訪日外国人は「船」でどこに行く?データが示す“水上”のインバウンド動態
こんにちは。なかぱーです。
ナビタイムジャパンの移動データ事業でユーザーのGPSログを使った研究開発を行っています。
2025年9月10日、ナビタイムジャパンのNAVITIMEデータ分析チームは、訪日外国人観光客向けナビゲーションアプリ『Japan Travel by NAVITIME』の利用データをもとに、訪日外国人旅行者による船を使った移動の実態を分析した結果を発表しました。
訪日外国人旅行者による船を使った移動や、その前後の行動は、近年注目を集めています。日本政府は2025年までに「訪日クルーズ旅客250万人」や「外国クルーズ船の寄港回数2,000回」といった目標を掲げており、観光を通じた地域活性化の重要な取り組みのひとつとして位置づけられています(※観光立国推進基本計画[2023年3月31日閣議決定]より)。
今回は、こうした動きに関連して実施した分析の内容と、その裏側にある開発ストーリーをご紹介します。
船を利用した移動の分析について
本分析は、訪日外国人観光客向けナビゲーションアプリ(経路検索・多言語観光案内)『Japan Travel by NAVITIME』から同意を得たユーザーから取得されるGPSデータをもとに、個人が特定できないようデータを加工した上で移動ログの中から船を使って移動した区間を推定し、発着港や航路別の利用実績を分析するものです。

昨年、私たちのチームは訪日外国人旅行者による鉄道利用の動態を分析する機能をリリースしました。
今回は、その取り組みに続く新たなステップとして、「船」を使った移動に着目した研究開発を行いました。
どんなことが分析できるようになったか
本分析によって、あるエリア内にある航路の利用状況の比較や、利用者の属性による利用航路の違いを明らかにすることが可能になりました。事例として先日発表したプレスリリースから以下の2地域での分析結果をご紹介します。
事例① 複数航路の比較(例:宮島)
広島県廿日市市の宮島では、世界遺産である厳島神社へのアクセス手段として多くの船での移動が確認されました。宮島口からの航路だけではなく、平和記念公園のすぐそばにある元安桟橋から出航する高速船を使って、広島市内から直接訪れている外国人旅行者がいることがわかります。特に往路での利用が多いようです。


事例②:瀬戸内(直島・小豆島)
小豆島や直島といった瀬戸内海に浮かぶ島々と、本州・四国を結ぶ航路でも訪日外国人旅行者の移動が確認されました。

直島・小豆島は隣り合った場所に位置する島々ですが、利用状況を見てみると小豆島へはアジアからの旅行者が、直島へは欧米豪からの旅行者が多いことがわかります。

このように、船の移動推定に加え、ユーザーの属性情報を組み合わせることで、国籍や属性ごとの移動傾向の違いをより詳細に分析できるようになりました。
どうやって船の移動を推定しているのか
ここでは、プレスリリースではお伝えしきれなかった「船の移動をどのように推定しているのか」について、皆さんに詳しくご紹介したいと思います。
移動推定技術について
船の移動は、当社が提供している『moveco』や『ALKOO by NAVITIME』などのサービスで導入されている移動手段推定技術を活用することで実現しています。GPSデータの位置情報、移動速度、移動距離等の情報に加え、湖や川、海を表すようなポリゴンという地物情報を活用することで船での移動を判定しています。
単純に「水上を通ったかどうか」だけで判定すると、例えば瀬戸大橋やアクアラインのように海上を長く走る移動でも、船を利用したと誤って推定してしまうことがあります。
そこで、移動区間ごとに「水域を走行した距離」を計算し、全体の移動距離に占める水上距離の割合をもとに、船で移動したかどうかを判定しています。


余談になりますが、「どのくらいの割合で水上を移動すれば船と判断できるか」「どのくらいの速度なら船の移動といえるか」といった判定条件は、筆者をはじめ当社の開発チームが、帰省や旅行の際にテストアプリを入れたスマホを持ち歩き、実際に船に乗ってログを収集することで調整していました。
当時の取り組みについては、こちらのnote記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください!
ナビタイムジャパンならではのデータにするために
ここまでのお話で、GPSログを使って船を使った移動を推定するためにどのような手法を取り入れているか、どんなことがわかるようになったのかをご
紹介してきました。
今回の対応では、単に「船で移動した」ということだけでなく、「どの航路で、どの港からどの港まで移動したのか」まで推定できるようになっています。
航路や港を特定する処理では、ナビタイムジャパンの経路探索サービスで利用しているデータを活用しています。実は2022年に、当社は全国すべてのフェリー情報に対応済みです。そのため、日本全国の定期運航されているすべての航路について、移動を推定できるようになっています。
また、それらの航路を結ぶ船の移動を表す形状データも網羅されています。これにより、冒頭でご紹介したようにどの航路がどれくらい使われているのか、という情報を線をつかって直感的に表現することが実現できます。
船を使った移動をただ推定するだけではなく、当社が整備した全国の航路や港のデータと組み合わせることで、ナビタイムジャパンならではのデータを生み出すことができました。
おわりに
今回は訪日外国人観光客の船を利用した移動の分析と、その開発の裏側にあるナビタイムジャパンの研究開発ついてご紹介しました。
昨年の鉄道・今回の船に引き続き、他の移動手段の分析やそれを使った新たな発見を社会に発信できるよう引き続き研究開発を重ねてまいります。最後までお読みいただきありがとうございました。
