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【インスタ女子、死亡】スマホじゃ絶対撮れない絶景が、マレーシアの秘境にあった。

あたしゃね、時々思うんですよ。
現代の旅というものは、果たして本当に「旅」なのだろうか、と。

スマホの四角いフレームに収まる景色だけを探し、撮った写真を加工し、SNSにアップして「いいね」の数を数える。

それはもはや、現実世界を舞台にしたデジタルスタンプラリーではないのか。


そんな、ちょっと斜に構えた思考の沼にハマっていた私が、すべての答えを見つけてしまった場所がある。
それが、マレーシアはボルネオ島に浮かぶ街、コタキナバルだ。

ボルネオ島と聞いてもピンとこないかもしれない。
マレーシア、インドネシア、ブルネイという三国が領土を持つ、世界で3番目に大きい島。
手付かずの熱帯雨林が広がり、オランウータンがのっそり暮らし、多様な先住民族の文化が今なお息づく、まさに秘境。

東マレーシアに位置するコタキナバルはココ!


そんなロマン溢れる島に降り立った私を待ち受けていたのは、しかし、冒険の始まりというには、あまりにも生々しい洗礼だった。

そう、レンタカーである。

スカイスキャナーという文明の利器を経由して予約した、れっきとしたレンタカーのはずだった。
しかし、空港の到着ロビーに、きらびやかなカウンターはない。
指定された場所で待っていると、一台の年季の入った乗用車がスーッと目の前に停まり、中から人の良さそうなおじさんが出てきてこう言った。

「はい、これ鍵ね」。

借りれた車はこんな感じ。年季入ってるねぇ!

車内には、レンタカーにあるはずのないドリームキャッチャーとガムの包装紙。

どう見ても、おじさんの私物である。

極めつけは、デポジット(保証金)だ。
通常、クレジットカードで支払うそれが、なぜか「現金オンリー」だと言う。
両替したばかりのマレーシアリンギットを、ほぼ全額、このおじさんのポケットマネーへと献上する羽目になった。


あたしゃ、思った。
これは、やられた、と。
カモがネギを背負い、ボルネオ島までやってきた、と。
財布は空っぽ、手元に残ったのはおじさんの愛車(仮)の鍵。
幸先の悪いスタートとは、まさにこのことだ。


なんとか宿にたどり着き、気を取り直して、この旅のハイライトである「リバークルーズ」へと向かった。
テングザルやホタルが見られる1日ツアーで、料金は一人約9,000円。
正直、空っぽの財布には痛い出費だが、もう後には引けない。

クルーズまでの道中。たまにジュース屋がある。


クルーズは二部構成。

まずは、夕暮れ時のマングローブ林をボートで進む、第一部だ。
鬱蒼と茂る緑の間を、ボートは静かに滑っていく。
すると、ガイドがおもむろに指を差した。
その先にいたのは、テングザル。
おっさんのような垂れ下がった大きな鼻が特徴の、世界でもボルネオ島にしかいないという、なんとも珍妙で愛嬌のある猿だ。


肉眼でもその姿は確認できるが、やはり少し遠い。
ここで、あたしゃ声を大にして言いたい。

ツアーに参加する前に、絶対に双眼鏡を借りるべし。

たった1,000円ほどの投資で、テングザルのおっさん顔の毛穴まで見える(かもしれない)ほどの感動が得られるのだ。
これをケチるやつは、旅人失格である。

もう、姿カタチが「おっさん」のテングザル。


1時間ほどのクルーズを終えると、川岸のロッジでビュッフェスタイルの晩ごはん。
正直、味はそこそこだが、異国の熱気の中で食べるごはんは、それだけでご馳走だ。

ビュッフェスタイルのディナー。出来立てであったかい。


そして、陽が完全に落ち、あたりが漆黒の闇に包まれた頃、第二部の幕が開ける。

夜のホタルクルーズ。
これが、あたしのちっぽけな価値観を、根底から覆すことになる。

船乗り場はこんな感じ。


再びボートに乗り込み、闇の中を進む。
すると、岸辺の木々が、まるでクリスマスツリーのように、チカ、チカ、と点滅を始めたのだ。
一匹や二匹ではない。
何百、何千というホタルたちが、生命の光を放ちながら、一斉に明滅を繰り返している。
それは、もはや「綺麗」という言葉では表現できない、神聖さすら感じる光景だった。

あたしゃ、慌ててスマホを向けた。
この感動を、少しでも記録に残したい、と。

しかし、液晶画面に映るのは、ただの真っ暗な闇だけ。
最新のスマートフォンをもってしても、その繊細な光の粒は、何一つ捉えることができないのだ。

周りの観光客たちも、諦めたようにスマホを下ろしていく。
そう、この景色は、ここに来て、自分の目で見なければ、絶対に体験できない。
インスタグラムには、決してアップロードできない絶景なのだ。

日が落ちる前にかろうじて撮れた一枚。


その瞬間、あたしゃ、心の中でガッツポーズをした。
ざまあみろ、インスタ女子ども。
お前たちが追い求める「映え」の、そのずっと先にある「本物」が、ここにはあるのだ、と。

興奮冷めやらぬ帰り道、ガイドが懐中電灯で川面を照らすと、二つの赤い点がギラリと光った。
カイマン(ワニ)だ。

体長は1mにも満たない子供だったが、ガイドは静かにこう言った。
「近くに、お母さんがいるかもしれないね」。
その一言が、この大自然への畏敬の念を抱かせるには、十分すぎた。

クルーズで出会った野生のカイマン(ワニ)。小さくても迫力がすごい。


空港で現金を巻き上げられたことも、すっかり忘れていた。
スマホの画面越しではない、自分の網膜に直接焼き付けたホタルの光。
肌で感じた夜の川の湿った空気。耳に残る野生動物の声。

旅とは、スタンプラリーじゃない。
五感で世界を味わい尽くす、最高に贅沢なフルコースなのだと、私はボルネオ島の闇の中で、ようやく気づいたのだった。

【今回ご紹介したリバークルーズはこちら】
サービス名:
KLIAS RIVER CRUISE(クリアスリバークルーズ)
所在地:
Klias River Cruise, Kampong Kota Klias, 89800 Beaufort, Sabah, マレーシア

ワクワクが止まらない入口。


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