが宿っていた。

葵るり X投稿より

その延長線上で迎えた夜帯は、ukka全体で「かわいい」ではなく”kawaii”をどう形にしていくかを示す試みのように見えた。

(この日の第1部<生誕ソロ>、第2部<ukkawaii world>ともに、ライブの詳細は、あっさーさんのnoteがより詳しいです。ぜひそちらをご参照ください)

セットリスト

M1. Poppin’ love!!!
M2. 推≒恋
M3. マーマレード・フレイバー
M4. wonder little love
M5. 360°シューティングガール
M6. お年頃distance
M7. コズミック・フロート
M8. Rising dream
M9. can’t go back summer
M10. おねがいよ
M11. 灼熱とアイスクリーム
M12. Killer Lips
M13. キラキラ
M14. AM0805の交差点
M15. それは月曜日の9時のように
M16. タリルリラ

• EN1. Magik Melody
• EN2. R•I•Z・Z (RizziE from ukka)
• EN3. I my perfect (WarpiE from ukka)
• EN4. Candy rock Girl (MystiE from ukka)
• EN5. エビ・バディ・ワナ・ビー

甘さの洗礼

開演直後、スクリーンに映し出されたのは、ukka各メンバーの紹介――のはずなのだが、どうにも様子がおかしい。ひとりずつが白い壁の前に立ち、真正面からカメラを見つめているその表情は、およそキラキラなアイドルからはかけ離れた、疲労をにじませた顔つきだった。

後日、再現してもらいました(モデル:茜空)

ところが、その場で彼女がくるりと一周すると、映像は“スピン・アラウンド・トランスフォーメーション”で切り替わる。モーションを合図にトランジションが走り、めだたなかった普段着は、黒とピンクで彩られたステージ衣装に、沈んだ表情はライトを浴びた笑顔にトランスフォームする。そのほんの一瞬の“ビフォー/アフター・モンタージュ”は、見ているこちらに鮮烈な驚きを与えた。
(あまりの驚きに、つい広告代理店の凄腕営業マンみたいな言い回しになってしまいました。失礼しました。)

この変身が一人終わるごとに、次のメンバーが登場して同じ流れを繰り返す。二人目で「おっ」となる。三人目あたりで「ああ、そういう仕掛けを冒頭に持ってきたのね」と観客も笑みをこぼし、七人全員の“変身”が揃ったときには、スクリーン全体が華やかなovertureとして完成していた。

そうやって、実物の彼女たちが、ひとりずつステージ上にあらわれた。
それぞれに、今度は逆に、およそ「いつものukkaらしくない」過度に振り切った”ブリっ子(死語)”の表現を持ち込んで。

みいぃんなあーー! こんにちわーー!

明らかに悪意を込めた茜空の人工甘味料な甘い声に始まり、「メロンパン星からやってきました」と真面目にギークを言い切る村星りじゅや、自然体のままに何も添加物を使わず等身大の「かわいい」自己紹介を表現する宮沢友・若菜こはるの高校生コンビ。

開演からここまで5分、空いた口が塞がらずにのどが渇いてきた。

その空いた口に、“Poppin’ love!!!”から続く4曲が、まるでコストコの大きなケーキかのように無理やり押し込まれた。

好きだよ 好き

ukka『マーマレード・フレーバー』

甘さの極みは、3曲目『マーマレード・フレーバー』。若菜こはるがオリジナルどおり「好きだよ 好き」を歌い上げると、音がすっと途切れる。そこからは各メンバーがスポットライトを浴び、思い思いのアレンジで「好き」と告白していく。
胸焼けしそうなのに、不思議と悪い気はしなかった。
むしろ全身で苦笑いを含めたニヤっと笑ってしまうような幸せの圧力だった。

視点を寄せれば、フリルやリボンが照明を受けて光の輪郭を描きながら揺れている。引いて見れば、観客の表情が柔らかく変わり、ステージとフロアが甘ったるい時間でつながっていた。

