【心の居場所まとめ⑤】紹介小説第4話「詩に思いを馳せて」
「この詩……すごい」
岩井先生を見送って、再び185ハウスに入ったとき、壁に飾ってあるのに気付いた。
「はぁ?今頃?」
万尋が爆笑した。
だって、さっきは分かったことを教えたくて走って来て、岩井先生がいてびっくりして、周りを見る余裕がなかったから。
「くりすたるるさんのこの詩、ハウスにさ、こんなふうに飾ろうと思って」
「うん、いいね!」
私たちが目指す居場所。
温かい毛布のような。
陽のあたるの野原のような……。
この詩の中に溢れている。
苦しみのすべてを分かることはできない。
でもそれを受け止めることはできる。
『だから、ここに居ていいんだよ』
そんな気持ちが伝わってくる。
そのとき、紫吹はるさんの記事が心に蘇った。
「しんどいことはしんどい」そう言える場所があるだけで、きっとすこしだけ心が楽になる。
苦しいこと、辛いこと。
我慢して生活している人はたくさんいる。
もちろん、まったく苦しくない世の中なんてない。
だからこそ、軽い気持ちで『もうダメェ』とか『やってらんない』とか、ほんの小さな愚痴でも吐き出せるところって必要だと思う。
それが積み重なっていけばいくほど、大きな心の負担になるから。
誰かに相談するのはハードルが高いかもしれないけど、それぞれのプライベートを知らない人たちが、何となく落ち着く場所で、その場限りの話として話したり、聞いたりできるなら……なんて思う。
どうしても難しいのなら文章にするのもいいかもしれない。
気持ちが『わかる』のではなく、気持ちを『受け止める』場所。
そんな居場所って無理なのかな……。
「人に直接相談するのって、ハードル高いよね……」
私のつぶやきを、万尋は聞いていた。
「はるさんの記事だろ?俺もくりすたるるさんの詩、最初の部分読んで思い出したんだ」
「気持ちを受け止められる場所にしたいね」
「『受け止める』かぁ……乃亜、RaMさんの記事読んだ?」
スマホ画面を私にみせながら、万尋は続けた。
「ここの言葉がさ、頭をよぎって」
背伸びしなくても、等身大をそのまま受け止めてもらえる、やさしくて、おだやかなところです。
「RaMさんって聞いて私も思った!感じ方が私に似ている気がするから、すごく印象深くて」
こういう場所があれば、自分を見つめ直すことができる気がするし、ちょっとだけ後押しができるかもしれない。
「あっ!」
万尋のスマホ画面をスクロールさせる。
「どした?」
安心して、ただそこにいるという、パッと見なんでもないことが、気負わず当たり前のようにできる場所
「これ!読んでいて、心に刺さったっていうか……」
何でもない当たり前のことが実は難しかったりする世の中だから、一時的にでも『そこにいるのが当たり前な場所』が必要だと思う。
三條凛花さんもおっしゃっていたように、居場所は一箇所じゃなく、できれば複数箇所あるのが理想。
心を切り替えるための場所。
少しだけ後押ししてもらえる出発点。
この185ハウスが、その一つの選択肢でありたい。
「もしさ、何人かの前で話すことができないとしても、こういう取り組みをされている方もいるよ」
reinaさんも同じような悩みを抱えられていた。
周りに人がいても、いなくても
私はずっと孤独だった。
周りに理解してもらえない、と感じられていた。
多くの人の前で自分を出すのは難しいかもしれない。
でも1対1なら話せるかもしれない。
そういう人も世の中にはたくさんいるはず。
『自分は認められていない』
私も以前はそう思っていた。
みんなに溶け込めない浮いた存在のように思えていた。
でも万尋は違った。
私を必要としてくれた。
1対1なら、心を開けるかもしれない。
もちろん、それも難しいと感じる人の気持ちも良く分かる。
私自身、自分から切り開いた『1対1』じゃないから。
だから私もreinaさんのようになりたいって思ったんだ。
「1対1って喫茶店では作りやすいと思うんだ。お客さんとの1対1も、お客さん同士の1対1もね」
万尋を見ると、いたずらっ子のような顔をしていた。
「万尋?」
訝しげな私に、万尋はニヤッと笑う。
「1対1が難しくても『0対1』なら大丈夫なんじゃね?」
0対1?
万尋の真意が掴めない。
「どういうこと?」
「まぁまぁ、もう少し煮詰めてから言うわ。それよりさ、今日はこの話の流れで決めちゃおうぜ。ここをどんな居場所にするかその概要を!」
あとがき
前回長くなり過ぎたことを反省し、今回は2000字以内にしました。
その結果、最低あと2話必要となりました💦
気長にお付き合い頂けると嬉しいです。
作中で『くりすたるるさんの詩を飾る』としていますが、くりすたるるさんの許可は得ていません💦
許可を頂きました!😆
くりすたるるさん、ありがとうございます😊
今回のトップ画像は、【心の居場所まとめ①】noteという居場所でご紹介した、すうぷさんの画像を使わせて頂きました。
くりすたるるさんの詩にありました『陽のあたる野原』のイメージとして、可憐なたんぽぽを選ばせて頂きました。
すうぷさん、ありがとうございます。
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