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朝焼けの国道は嵐の前の静けさ 

文才なしが片岡義男を雰囲気だけ真似てみる編4

「なんだ。まだ4時か」 
彼は変な時間に目覚めてしまった。 

「昨夜、執筆中に寝落ちしちゃったからな。」 
「妻はまだ起きてたから、10時頃に寝ちゃったんだろうな。」
「あ〜、眠れないよ。起きちゃおうか。」

彼はブランケットをパッと跳ね除けベッドに座り窓を見た。
薄っすらと夜が明け始めてきている。
スマートフォンで天気予報を見たら、今日は天気は良いらしい
「ちょっと走りに行ってくるか」

彼は膝パッド付きジーンズとメッシュジャケットに着替えて、1Fのサニタリーで洗顔と歯磨きをし玄関においている黒いフルフェイスヘルメットを被って外に出た。

起きた時より明るくなっていた。
「走り出すとまだ寒いかな?まあ、我慢出来なければ引き返せばいいか。」駐車場は家の玄関を出て左側。
そこには手前に妻の車。
その奥に彼のオートバイが駐めてある。

日本メーカーの現地法人が製造した250cc空冷単気筒で、20.8PS 20.1N・mと非力だが彼は全く不満を感じていない。
彼がこのオートバイを購入し5年弱になる。
以前は1100ccに乗っていたが、ハイパワーに頼るのではなく、いかにスムーズに走らせるか。
それが楽しくてたまらない。

バイクカバーを取り、ロール状に巻き整理棚に置いた。
キーを回しイグニッションをON
クラッチを握り、左足のつま先でシフトペダルを軽く押し上げると、ニュートラルのグリーンランプが点いた。
普段ならここでエンジンを掛けエアチェックの間に暖気させるが、早朝なので緩やかな下り坂をニュートラルで下り、主要道路にでたらエンジンを掛ける。

エンジンにタイヤもサス、体も温まっていないので、回転を上げずゆっくりと走り始める。
久々に、県境の峠まで行ってみようか。
その峠までは片道30分位。
今5時か。
途中で缶コーヒー買って峠で飲もう。

十数分バイパスを走ると、国道が街方向と山方面の分岐点になる。
彼は山へ向かう右側の分岐を走った。
こちらは、数百メートルほど前を走る車のテールランプが小さく見えるくらい空いている。
ここで距離を詰め追いつけばストレスが溜まるだけだ。

しばらくこの距離感を保ちなが山間の集落に入ると、先行の車がウインカーを点滅させ左折していった。
ここでスロットルを捻りたくなるが、農家の方々が畑に向かわれる時間でもあるため、このままのペースで行こう。

先行車が左折した辺りに自販機があった。
彼はバイクを止め、ポケットからコインで温かい缶コーヒーを買いシートバッグに入れた。

少し走ると集落を抜けた。
ここからワインディングが始まる。
メッシュジャケットでは寒くないか?と心配したが、それほどでもなさそうだ。
勾配が徐々にきつくなり、カーブが増えて来る。

154㎏の軽量な車両、そして内径74mm ピストンストローク58㎜のショートストロークエンジン。
ショートストロークエンジンは高回転型と言われるが、このエンジンの設定は単気筒らしいトルクが太い。
シフトダウンせずに5速のまま、しっかりと後輪にトラクションが掛かり、軽やかにコーナーを抜けていく。

このバイクは、パワーに頼らず持て余さず、エンジンパワーを使い切るライディングの楽しさを教えてくれた。
そして、このバイクメーカーが一貫しているのが、ハンドリングの良さだ。
ミスをカバーするような過保護な設計ではない。
ミスをミスとして、ライダーに教えてくれる。
それを察知し、改善していく。
彼にとって、良きコーチとなっている。 

十数ほどのカーブを抜けただろうか。
彼は峠の駐車場に入って行った。
前方には朝焼けに染まった富士山
ふもとに広がる街の街灯も半数は消えていた。

時計は5時半を少し回っていた。
缶コーヒーとタバコと携帯アッシュトレイとバッグから出し、近くのベンチに座りタバコに火をつけた。
吐き出した煙が雲海のように広がる。
プシュ
缶コーヒーを開け、ひとくち飲んだ。
バイクにはタバコと缶コーヒーは欠かせないよな。

彼は以前、医者にタバコを止められたが、それで胃潰瘍になったら本末転倒だ!と笑いとばした経緯がある。
コーヒーも飲み過ぎは良くないと聞くが、そんなのは気にしない。
好きなんだから仕方ないだろう。

タバコを吸い終え、携帯アッシュトレイに入れた。
彼は灰さえアッシュトレイに入れる。
それが喫煙者の最低限のマナーとしている

さて、そろそろ戻るか。
5時48分
彼はキーをONにしセルを回した。
排気音が峠の静寂を破る。
とはいえ、ノーマルのマフラーなので不快な音量ではない。
250㏄にしては、低く力強い音色でそれも気に入っている。

メッシュグローブをはめ、バイクに跨る。
タコメーターは1,300rpm
通常のアイドリング回転数だ。

ギアを1速に入れ、Uターンして駐車場を出た。
前には乗用車やバン、大型トラックが走っている。
そろそろ、通勤の人達が動き出す時間なんだな。

*後記
片岡義男氏の文体を「〜風」で真似る実験。

保育園時代から、日記や作文、読書感想文の類がことごとく大嫌いだった。まともに書いた記憶さえなく、そのまま通り過ぎてきた64歳の私が、つい3ヶ月前に突然、短歌を始めた。

だが、わずか1ヶ月で「自分向きではない」と自主的に卒業した。
そこから最近、メタファーの構築へとシステムを移行した。
移行してから2週間ほどの間に、一気に380個ほどのメタファーを脳内から叩き出してしまった。
だが、それをただパソコンのハードディスクに保管しておくだけでは何の意味もない。
何か活用できないか?
そう考えて行き着いたのが、「メタファーを小説のタイトルにして、その奥にある物語を書けばいいではないか」だった。
そう。
片岡義男氏の著書『幸せは白いTシャツ』の構造に、私は大きなヒントを得たのだ。