ビールは水分ではない
[連詩]
間:
水分補給はこまめにしよう
いつの頃からか
当たり前に言われるようになった
中学の部活では水を飲ませてもらえなかった
ぼくらの年代に共通の記憶
でも今ならそれは
虐待に近い
水分補給してよ
妻も口うるさく言う
ここで問題
お父さん水分補給してくださいね
そう優しく指導してくれた訪問看護師に
ぼくはビールを飲むからいいんだ!
そう言い放った父は
どうすればいいだろう?
GPT:
医学的には間違っている
ただ
ここで必要なのは
真理の主張ではない
間:
朝食の後
そして昼食の後
ぼくはお茶を淹れる
父は
ありがとう
そう言って飲むけれど
半分残して捨ててしまう
GPT:
アルコールには強い利尿作用があり
分解にも多くの水分が消費されるため
お酒は水分補給になりません
間:
AIはそう教えてくれる
それがセオリー
ただ
チェイサーも休肝日もなしに
九十三歳まで飲酒を続けた父に
説得に足る言葉はない
訪問看護師も笑ってた
酒もタバコもやらなかったラグビー教師は
四十二歳で肺がんで死んだ
人はあまりにも個別性が大きくて
セオリーには回収しきれない
父に演繹的説得はできないだろう
人は
急に具合が悪くなることがある
そのことを
本と映画で痛いほど知った
だからと言って
そのことは父には届かない
ただ
それでいい
そうも思う