でも、ある意味では、ここまでは予定調和の"kawaii"さだった。
そして、"kawaii"を所在地として機能しはじめた合図だった。

甘さの向こうのカッコよさ、さらにその先の茶番の連鎖

軽いMCを挟んで(ここまでの演出について、葵Pとメンバーとのわちゃわちゃした話があって)、空気が切り替わったのは、「かっこよさを見せます」と予告されて始まった次のブロックだった。

『360°シューティングガール』
フルコーラスで披露されるのは、かなり久しぶりじゃなかったか。久しぶりのイントロに、会場にはどよめき混じりの歓声があがる。
桜エビ~ずの頃、まだ背伸びしながら歌っていた曲が、遊び心と熱をまとって帰ってきた。十代の記憶に大人の余裕が混ざると、こうも違って響くのかと驚かされた。

『お年頃distance』『コズミック・フロート』『Rising dream』と続くブロックでは、カッコよさが何度も反復する。
寄って見れば、足の運びや指先にまで張りつめた緊張が刻まれ、引いて見れば声援の輪が幾重にも広がって会場を覆っていた。

場が熱を帯びたあと、MCを挟んで小さなコーナーが設けられた。
その名も「みんなの彼女大作戦」。
もともと葵るりがYouTube企画で立ち上げた動画が元ネタで、今回はくじ引きで当たったシチュエーションを即興で演じるというものだった。

罰ゲームのようだと戸惑うメンバー、プロデューサー権限で厳しく演技に圧を書けていく葵るり。
それでも、さすがは女優事務所のスターダストプロモーション所属。

【シチュエーション:3回めのデートの帰り道】
茜空
「もう会うの3回めなんだけど、なんか言うことないの?…じゃあ、もうじれったいから私から言うよ。。好きです、付き合ってください」
若菜こはる(※会場の歓声を待たずに間髪入れず)
「付き合います、お願いします!」

本気なのか冗談なのか、その境目を軽やかにまたぐやりとりに、会場は笑いと歓声にあふれた。
こうした「あざとさ」さえ、るりプロデュースの“kawaii”の一部に組み込まれていた。

カッコよさと茶番との交差(その2)

ふたたび、ステージは楽曲に戻る。

『can’t go back summer』では、ネコ語尾のギミックが入る。
「暑くにゃ~い?」「やばくにゃ~い?」
のちの配信で明かされたところでは、ここは本番のアドリブだったそうだ。
茶番のテンションを引きずっているこの感じ、いいぞいいぞ。

『おねがいよ』のギターフレーズが感情の濃度を底上げしていったのち、続く『灼熱とアイスクリーム』では、終盤に再び音が途切れる。

キャラメル バニラ チョコレート ストロベリー
君はどの味が好きですか

ukka『灼熱とアイスクリーム』


「君はどの味が好きですか」に答える形で、一人ずつ今度はややシリアス寄りに独白での「好き」という気持ちの告白。
さまざまなファンへの「好き」の気持ちの締めくくりは、村星りじゅからの「10年寄り添ってくれてありがとう。これからもよろしくね」だった。

葵るりの落ちサビでお馴染み(昼帯の生誕ソロライブでも披露された)『Killer Lips』が放つまばゆい疾走感に、”kawaii”のステレオタイプなフィルタではない何かが加わる。
このころから、近くで見ても遠くから見ても、ライブ全体の全体の呼吸が変わっていった気がする。

そして、ふたたび企画コーナー「みんなの彼女大作戦」が挟まれた。
2回めともなると、もちろんグダりますよね。
楽屋トーク的なわちゃわちゃは、ワンマンならでは。はい、最高でしたよ。

気がつけば、もう本編ラストブロックとのこと。

およそ、いまの"kawaii"というステレオタイプから想像すると選ばれなさそうな『キラキラ』」が光の奔流として響き、『AM0805の交差点』でいつものukkaの熱狂があり、『それは月曜日の9時のように』で一体感をもって、会場中が同じ時計を刻むような余韻が生まれ、『タリルリラ』では拍手が花火のように散っていた。

「以上、ukkaでした。ありがとうございました」

そうやって、本編はいつものライブの熱狂に包まれて終わった。

畳み込まれる“kawaii”

