冷えたままの夜
── 誰でもいいふりをした私
— episode by Hiraki —
心が壊れそうな夜だった。
寂しさにつけ込まれたのかもしれない。
── 数日前に消えた彼。
黒く消えない感情、
黒く抜け出せない闇。
それでも、
誰でもよかったわけじゃない。
幼稚舎からミシュラン。
親に買ってもらったポルシェ。
全身ハイブランドに身を包んだ男。
穏やかな話し方だけど、
有無は言わせない、圧。
彼以上じゃなきゃ、
きっと、何も埋まらないとわかっていた。
だから、敢えて選んだ、
スペックの高い男。
こうなる事を望んでいたはずなのに、
これでは無いような焦燥感。
私はどうして、
こんなにも冷えたまま、
ここにいるんだろう。
「ん……すごい、おっきい」
ここは私のステージ。
男の上で波打つように、腰を揺らす。
深い部分で圧迫を感じながら、
演じ、踊り、舞う。
何も考えたくなかったはずなのに、
頭が計算している。
声、指先、くちびる。
私の全てに、溶けてしまえばいい。
「すごすぎてやばい、イキそう…」
私はイけない。
だから、イけばいい。
この状況に興奮できない、
置き去りにされた感情。
鼻につく、
高価で、合わない匂い。
けれど、
誰もが欲しがる、最高なイイ男。
「中に…たくさん、ちょうだい……」
満たされないから、
せめて、中は溢れるくらい満たして。
空っぽな心さえ、
その白で、
どろどろに溶かして。
数日前に消えた彼と、
最後に越えた夜がある。
──「境界線のない夜」へ
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その揺れを、ここに置いていってください。