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風まかせ文芸部|【ほどける】

『産まれましたよ!笑』

長女の夫からのLINEに、渋滞にはまってイラついていた気持ちが氷解した。
笑、が付いているのは、渋滞中を伝えたからだろう、別の種類のはやる気持ちが生まれる。
立ち会い出産が主流でなかった頃は、父となる人が味わった気分なのかもしれない、と苦笑する。

子を為すつもりならば、すぐにでも不妊治療、しかも体外受精を…と医者に言われた、と聞いた直後の妊娠だった。

長女の夫のご両親は、結婚=子ども子どもと二人に言うようなノンデリカシーな親ではなかったけれど、楽しみにしていることを"私は"知っていた。

まだほんの初期。
さまざまなリスクがあるのは誰もが知っている。
もしかしたら、最初で最後かもしれない。

「安定期になるまでは」
「そうだね」

順調に行けば喜びは共有できる、申し訳ないが、少しの間内緒にしておこうと二人と合意したスタートだった。




「上手なお産でしたよ」

長女の夫と交代して、LDR、とやらに入らせてもらうなり、助産師さんが声をかけてくれた。

上手なお産…

何十年ぶりだかで耳にする、妊産婦界隈用語にどぎまぎする。
きつく絡みつくのを意思の力で緩めてきたに違いない、もやもやとした思いが、ほどけてゆく。

長女のお腹が膨らむにつれ、たった二回の自身の経験が重なった。
順調すぎる妊娠期間を過ごした後の、先に破水、陣痛と微弱陣痛、促進剤、胎児の心音…挙げ句の帝王切開で長女は産まれた。
「あんたが…死んでくんやないかと思った」
のちに目を潤ませて母は語った。
母と同じ気持ちを味わうかもしれない。
次女の時は出産前二か月、絶対安静を強いられた入院のままから産まれた。
ナーバスな心配は伝播する。
今は口にしない方がいいのだろう、もやもやとした思いは伸縮を繰り返すものの、霧散するでもなく留まっていたのだった。

『暗くなる前には産まれそうだそうです』
陣痛からの時間を考え、安産が確信に近付く。
この先生の読みは正しいに違いない、上から目線でジャッジしている。会ったこともない先生に、失礼すぎるが許して貰っておくこととしよう。




「突然来るとか、びっくりするじゃない」

顔を振り向けるでもなく、特段ハイな様子も、くたびれきったふうでもない、いつも通りのしれーっとした長女の声。いつも不思議に思う、私とは違う彼女の冷静さがそこにあった。
『産み』途中かもしれない娘に直接連絡するのは憚られて、ムコ殿(婿養子ではないが)とやり取りしていた。
すまんの〜事前連絡したってぇ〜🤣

ほどけたもやが、消えゆくのを味わいながら、下僕のように😆彼女の身体をさする、お疲れさま。



iさんの企画に参加させて頂きます。
最近のできごとを絡めてみました。
いつもありがとうございます😊





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