境界線のない夜
──溶けきれなかった私
— episode by Taira —
何度も何度も、あの夜を思い出して、
疼く身体を抑えられない。
「かわいい声じゃなくて、
いつもの悲鳴、聴かせて?」
まるで黒魔術の儀式。
両手足を鎖で繋がれ、
薄暗い部屋で、声にならない悲鳴を上げる。
動けないまま、
秘めたところを舌が這う。
絡みつく指と、部屋に響く機械音。
同じ場所をしつこく攻められながら、
意識も感覚も、少しずつ麻痺していく。
「おっきくなってきたね、かわいい」
その言葉が恥ずかしくて、
熱いものが溢れて、滴った。
恥ずかしくて、良すぎて、でも苦しくて。
私はまた、身体を反らせて悲鳴をあげる。
「いゃ……もう……無理……だめ……」
「あっつ……やぁ……」
彼の指先が熱いのか、
それとも私の中が熱いのか。
どうして、こんな風になってしまうんだろう。
最中の彼は、
サイコパスという言葉がよく似合う。
いつだって、私の想像を軽く飛び越えた
異次元の遊戯をしてくる。
視線、声、くちびる、指先、体温。
その計算されたすべてに、私は魅了される。
「ほら、イケよ」
荒々しい言葉なのに、声は甘くて、
私は何度も、何度も絶頂を迎える。
果てても、終わらない。
まるで何世紀も引き裂かれていた
アダムとイヴみたいに、
狂ったように、今日も求め合う。
私たちの身体は、
最初からひとつだったかのようで、
きっと、境界線を知らない。
繋がっていないと不安で、
近すぎて、でも少しも離れられなくて。
足りなくて、
他の誰ともできないことを探り合う。
「良すぎて、毎回意識飛びそうになるよ」
彼は、私の唯一無二。
彼にとって、私も唯一無二。
──数秒前まで、
満たされていたはずなのに。
すぐに欲しくなって、足りなくなる。
声とか、空気感とか、仕草とか。
惹かれるのは、たぶん一瞬なのに。
この重たい感情を自覚すると、
少しだけ、悲しくなる。
「好き」って、なんなんだろう。
強化ガラスの向こう側を、
ただ眺めているだけの、
一方通行で、自己満足な感情のまま。
消えることができたら、
よかったのに。
いいなと思ったら応援しよう!
この夜に、心が少し揺れたなら。
その揺れを、ここに置いていってください。