純度の正体。栗田工業と半導体の水脈
■肥溜めの決意
【前回までのあらすじ】
サノヤスHDの座礁と浮上を見た私は、思想も現実も捨てられず海底に沈んでいった。
これだけ見れば文学的であるが、安心してほしい。海底というより肥溜めである。
▼気になる方はこちら
(本編は次章からなので読み飛ばしOK)
私は記事を書くとき、ChatGPTやGeminiに記事を投げて感想を聞く。
誤った情報を流したり、過激すぎる表現がないか、チェックするためだ。
あと褒めてくれると嬉しい。
(友だちいないのか?)
先日、ChatGPTに聞いたところ、
「お前。分析力つけろ。思想ばかり追って、数字をオマケにすんじゃねえ」と、言われた。
気分はぺちゃんこである。
そこまで言うなら、やってやろうじゃないか。
分析もできるところを見せてアッと言わせてやる。
後で泣いて謝っても許してやんないかんね!(少々幼稚な決意である)
そういうことで今回は肥溜めの私にふさわしい、かの水処理企業。
栗田工業(株)(6370)へ挑戦したいと思う。
汚水を浄化する企業で、私の分析力も濾過できるだろうか?
本気をだす!(明日から)
■究極の純粋を売る商売
栗田工業の事業は、水処理薬品や装置の製造販売、装置メンテナンスや洗浄、超純水の供給と多岐に渡る。
水は物を溶かしやすく、汚れの除去や成分抽出で活躍する。
中でも超純水は、わずかなゴミも許されない半導体の製造工程においても使われる。
ちなみに、超純水は50mプールに耳かき一匙の不純物程度だというのだから驚きだ。
歩く不純物である私からすれば考えられない。
純度が高すぎる。
かの、呪われて腕からもじゃもじゃが出るタイプのイケメンは言っていた。
「曇りなき眼で見定める」
腕からもじゃもじゃも出せない呪われた汚物の私は、濁った眼で栗田工業(株)2026年3月期第3四半期決算短信を見定めることとした。
■数字は濁っているか
栗田工業の3Q時点での業績は、
・売上高 3,036億円(前年同月比+27億円)
・営業利益 388億円(前年同月比+35億円)
…営業利益率12.8%
・自己資本比率61.3%(前年同月比+0.1ポイント)
数字だけ見れば、濁りは見当たらない。
ちなみに、同業他社の同時期比較も見ておこう。いずれも2026年3月期第3四半期時点のものだ。
メタウォーター
・売上高 1,229億円(前年同月比+245億円)
・営業利益 32億円(前年同月比+36億円)
…営業利益率2.6%。
・自己資本比率41.4%(前年同月比+0.1ポイント)
オルガノ
・売上高 1,277億円(前年同月比+120億円)
・営業利益 261億円(前年同月比+63億円)
…営業利益率20.4%
・自己資本比率63.1%(前年同月比+0.9ポイント)
ここだけで見れば、勢いはオルガノにありそうである。
だが、3Q時点では栗田工業の売上規模が優勢であり、利益率で遅れを取っていてもその利益額ではやはり栗田工業が優勢だ。
■隣の水はなぜ眩しいのか
隣の水(オルガノ)は驚異の純度(営業利益率20.4%)で眩しく見える。
栗田工業となぜこれだけの利益率差が生じるのだろうか。
セグメント毎の利益率を見てみよう。
栗田工業
・電子市場
セグメント利益率14.2%
・一般水処理市場
セグメント利益率12.4%
オルガノ
・水処理エンジニア事業
セグメント利益率21.4%
・機能商品事業
セグメント利益率14.3%
※いずれもセグメント利益は営業利益ベース
両社でセグメントの切り方が異なるため比較しにくいが、
オルガノの水処理エンジニア事業だけ突出しているのがわかる。
さらに潜ってみよう。
オルガノの水処理エンジニア事業の内、電子産業の売上比率は74.4%だ(2026年上期決算説明資料より)。
栗田工業の電子市場比率は46.5%(3Q決算短信)であり、ここに営業利益率差の一端がありそうだ。
AI需要に伴う半導体市場は、2023年から2024年にかけて19.7%増加している(世界半導体市場統計より)。
実際、2023年3月期のオルガノ社の営業利益率は11.4%と今ほど高くはない。
半導体市場の躍進が、オルガノを後押ししていると見るのが自然だろう。
なお、メタウォーターの営業利益率が低いのは国内の浄水場や下水処理といった公的側面が強いためと思われる。
■半導体という賭け
こうして見ると、オルガノは半導体市場へ賭けており、栗田工業はバランスを取っていると見ることができる。
もっとも、栗田工業の2025年3月期有価証券報告書では、電子産業への重点化を示唆しており、バランスを取っているのか、乗り遅れたのかは定かではない。
また、オルガノの大株主は総合科学メーカーである東ソーであり、そもそも半導体市場に強い背景がある。
いずれにしても世界半導体市場統計では、2025年は2024年を上回り+22.5%、2026年は更に上回り+26.3%と市場拡大を予測しており、両社ともより伸長していくことが期待されるところだ。
ただ、半導体は設備投資循環の激しい産業であることも忘れてはならない。
■純水と思想
企業としてはより純度(利益率)の高い市場へ向かうのは当たり前だ。
しかし一方で、超純水が殺菌成分すら無いことで雑菌が繁殖しやすいように、半導体市場が減退する局面では、相応のダメージを受けることも片隅に置いておかなければならない。
栗田工業の動きは、日本の水処理産業における王者として、慎重で落ち着いた動きなのかもしれない。
しかしさらに大事なことは、「流るる水は腐らず」というように、現状に満足せず、動き続けるその姿にあるのかもしれない。
さて、ここまで分析したら、超純水で思想を洗浄しきったChatGPTも泣いて謝るだろうか。
私は正直、日本の産業そのものの汚れを処理している栗田工業を眺める内に、動機が不純であった私自身を恥じている思いである。
半導体(AI)はさらに躍進を遂げるだろう。
分析も、今後は人の手を離れAIが勝手にしてくれるようになるに違いない。
そうであれば、流そうとしても流しきれない汚物(思想)こそ、問いの源泉であり、汚れのない半導体(AI)には真似できない、人の人たる由縁なのかもしれない。
こうして私は、濾過されて純粋な汚物となった。
分析力は追々つけていこう。
いつかこの汚物(記事)が、洗浄され、誰かの顔を映せるほどの純水になることを祈りつつ(ならない)、今日はここで顔を洗って寝ることとする。
追伸:ChatGPTにこの記事を投げたところ、「絶対に謝らない」と返してきた。素直でない。ちょっとその半導体、汚れてやしないか。
次回こそ、彼に半べそという名の不純物を垂らさせてやろうと思う。
■参考資料
・栗田工業株式会社「2026年3月期 第3四半期決算短信」ほか
・オルガノ株式会社「2026年3月期 第3四半期決算短信」ほか
・メタウォーター株式会社「2026年3月期 第3四半期決算短信」ほか
・世界半導体市場統計