短めのインターバルを経て、すぐにメンバーがステージに戻ってきたアンコール。
導入の『Magik Melody』は、軽やかに指先へ魔法を宿すような多幸感が会場を包み、フロアにふわりと笑顔が広がっていった。

軽いMCが始まったと思ったら、宮沢友・若菜こはるの2人が早々に袖へ。
そのあとに続いたのはユニット曲のブロックだったRizziE『R•I•Z・Z」、WarpiE「I my perfect」、MystiE「Candy rock Girl」——新しく発表されたばかりの3曲が立て続けに披露された。

2025.8.20-22 ukkaリリイベ(ユニット別)より
2025.8.20-22 ukkaリリイベ(ユニット別)より

この3曲は、おそらくプロデューサーを務めた葵るりの構想には最初からは組み込まれていなかったのだろう。さまざまな事情から「入れなくてはならない」要素だったのかもしれない。だからこそ、本編の呼吸とは少し異なるテンションが生まれたのも事実だった。

けれど、一曲のために衣装を替え、それぞれの世界観を背負って立つ姿を目にしたとき、これはこれで見届けられてよかったとも思った。
本編で揃っていた衣装の7人とは違う、別の世界線の“kawaii”がそこに立ち上がっていたのだ。

そこに漂っていたのは「ヒロイン感」だった。グループの一員として溶け込むのではなく、一本の作品を担う「タレント」としての輪郭。スターダストがしばしば「女優事務所」と呼ばれるその系譜にも、自然に接続していくように見えた。

甘さと熱を交互に織り交ぜて築いてきた流れが、いったん横道に逸れたような感覚はあった。けれどそれは、拡張された“kawaii”の一部を味わうための小さな寄り道のようなものでもあった。

"kawaii"の来歴

そもそも”kawaii”という単語は、日本語の外に出てからも長い時間をかけて意味を変容させてきた。オックスフォード英語辞典によれば、英語に借用された最古の用例は1965年のニューヨーク・タイムズ紙にあるという。すでに半世紀以上前、アメリカの紙面に “kawaii” という文字が踊っていたことになる。

ただし、それはまだ小さな痕跡にすぎなかった。その後"kawaii"が世界的に広まる契機となったのは、2000年代にかけてのポップカルチャーの波だ。サンリオのハローキティが海外ブランドやセレブリティとのコラボレーションを重ね、キャラクターとして「かわいい」を体現した。『セーラームーン』『ポケットモンスター』といったアニメや漫画は、翻訳や放送を通して子どもたちの日常に入り込み、そこに描かれる日本的なかわいさを広めていった。

原宿発のロリータやデコラといったファッションも、インターネットを介して海外の若者に届いた。さらにYouTubeやTumblrなどSNSの加速度的な拡散力が、この言葉を単なる形容詞からカルチャーの記号へと押し上げた。もはや「kawaii」は表情や服装を説明する語ではなく、日本のライフスタイルや文化を示すひとつのシンボルになっていた。

そして逆輸入のかたちで、アイドルのコンセプトへも還流していく。だから今回、ukkaが「所在地」として“kawaii”を掲げたことは、ただの流行語の借用ではない。半世紀以上をかけて世界を往復し、意味を増殖させてきた言葉を、あらためて自分たちの手で引き寄せた——そういう試みに見えた。しかもそこに「world」という単語を添え、ひとつの舞台を宇宙のように広げてみせたのだ。


ukkaに“kawaii”を置いてみる試み

ライブ前に「この“kawaii”ukkaはもう見られないかもしれない演出がある」と複数のメンバーの配信やラジオなどで語られていた。つまり“kawaii”という言葉に所在地を置くのは、あくまで一度きりの試みだったのだろう。

——もちろん、Z世代でもない一介のおじさんが、ライブを見ながら勝手に想像しているだけのたわごと、という前置きは必要かもしれない。
言うまでもなく、このnoteは、観客席の端っこでふと思ったことを、そのまま言葉にしているにすぎない。

そもそも若い世代ほど、デジタルネイティブとして育ってきた。だからこそ「自分は何者なのか」を常にSNSで表明し続けないと、安心できる居場所を得られないように感じてしまう構造があるのかもしれない。
推し活という言葉が広がったのも、そうした不安の裏返しだろう。誰か、あるいは何かを推すことで「自分」を形作ろうとする。そのとき「kawaii」をまとった女性アイドルは、男女問わず共感を呼ぶアイコンとなり、大規模になればなるほど均質化した「推し活」へと収斂していく。

