【きのころチャレンジ】 誰?
きのころチャレンジ2回目です。
完全に自己満なのですが、自分でつくった、まみっちょとツカダくんの話を、わたす自身がめちゃくちゃ気に入ってしまって。そんなことある? 大爆笑です。
ツカダくんはわたすも思い入れのあるひとがモデルなのでその影響もあるのかもしれないのだけれども(恥ずかしい)。
ホワイトデーにビスキュイの缶をお返しにもらったのも淡い思い出(恥ずかしい)。
なのに、気づいてしまった。大学って、そのころ完全に春休みなのでは…?(恥ずかしい)
こちらの企画に参加させていただきました!
朝、目が覚めると、
隣で知らない女が電話をしていた。
私のスマホで。
私の声で。
叫んでも声は出なかった。
鏡の中の私は眠っている。
女が一瞬だけ私に顔を向けた。
そして、私の声で電話の相手に告げる。
「起きました」
私は声も出せぬまま、背中を向けて通話を続ける女の話に耳をそばだてる。自分の耳が兎のように伸びた姿をイメージして。その姿があまりにも可愛らしいので、今度ウサミミのイヤーマフを作ろうかななんて思ったけど、ウサミミだからイヤーマフにはならないか、としょんぼりした。その間、わずか0.1秒。あ、そうだ、今度ツカダくんのマスコットにウサミミを付けちゃお。うふふ🌟その間、わずか0.05秒。
女の電話の向こうから「では、あとは作戦どおりに。くれぐれも、失敗しないように」という女の声が聞こえた。少ししゃがれていたような気もするが、よくわからなかった。
目の前の女は「私、失敗しないので」と堂々と言い放ち、私はこんな自信満々なひともいるんだなと感動した。昔から私はすぐ他者に感動してしまう。私からしたら、みんなまっとうに生きているだけで、偉いのだ。この女はひょっとして、なんだか尊い使命でもあるのかもしれない。立派なひと。
電話を終えた女は、私に向き直ったと同時に、ベッドに横たわっている私の上半身をガバッと抱きしめてきた。
「まみっちょぉ!!!! 元気なのぉ!!!!?」
私は驚いた。まみっちょというちょっと恥ずかしいと思っているあだ名で呼ばれたこともそうだし、抱きしめられたこともそうだけど、その女の顔が、私そのものだったからだ。鏡の向こう側の、私。そして、自分そっくりな声。状況が理解できず、事態を受け入れられずにいると、私そっくりの女がぱっと私から離れ、私の顔を覗き込む。私って端から見ると、こんな感じなの? なんかちょっと図々しくて小賢しくて、そしてとってもブ‥‥じゃなくて、えっと、その、ちんちくりん‥‥。
「手紙はちゃんと読んでくれてるの?」
私そっくりの声、と思ったけど、自分の声って自分ではよくわからないよね。私ってこんな甘ったるい声なの。なんか、不思議。いや、このひと、私じゃないのかな。
「お手紙?」
「え? ひょっとして読んでない? そんなことないよね? きっとあなたもツカダくんからもらったブルトンヌのビスキュイの缶入れに仕舞っているよね?」
女は語気を強めて私に食いかかる。唾が飛ぶってば。それよりもブルトンヌの缶のことを思い出す。ツカダくんというのは私の青春そのもの。凛としていて美形。王子様という言葉は彼のためにあると言っても過言ではない。その上、私なんかにもとっても優しくて紳士。非の打ち所がどこにも見つからない。私は大学に入学したその日から、もう彼に夢中。24時間ずっと彼のことしか考えていないの。ブルトンヌのビスキュイの缶は、バレンタインのお返しにとツカダくんがホワイトデーの日に贈ってくれたもの。私は1ミリも期待していなかったから、もうその日は羽根が生えそうなほど舞い上がって、たぶん今の私なら空も飛べると思うと、屋上に向かおうとしたところを、エレベーター前でちょうど親友のミヤコに会ってしまい必死に止められた。おかげでギネス記録には載らなかったし、ビスキュイの缶は潰れずに私の部屋の冷凍庫で光り輝いている。なぜ冷凍庫に入れているかって、それはもちろん、思い出を腐らせないため。あぁ、あの日を思い出すだけで、私はまた空も飛べそうになる。ちなみにビスキュイは私のお腹に入り、私の血となり肉となって私を形成している。このカラダの中にツカダくんからもらったビスキュイが入ってると思うと、私は恥ずかしさから両手で顔を包んだ。
「まみっちょ!? 聞いてる?」
ツカダくんの甘酸っぱい思い出に酔いしれていたら、もう1人の私と思しき女に怒られる。おかしい。この女だって私そっくりなはず。ツカダくんのことを考えないのかしら。私は澄ました顔で訊く。
「えーっと、なんのはなしでしたっけ。ツカダくんからもらった缶のこと? あなたはなんでそれを知ってるの。ていうか、あなた私なの?」
