【第426回】 Agentforce : AI エージェントから有人エージェントを呼び出す
前回の記事では、チャット開始時点で有人ライブエージェントへ接続する仕組みについて解説しました。
今回はその続きとして、AI エージェントとの対話中に、有人ライブエージェントへ切り替える方法をご紹介します。
この切り替えの仕組みは、一般的に 「エスカレーション」 と呼ばれます。
たとえば、次のような役割分担が可能です。
よくある質問やシンプルな問い合わせ → AI エージェントが自動で回答
AIでは対応困難な質問や複雑な相談 → 有人エージェントへエスカレーションして対応
このように、AI と人間のエージェントを状況に応じて切り替えることで、スムーズかつ適切なサポートを実現できます。
重要:本記事では前回作成した有人ライブチャットの設定を引き続き使用します。まだ設定が完了していない場合は、お手数ですが前回の記事の手順に沿って、有人チャットを呼び出せる状態(サービスコンソールで応対可能な状態)まで準備を進めてください。
今回実施する設定の全体像
今回の構成は、以下のステップで進めます。
サービスチャネルの確認
送信オムニチャネルフローの作成
送信オムニチャネルフローと Agent の接続
エスカレーション用トピックの追加
AI エージェントとの対話の中で動作確認
1. サービスチャネルの確認
1. [設定]>[サービスチャネル] を開き、一覧を確認します。
デモ環境や無料の開発環境では、すでに 「Messaging Session」用のサービスチャネルが作成されている場合があります。
(例:Messaging、LiveMessage など)
※ サービスチャネルは 1 つのオブジェクトにつき 1 つのみ作成 できます。

2. サービスチャネルの詳細画面で、対象オブジェクトが「Messaging Session」になっていることを確認してください。
問題なければ、後続のフロー作成で使用するため、サービスチャネル名を控えておきます。
無料の開発環境:Messaging(今回)
パートナー専用の SDO の例:LiveMessage
もし 「Messaging Session」オブジェクト用のサービスチャネルが存在しない場合は、新規作成してください。
2. 送信オムニチャネルフローの作成
1. 設定からフローを検索して、新規フローを作成します。

2. 「オムニチャネルフロー」を選択します。

3. 要素を追加して「作業を転送(Route Work)」を選択します。

4. 要素名と API 参照名を決めたら、レコード ID 変数にて、「新規リソース」を選択します。

5. 「変数」を選択します。

6. 次の画面では以下を入力、または選択して、保存します。
API 参照名:recordId
データ型:テキスト
フロー外部での可用性:「入力で使用可能」にチェック

7. レコード ID 変数に「recordId」が入力されたら、サービスチャネルの中から「Messaging」を選択します。
この「Messaging」では「Messaging Session」オブジェクト が対象になっています。

8. ルーティング先(Route To)で「Queue」を選択します。

9. キュー ID においては、前回の記事で作成したキュー(今回の例では Live Agent Queue)を選択します。このキューには、カスタマーサービス担当者のユーザーが割り当てられていて、その人に呼び出しがかかります。

10. フローを保存します。

11. フローを有効化します。

3. 送信オムニチャネルフローと Agent の接続
1. 作成済みのサービスエージェントの Agentforce Builder に遷移して、無効化してから、トピックで新規から「アセットライブラリからの追加」をクリックします。

2. 「エスカレーション」のトピックを追加します。

Tips:エスカレーションのトピックには、何もアクションが紐づいていない少し特殊なトピックであることを知っておきましょう。

3. 「接続」をクリックします。

4. Summer '25 の新機能リリースされた「拡張接続パネル」が有効化されていない場合は「有効化」してください。

5. 「拡張チャット V2」をクリックします。

6. 「エスカレーション」のセクションで、先ほど作成した「送信オムニチャネルフロー」を選択します。

7. 転送する際のメッセージを入力して保存します。
英語例:One moment, I'm transferring our conversation to get you more help.
日本語例:より詳しくご案内できる担当に引き継がせて頂きますので、少々お待ちください。