そう考えると、TikTokでバズを生む「わかりやすいカワイイ」と、ukkaが示した“kawaii”との違いがより鮮明になる。ukkaの表現には揺らぎがある。すぐに消費されるのではなく、受け手に一歩引いて考えさせる余白がある。そこにこそ、このグループの所在地が確かに息づいていた。

ukkaは長らくメンバーカラーを持たず、衣装も統一感の中に小さな揺らぎを散らしてきた。あえてアイコン的な「自分」というペルソナを固定しないように見える。

けれど実際は単純な話ではない。たとえば『呪術廻戦』で、釘崎野薔薇が上京して「スカウトされたらどうしよう、スタダとか」と呟くシーンが描かれる。ことほどさように、スターダストのアイドルに「ビジュアルが整っている」というステレオタイプはつきまとう。
本人たちがどうとらえているかはわからないが、少なくとも世間から見れば「スターダストに所属している」という事実だけで「かわいいのはわかってるやん」という空気は成立してしまう。

一方で、超ときめき♡宣伝部はいまや「kawaii」のアイコンとなり、いぎなり東北産も、ある時期に「kawaii」へと振り切った楽曲もレパートリーの中心に入れて、一気に武道館まで駆け上がった。
彼女たちにはもともとメンバーカラーという装置があり、「kawaii」を出すときにはグループのナラティブをいったん脇に置く。それは俳優事務所の側面としてのスターダストプロモーションの演劇的性格を帯びた「kawaii芸」と呼んでもいいかもしれない。

葵るり a.k.a.あざとプロデューサー

その対比で浮かび上がるのは、プロデューサー葵るりが持つ独自性だった。
彼女の「憎めなさ」や、「かわいいのにどこか安っぽい親しみやすい」と思わせる独特のバランスは、他の誰にも真似できない。

そして、彼女があえて「あざとい」という言葉をポジティブに響かせるのは、Z世代的な感覚かもしれない。
その軽やかな自己演出に、ukka特有の孤高さや崇高さが重なったとき、この日の『ukkawaii world!?』は単なる「かわいい」の羅列ではなく、奥行きを持つ舞台へと変わった。


10周年イヤーの折り返し地点に立って

アンコール最後の曲は、『エビ・バディ・ワナ・ビー』だった。
やっぱり、ukkaのライブは笑顔と熱狂のうちに幕を閉じるのが似合う。

「自称未来のスターです」

10周年イヤーに入ってから、既存曲の歌割りやダンスフォーメーションが次々と刷新されているが、この曲も例外ではなかった。これまでは茜空と芹澤もあが、下手脇で小競り合いをしていたパート。今回は全員が正面を向き、まるで宣言のようにこのフレーズを歌い上げていた。

“kawaii”演出として顔に貼られたフェイスシールは、汗で流れ落ちることもなく、光を反射して流星のように輝き続けていた。

10周年シリーズは、この夜で折り返しを迎えた。過去を振り返り、未来を思い描く節目に「kawaii」を所在地として置いたことは、偶然ではなかったのだろう。

ukkaの所在地は地図にはなく、音や光、沈黙や余白のなかにある。そう確かめながら、また次の場所へと歩き出す。
振り返れば、ここまでの3公演もそれぞれに違う色を帯びていた。
結城りなが「音楽」を題材に、沈黙や逆光のなかで空間そのものを奏でた夜。
茜空が「青春小節」の追体験を舞台に広げ、時間のきらめきをもう一度呼び覚ました夜。
若菜こはるが「成長日記」と題して、自分の歩みをそのままページのように重ねていった夜。

その流れの折り返しに、葵るりが「kawaii」を所在地に置いてみたことは、シリーズ全体の地図にまたひとつ違う光を差し込むようだった。

素敵なライブをありがとうございました。
そして、葵るりさん、大変遅くなりましたが21歳の誕生日おめでとうございます。

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