「ヤダ! 手紙は届いてないのね。まぁいっか。こうして会えたんだし。えっと、あなたは、いまのところ石にはならない世界線を生きてるみたいね。ホッとしたァ。もう! ほんと、気をつけてね。ツカダくん、すぐ彫刻にしちゃうから。もう! それだけはやめて。考えてもみて。彫刻として彫られるってことは、ぜんぶ想像されるんだからね? 顔だけじゃないよ。身体のラインとか、全部だよ! 全部! 丸裸にされるのとおんなじなんだからね!そんな屈辱、私は絶対耐えられない。ウエスト周りとか、胸や二の腕の肉のつき方まで緻密に調べられるんだからね。ツカダくんは芸術においては、完璧主義者なんだからね。だからあらゆる世界線の私に、何度も手紙を送ってるのに、全然通じない私もいるんだからぁーーー」
目の前の女は両手で顔を包んでさめざめと泣き出した。
え。私がツカダくんに彫られる? どういうことなの。なぜツカダくんが私をモデルに? 逆にずるい。ツカダくんが私をデザインするの。なにそれ、贅沢すぎる。私は女に向かって叫ぶ。
「私も彫られたい」
女はすぐさま私を平手打ちしてきた。なんて反応が早いの。
「目を覚まして」
痛い。じわじわと打たれた方の頬が熱くなる。なんなの。このひと。お母さんにも打たれたことないのに。
「いい? まみっちょ。あなた今一度よく考えてみて。ツカダくんはあなたに興味を持ち始めてるの! そして、あなたは意図せず彼を振ってしまうの! そしたらツカダくんはあなたのことを石像にして彫ってしまうの!」
私は一言一句聞き逃さなかった。なんなの、その神展開!!!ずるい。そんなの!ずるい!!!!ツカダくんを振る!!???? そんなことがあって、よいの!!!!!!? 私も、彫られたい!! ツカダくんの心に永遠に刻みつけられたい!!!!
「お願い!!私もその世界線にいかせて!!!」
バチン。また目の前の女は私に平手打ちを喰らわす。しかも、今度は逆側。顔は、やめて!
「いい加減、目を覚ましなさい!」
女の怒りは凄まじかった。なんなの。その世界線にはいったいどんなストーリーがあるのよ。しあわせじゃないの。私はずっと羨ましいよ。はっ。嫉妬か。この女も嫉妬してるのね。だから誰ひとりツカダくんと結ばれないよう、抜け駆けしないように必死なのね。私は目の前の女が途端にちいさな感情に振り回されている可哀想な女に思えてきた。女は神妙な面持ちで続ける。
「いい? まみっちょ。ツカダくんは神聖なお方よ。あなたの石像を造るために生まれたわけじゃないの。彼は生まれ持っての特別な存在。尊い使命があるの」
私はごくりと唾を飲んだ。確かに。ツカダくんの尊い使命。いったいなんだろう。私なんかをモデルにして作品を作っても「考える人」ではなく「考えない人」で終わり、芸術として評価されなくなってしまう。なにより、私なんかの石像を造らせる? そんな無駄な時間をツカダくんに? 考えただけで動悸がしてきた。それこそツカダくんの人生の無駄づかいになってしまう。そうだわ。私ではだめだわ。ツカダくんはもっと絶世の美女と結ばれて、それはそれは美しい彫刻を造る。もしくは菩薩のような女性からインスピレーションを受けて、国宝級の観音様を彫るかもしれない。国宝級のイケメンが国宝を造る。なんて贅沢な世界。眼福。
そう、そしたらいちはやく世の中から認められ、世界のレンジ ツカダとしてアート界に偉大な名を残すのだわ。私なんかが美大の屋上から羽ばたいたところでなんにもならない。
「私が間違ってたわ」
私は上半身を起こして、もう1人の私の手を両手で包み込んだ。
「わかってくれたのね」
私たちはお互い涙を流しながら、見つめ合った。
女の話をまとめると、この世界は、並行世界なのだという。鏡の中にはもう1人の私がいるように、私は無限に存在するのだそう。
だから、この目の前の女もどこかの世界線の私らしい。そしてツカダくんへの執着から、いろんな世界を渡り歩き、その世界線ごとのツカダくんを観察しようとして、気づいたらしいの。どうやら、何かの間違いで私のことをすきになってしまい、不幸になってしまうツカダくんがいると(でも、私はやっぱりその世界線にお邪魔したい。しかも、その世界線のツカダくんはなんと私のことを、陰でまみっちょと呼んだいたそうなの。まみっちょというあだ名が途端に高貴なものに思えてきた)。そんな不幸なツカダくんをひとりでも減らそうと、いろんな世界線の私に接触し、こうして説得したり、手紙を送ったり、先ほどのように強力者となった私と電話で連絡を取り合ってるのだと言う。え。私の執念すごくない。こわいよ。ツカダくんもそれは怯えると思うけどなぁ。もうよくない? ツカダくんとしあわせになる世界線にいる私がいたってよいし、ひとりくらい不幸になるツカダくんがいてもよくない?