8. 続いて 「メッセージング」 の方もクリックし、同様の設定を行います。


現在、従来の「拡張チャット V1」をご利用の場合は「メッセージング」側で処理されます。一方で 「拡張チャット V2」 は 拡張チャット V2 専用 の設定項目となります。
そのため、どちらのバージョンを利用している環境でも漏れがないよう、両方に対して設定しておくことを推奨します。
4. General FAQ トピックの指示の変更
1. General FAQ トピックの内容を、以下の内容に変更します。特に ②③④ の内容が重要になります。
(英語版)
分類の説明(Classification Description)
This topic is intended to answer customer questions by searching knowledge articles and responding based on the information contained in those articles.
範囲(Scope)
Your role is strictly limited to answering questions about the company, its products, business procedures, or policies by searching and using knowledge articles.
指示①
Highest Priority:For any question that can be answered using information stored in knowledge articles, you must always respond using the “Answer Questions with Knowledge” action.
指示②
Next Steps When a Knowledge Article Cannot Resolve the Issue:If you are unable to answer the customer’s question using Knowledge, first provide a sincere apology. Then, always confirm how the customer would like to proceed.
Please present the following options and ask which one they prefer:
- Proceed with creating a case
- Connect to live chat support
Please display the options in a button format.
Important: Do not request a verification email address or any other personal information without confirming the customer’s preference above.
指示③
Case Creation:Only if the user clearly requests to “Proceed with creating a case”, switch to the “Case Management” topic and begin the case creation process.
指示④
Escalation to a Human Agent:If the user selects “Connect to live chat support”, transition to the escalation topic and proceed with connecting them to a live support agent.
指示⑤
During the conversation, begin by thanking the customer with the following format, using the Last_Name__c value from the Messaging Session:
“Thank you for your inquiry, Last_Name__c.”
Always use the exact value entered in Last_Name__c as-is.
(日本語版)
分類の説明(Classification Description)
このトピックは、ナレッジ記事を検索し、その内容をもとにお客様の質問へ回答するためのものです。
範囲(Scope)
あなたの役割は、ナレッジ記事を検索し、その情報を用いて、会社・製品・業務手順・ポリシーに関する質問へ回答することに限定されます。
指示①
最優先事項:ナレッジに格納されている内容で回答可能な質問については、必ず「Answer Questions with Knowledge」アクション を使用して回答してください。
指示②
ナレッジで回答できなかった場合の次のステップ:回答できなかった場合は、まず深くお詫びしてください。その次の対応方法について必ずユーザーに確認してください。以下の選択肢を提示し、お客様の希望を確認してください:
・ケース作成に進みたい
・ライブチャットに移動したい
※この確認なしに、検証用メールアドレスやその他の個人情報を要求することは禁止です。
指示③
ケース作成:選択肢に対して「メールによる問い合わせ」 を希望した場合は、「Case Management」トピックへ移行し、ケース作成の対応を開始してください。
指示④
人による対応へのエスカレーション:選択肢に対して 「ライブチャット」を希望した場合は、「エスカレーション」トピックへ移行し、ライブチャット接続の処理へ進んでください。
指示⑤
会話の開始時には、Messaging Session の Last_Name__c の値を用いて、以下の形式でお礼を述べてください。
「Last_Name__c さん、お問い合わせありがとうございます。」
Last_Name__c の値は、入力された文字列をそのまま使用し、翻訳・ローカライズ・文字変換は行わないでください。
例:「Watanabe」 と入力された場合は、「Watanabe」 のまま使用し、「渡辺」 などへの変換は行わないでください。
2. 設定が完了したら、エージェントを有効化してください。

5. AI エージェントとの対話の中で動作確認
1. 最後に、AI エージェントとの会話を開始して、動作確認をします。

2. ナレッジでは回答できない質問を行ってみます。

3. するとナレッジでは回答できないので、選択肢が提示されました。まず、「ケース作成に進みたい」を選択します。

4. ケース作成のフローに進みました。成功です。

5. 一度エージェントとのセッションを終了させて、再び同じ質問をして、今度は「ライブチャットに移動したい」を選択します。

6. すると、有人ライブチャットに引き継がれました。こちらも成功です。

いかがでしたでしょうか。
実際の運用では、AI エージェントの応答がまだ安定せず、本記事のとおりに動作しないケースも発生するかもしれません。その場合は、トピック指示の精度調整や、条件分岐・エスカレーションの再設定を行うことで挙動が改善されることが多いです。
特に、AI と人間のエージェントを併用する設計では、
「AI がどこまで対応し、どの時点で人に引き継ぐか」
という境界の設計が成功の鍵になります。
本記事が、皆さまの環境でエスカレーション設計を進めるうえでの参考になれば幸いです。引き続き、Agentforce/Service Agent の活用方法を探っていきましょう。
今回以上です。
