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上書きされる夜

──誰かで消そうとした私


— episode by Hajime —

「今日はなんだか、すぐイキそう……」

部屋に入るなり、彼がそう呟いた。

その声を背中で聞きながら──

洗面所の鏡の前でスカートをめくり上げ、
Tバックをずらす彼の指先に、身体が勝手に跳ねた。

檻から放たれた狼みたいに、
私は彼に貪られる。

彼は、私が数時間前に
他の男に抱かれてきたことを知っている。

「上書きする」

そう言いながら、後ろから激しく腰を打ちつけ、
予告通り、彼はいつもより早く果てた。

私はかなり酔っていて、
記憶が飛んでいるのか、夢の中なのか、
自分でも曖昧な状態だった。

意識が揺れる中、
ふと、さっきまで飲んでいたBARで、
隣に座った妙に色気のある男の子を思い出す。

──噛み癖がある、と言っていた。

「ねぇ……全身、思いっきり噛んで。
痛くしてほしい」

私がそう懇願すると、
彼は迷いなく、歯を立てた。

赤紫に、そして青く変わるまで。
何箇所も、何箇所も。

痛いのか、気持ちいいのか、
もうわからなくなって、
私は悲鳴みたいな声をあげる。

彼との行為は、最高に気持ちがいい。
けれど──
今回は酔いすぎていて、
所々、記憶が抜け落ちている。

くっきりと残った歯型。
青紫に染まった身体が、
彼に上書きされた印だった。

朝方、8時。
私たちは腕を組み、ホテルを出て駅へ向かう。

酔いと長時間の行為で、足はガタガタ。
何度か転びそうになる私を、
彼が黙って支える。

彼には女がたくさんいる。
それでも、私との約束が「いちばん」だと言う。

私は、
彼のセフレ枠での“1番”なんだろうか。

駅に着くと、彼は私を強く抱きしめた。
人が行き交う改札前で、
見せつけるみたいな別れ際のキス。

どうして彼は、
こんなにも私の心を掴むんだろう。

私は、彼の存在に満たされ、
今日も、
惑わされ続けている。




上書きされたはずなのに、
消えなかった夜がある。

──「忘れられなかった夜」へ



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