だめよ。まみっちょ。そんなことを考えちゃ。さすがに目の前の私が可哀想よ。こんなに頑張って布教っぽいことしてるんだから。なんてたって、この私が!
並行世界など言われても、胡散臭すぎてぜんぜん意味がわからないけど、こうして目の前に私そっくりの女がいて、さらにそこにツカダくんの幸せがあるならと、私は俄然やる気をみせた(早くこの状況から抜け出して、ツカダくんに会いに行きたいと言う気持ちが100%)。
「とにかく、手紙を書いて! 私の特性を考えた上で、手紙を書いて! そして、私たちのツカダくんへの強い想いはきっと別の世界線の私に届くはずだから! 本当はもっと、あなたとツカダくんについて語り合いたいのだけど、あいにく時間がないの。じゃあよろしくね。またどこかで会えるといいな。この世界のツカダくんによろしくね」
女はそう言うと、私をもう一度ハグした。そして姿見の前で私に向けて手を振ると、鏡の中に消えていった。いったいなんだったの。もうひとりの私。
私だったらこの世界のツカダくんを一目見てから旅立つけど。真面目な私もいるのね。私はすこし、自分を見直した。
目覚めた私は、引き出しからレターセットを取り出す。なんかの景品でもらった真っ白なレターセット。手書きの手紙ってちょっとメンドウクサイナぁなんて考えがよぎったりもしたけれど、不幸なツカダくんを想像して、私は奮闘する。でもなぁ、私のことをすきになるツカダくんも気になるなぁ。いかんいかん。まみっちょ!!! ツカダくんをしあわせにするのよ!! あなたが!あなたの手で!!!! 私なんかと結ばれないように!!!! 言い聞かせてはみるけど、やっぱり羨ましいナァ。てかさぁ、さっき電話で連絡してたよね? LINEじゃだめなの? せめてメールでもよくない?
えーっと、まぁ、とりあえず、私は別の世界線にいる私に手紙を書く‥‥。手っ取り早く、自信を失くさせよう。ツカダくんといい感じになってる私が恨めしい。ちがうの。気を散らさない。
えっと、どうしたら私に伝わるのかしら。私って結構細かいことは気にしないからなぁ。フツーの手紙だったら、たぶん一瞬でわすれちゃうよねぇ。うーーん。 よし。遺書ということにしよう。さらに、翌日の日付にしちゃお。こういう小さなとこ、意外と私気づく女。いくら私でもスルーはしまい。我ながら天才すぎんか。今日は冴えてる。どこかの世界線の私、信じてるゾ☆彡
「私なんて生きていく価値がない。もう消えてしまいたい‥‥‥」
数行書いてはみたけど、なんかもう疲れちゃったなぁ。
っていま何時!? えー!もうこんな時間!!!! 私は慌ただしく身支度を整え、キャンパスへ急いだ。早くしないとツカダくんと同じバスに乗れないもの。
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手紙は途中で終わり、差出人も書かずにその場に放置され、そしてしばらくしてその手紙はどこかに消えた‥‥。
ツカダくんから好かれる私のいる世界線のはなし↓
