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静寂のなかの希望

一枚の絵から、旅がはじまることがある。

そのきっかけになったのが、この写真。

Ylösnousemuskappeli 復活礼拝堂

切り取られた一枚の写真からも伝わってくる、この空間が放つ圧倒的な静寂。
それはいったい何なのか。
その場所に立って確かめたいという強い衝動にかられた。

場所はフィンランドのトゥルクという街。
雑誌の北欧特集でフィンランドを担当することが決まった時期と、この写真に出合ったタイミングがぴったり重なっていた。
まるで礼拝堂から招待を受けたかのように。

建築家エリック・ブリュッグマンが設計したこの復活礼拝堂は、松林に囲まれるようにトゥルク墓地の中に建っている。
教会は街、つまり市民の暮らしの中に密接していることが多いけれど、この礼拝堂は少し違う。
森の中へと歩みを進める。そのアプローチからしてすでに特別な時間がはじまっている。

礼拝堂が完成したのは1941年。
当時フィンランドはソ連との戦争のさなかにあり、幾万もの命が戦場から祖国の土へと還っていった。日常に「死」があふれていた時代だった。

このチャペルは葬儀のための礼拝用に建てられた。
戦争の死者を送り、家族や恋人、友人が大切な人と最後の言葉を交わす真摯な別れの場としての役割を担ってきた。

キリスト教では、「死」は終わりではなく「復活」であり、「新しい命」へとつながる希望でもある。

戦争で多くの死者が出た社会にとって、「復活」は絶望の中の希望を象徴するという。

ブリュッグマンはその思想を、入り口から祭壇に向けて変化していく「建築の体験」として表現した。

空間体験としての復活

まず、松林の中を歩くと、
自然の静けさが訪れる人々を包み込む。

建物は低く控えめで、森の延長のようにそこにある。
宗教建築でありながら、権威的な姿はない。

中に入ると空間はやや暗く、外の自然といったん切り離される。
しかし、奥へ進むと光が現れる。祭壇側の大きな窓から自然光が差し込み、視線はその光へと導かれていく。

窓の外には松林が広がり、その風景が十字架の背景と重なる。
祭壇に絡みつくツタは、時間と自然の変化を感じさせ、新たな生命をはぐくむような詩的なイメージを浮かび上がらせる。


静けさ

十字架

それだけで構成された空間は、大きな奇跡ではなく「静かな希望」を表わしている気がした。

それは、死者を弔いながらも日々の生活を重ねていくこと。
どんなに大変なこと、つらいことがあっても心を新たにし生きていくこと自体が復活なのではないかと思う。

ブリュッグマンは、この礼拝堂が悲しみに打ちひしがれた人々を慰める場所になることを願っていた。

その願いどおり、この場所は長い年月、数えきれない涙と祈りを受け止めながら、人々を闇から光へと導いてきた。
その様子を見守ってきた、上からの温かな視線もまた、静かな沈黙で応えているのだろうか。


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