食と人のつながり
『菜の花食堂のささやかなイベント簿 裏切りのジャム』
もうお腹がぐうっと鳴ってしまいました。
碧野圭さんの描く靖子先生が切り盛りする小さな食堂の世界は、まるでふんわり温かい料理がそこにあるような生き生きとした空気に包まれていて、読んでいるだけでお腹が空いてきます。
菜の花食堂のささやかなイベント簿
裏切りのジャム
碧野圭 (著)
「これはもう、推理するまでもないわね」
おいしいランチと予約制のおまかせディナーが評判の菜の花食堂のオーナー・靖子先生は、洞察力が鋭くて謎解きが得意。
食堂や料理教室で起こる小さな事件を解決してくれるだけじゃなく、そっと悩みを掬い上げて静かに背中を押してくれる――
妻が夫のダイエットに急に厳しくなったのはなぜ?
仲の良い息子夫婦との同居をためらう姑の秘密とは?
小さな食堂と料理教室を舞台に『書店ガール』の著者が描き出す、やさしくて少しビターな大人気日常ミステリー、第四弾!
裏切りのジャム
碧野圭 (著
Amazonより
✻登場人物✻
下河辺靖子(しもかわべやすこ)
菜の花食堂のオーナーで、月に二度見られる料理教室の先生。洞察力が深くて謎解きが得意。舘林優希(たてばやしゆうき)
料理教室の助手で、菜の花食堂のフロア・マネージャーも担当。物語の中のささやかな出来事や悩みに関わる。和泉香奈(いずみかな)
菜の花食堂のシェフ見習い。村田佐知子(むらた さちこ)
料理教室の生徒。杉本春樹(すぎもとはるき)
料理教室の生徒で卒業後数年経過しています。水野裕美(みずのゆみ)
料理教室の生徒。30代で幼稚園に通っている子どもがいる。水野和之(みずのかずゆき)
裕美の夫。ダイエットをしているが体重が減らない。
✻あらすじ✻
東京の武蔵野にある小さな食堂「菜の花食堂」とその定休日に月2回賑わう料理教室が舞台の連作短編集です。
オーナーであり料理教室の先生でもある下河辺靖子(しもかわべやすこ)先生が主人公で、彼女は鋭い洞察力で日常に起きるささやかな出来事や謎を解決していきます。
舘林優希(たてばやしゆうき)も料理教室を支えながら物語に関わります。
物語は、食堂の温かい雰囲気と地元の野菜を使った料理を背景にしつつ、日常生活の中での小さな人間関係のもつれや秘密を靖子先生が優しく解きほぐしていく心地よい中で、「裏切りのジャム」というタイトルにあるように甘さだけでなくビターな要素も含まれています。
菜の花食堂の料理教室に様々な生徒の悩みや出来事、お子様の温もりと食のよろこびを感じられる構成となっております。
◆読むポイント◆
菜の花食堂という小さな食堂と料理教室を舞台に、日常生活の小さな出来事や人間関係のもつれを靖子先生が鋭い洞察力で穏やかに解決していくところを楽しむこと。
物語はただの謎解きだけでなく、料理や食べ物の描写が豊富で、料理教室でのメニューが健康的かつ美味しそうに描かれているため、食欲や料理への興味が刺激される。
裏切りのジャムというタイトル通り、甘さだけでなくビターな展開もあり、登場人物の人間味や感情の機微が丁寧に描写されているので、心理描写に注目する。
靖子先生の謎解きや対処法がわかりやすく、すっきりと読めるためストレスなく楽しめる、登場人物の成長や関係性の変化も丁寧に描かれているので物語全体の流れもわかりやすい。
連作短編集ですが、全編を通してキャラクターや関係変化があるため、シリーズの続きも気になる作りになっています。
登場人物の悩みやイベントの背景に食べ物を絡めた比喩が多く、料理が持つ人をつなぐ力、癒す力にも注目するとより楽しめます。
◉心に残った一言◉
「料理は規定お腹を満たすだけじゃなく、人の心ほぐし、つなぐ温かいなの魔法よ。」
この言葉は、本作のテーマである「食と人のつながり」を象徴していて、読んでいるような優しい味の料理がじんわり広がるように心に染み渡ります。
◆感想◆
料理や素材への愛情が文章の端々から伝わり、まるで柔らかな光が差し込むキッチンで、温かいランチが湯気を立てているような光景が広がっています。
心を配るのは、料理だけでなく人の悩み。
例えば、生徒さんのちょっとした秘密や家庭の事情、その一つに自分の経験を重ねながら、じんわりと解きほぐしていく時間がとても愛おしかった。
読み終わった後は、まるで自分も食堂の厨房に立って、誰かのために一品作りたくなる——そんな気持ちになります。
心温まる魅力的な料理描写が絶妙に絡み合って、読んでいるだけで不思議とお腹が空いて、今日の晩ごはんは何にしようかなと考えてしまう一冊でした。
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自己紹介
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