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落葉に眠る記憶 -6-

(前話は、↑こちらからどうぞ)
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第六話 土産物屋『七転八起』(ななころびやおき)


...チチチチチ..チチ..
チュン...チュン...チュン

ガバッ

「ん〜、良く寝たな。」

風呂の効能のせいか、少々気怠いが
疲れが取れている。

帳場に降り、朝餉は不要なことと
外出の旨を記す。

「さて、行くか。」

昨日、決めてた通りに
旅籠の前の土産物屋へ向かう。

土産物屋は、紫の暖簾が風にたなびいている。
縁台には、張子、能面、鬼面、ひょっとこ面
簀の子の上に整然と並んでいる。

チリ〜ン、チリリ〜ン

(風鈴か...)

店の軒下には、たくさんの風鈴が風に揺られて
鳴っている。
風鈴に付いた短冊には、何か文字が書いてある

(季節外れもいいところだが...どれ)

『過ぎたるは及ばざるが如し』
『後悔先に立たず』
『光陰矢の如し』

「......個性的だな。」

「悪かったね、個性的で。」

!!
背後から声がかかり、振り向く。

「いきなり人の店の前で失礼な物言いだね。
...うん?あんたは?。」

「お初にお目にかかります。一昨日から前の旅籠に宿泊してる者です。」(ペコリ

「うん?そうか。あんたが落葉の間の旅人さんかい。」

(...どうして、それを)

懐疑そうな面持ちの私を見て初老の男性が
ニヤニヤと笑う。
「板長から聞いた。」

(あぁ、なるほど)

「わたしは、この店の主人で沢口という。
旅籠の女将は、義理の姉だ。」

「そうですか、それは知りませんでした。
旅籠の女将さんが義理の姉だとすると、
沢口さんの奥さんが...。」

「あぁ、女房が旅籠の女将の妹だった。」

(...だった?)

「...要らんこと、言ってしまったな。女房は
もう15年も前に涅槃に行ったよ。」

「......それにしても、ここ。やたら鈴が目立ちますね。軒先に風鈴。縁台に組紐と鈴がたくさん
並んでいて...とても賑やかでいい。」

「......女房の名は...女房は、涼香(すずか)だ。
涼しい香りと書いて。」

「そうですか。」

「あんた、なんとなくだが...絵描きさんか作家さんかい?人より色々見えてるようだが...。」

ハハハ...(ポリポリ
「いえ、どこにでも居る普通の旅行者です。」

「...ふん、まぁいい。ウチに来たってことは
何か買っていくんだろ?。」

(...そうだな)
「ご主人、その紫の組紐に紅葉の意匠がついてるやつと、その浅葱色の組紐にコスモスの意匠がついてるやつをくれないか?。」

「わかったよ。包みは、どうするね?。」

「そうだな、紅葉の方は、そちらの茶色の和紙に。コスモスの方は...そこの白の洋紙に包んでくれ。」

カサカサ

「これでどうだい?。」

「いいね、バッチリだ。」

♪〜

「...しかし、あんた。ここは初めてのかい?。」

「あぁ、そうだが。」

「それにしちゃ、物怖じしないし、何でも
はっきり言う。......なんだか。」
土産物屋の主人は、何かを思い出すように
空を見上げる。その後ゆっくりと、こちらを見て
ニカッと笑う。

「はははは。」
バツの悪い間を感じて愛想笑いをする。

「しかし、ヤツとは感じが違う。気持ちがいい。」

「沢口さん、ヤツとは?。」

店主は、ハッと我に返る。
「いかんいかん、また要らんことを。そういやあんた、今までどれくらい女を泣かせてきたね?。」

「...。」
思わず返答に困ってしまう。

店主は、背伸びをしながら
「ん〜〜〜。さて、ワシも店の準備がまだだった。また、なんかあったらウチに寄ってくれ。次からは安くしとくよ。」

そう言うと、店主は店の奥に消えていった。

(...女性を泣かせる、なんてことあったかな?
う〜ん、全く記憶にない)

土産物屋の庇の影が僅かに傾きを変えていた。

グゥ〜

「......。」
「やっぱり、朝飯出して貰おう。」


一言そう言うと
旅籠へと戻ることにした。

(7話へ続く)


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※作品設定・村の背景などは「落葉に眠る記憶 補完庫」に随時追記しています。
▶ 落葉に眠る記憶 補完庫↓

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