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「メール対応だけで1日2時間26分」の正体|ChatGPTに丸投げしても浮くだけだった話

「このメール、どう返せばいいんだろう」

画面を開いたまま、カーソルだけが点滅している。気づけば15分経っていて、他の仕事は何も進んでいない。既読はついているのに返信できていないチャットが、頭の片隅でずっと引っかかっている。

この時間の溶け方に心当たりがある人は、少なくないはずです。

一般社団法人日本ビジネスメール協会が2025年6月2日に「ビジネスメール実態調査2025」を発表しています。ビジネスパーソンの1日あたりのメール対応時間は、平均2時間26分。業務時間のおよそ3割にあたります。

同じ調査に、もう一つ気になる数字があります。「自分のメールスキルを向上させたい」と答えた人は82.76%。一方、実際に研修を受けた経験がある人は9.51%にとどまりました。なんとかしたいと思いながら、手立てを持っていない人が大半だということです。

だったらChatGPTに任せればいい。そう考えるのは自然な流れでしょう。実際に試した人も多いはずです。

ただ、その先で「思っていたのと違う」につまずいた経験はないでしょうか。文章として間違ってはいないのに、なぜかその場にそぐわない。あの「浮く」感覚です。

この記事で扱うのは、社内チャット・社外メール・カスタマー対応に共通する「返信文に迷う瞬間」の正体と、AIに丸投げすると失敗する理由です。具体的な指示の型は続編に譲ります。まずは自分がなぜ時間を溶かしているのか、そこに気づくところから始めましょう。


3つの場面に共通する、あの「迷う瞬間」

社内チャットでは、内容そのものより温度感の調整に時間がかかります。文末に「!」を付けるかどうかで数十秒悩む。スタンプを選ぶのに、絵文字が馴れ馴れしく見えないか考える。用件は一行で済むはずなのに、そこに辿り着くまでが長い。

社外メールになると、悩みの種類が変わります。断りの返信、納期の催促、クレームへの対応。こうした気を遣う返信だけ、なぜか異様に時間がかかる。定型のあいさつ文はすぐ書けるのに、本題に入った途端に手が止まります。

カスタマー対応も似ています。テンプレートを用意しているはずなのに、毎回状況が微妙に違う。結局そのテンプレートをほとんど使わず、一から書き直している。そんな人が実際には多いはずです。

数字にも表れています。メール共有サービス「yaritori」の運営元が2024年10月に「ビジネスメール調査2025」を実施しました。返信作成の課題として「文章推敲に時間がかかる」を挙げた人は65.7%(自社サービスに関連する民間企業の自主調査)。

用件を決めることより、言葉を選ぶことに時間を使っている。3つの場面は一見バラバラですが、時間の溶け方は同じです。

「何を書くか」ではなく「どう書くか」で迷っている。

Aさんが、ChatGPTに断りのメールを丸投げしてみた話

30代・営業事務のAさんのようなケースを考えてみます。

ある日、取引先からの日程調整の依頼を断ることになった。文面の組み立て方が浮かばず、思い切ってChatGPTに頼んでみる。指示は「この依頼を丁寧に断る返信文を作って」の一行だけだった。

出てきた文章は、たしかに丁寧だった。敬語に間違いはなく、構成も整っている。だが読み返すうちに、違和感がじわじわ広がってくる。

普段のやり取りに比べて、敬語が過剰なのだ。この取引先とは何度もやり取りをしていて、もう少し砕けた距離感で話す間柄だった。それなのに、まるで初対面の相手に送るような文面になっている。

さらに困ったのは、同じ勢いで社内チャットの返信も任せてみたときだった。同僚への一言に、やたら畏まった言い回しが並ぶ。浮いている、としか言いようがない。

結局Aさんは、その文面をほとんど書き直しました。手間を減らすはずが、チェックと修正に余計な時間がかかっています。

ここで押さえたいのは、AIの性能が悪かったわけではないという点です。指示の側に、何かが足りませんでした。

なぜ「浮く」のか。AIが知らない3つの情報

AIが浮いた文面を作る理由は、渡された情報の少なさにあります。

ひとつめは、相手との関係性。初対面の取引先なのか、何年も付き合いのある担当者なのか。AIには判断材料がありません。

ふたつめは、これまでのやり取りの温度感です。普段からくだけた言葉で会話しているのか、常に一定の距離を保っているのか。これも渡さなければ伝わりません。

みっつめが、その場に暗黙のうちに存在するルール。社内チャットならではの略し方、業界特有の言い回し。指示に含めない限り、AIの側からは見えてきません。

丸投げとは、この3つを渡さないままAIに書かせることだと言い換えられます。裏を返せば、3つを渡すだけで出力はずっと自然になります。

ここで、少し引いた数字も見ておきましょう。総務省が2025年に公表した「令和7年版情報通信白書」によると、生成AIを「メール作成・文章作成支援」に業務利用している企業は47.3%でした。株式会社帝国データバンクの調査でも、生成AIを活用している企業の割合は2024年7月発表分の17.3%から2026年3月発表分の34.5%まで伸びています。

ただし帝国データバンクの2024年7月発表分で挙げられた主な用途は、情報収集や文章の要約・校正が中心でした。メールやチャットの個別の返信文という、一番時間を溶かしている場面には手が回っていない。使ってはいるのに、肝心のところが空白のまま。そんな段階の人が実は大半を占めます。

それでも残る、「個別対応」の迷い

ここまで読んで、3つの情報さえ渡せば全部解決する、と思われたかもしれません。正直に書いておきます。テンプレート化しきれない場面は、現実に残ります。

代表がクレーム対応です。相手の感情の状態、これまでの経緯、社内での対応方針。渡すべき情報が多く、しかも毎回微妙に違う。特別な事情を抱えた顧客への配慮も、型には収まりきりません。AIを使えば返信の悩みがゼロになる、とまでは言えないでしょう。

それでも、型を持って使うかどうかで結果は変わります。3つの情報を渡す習慣がある人と、毎回丸投げして書き直している人。同じChatGPTを使っていても、出てくる文章の質はまるで違います。

問われているのは「すべてが自動化されるか」ではありません。「迷う時間の大部分を減らせるか」です。

「浮く」正体が見えた先に

返信文に時間が溶けるのは、内容を考えるのが難しいからではありませんでした。相手との関係性、やり取りの温度感、その場のルール。この3つをAIに渡せていないからです。丸投げして浮いた文面になったAさんのケースも、原因はAIの性能ではなく指示の中身にありました。

では実際に、社内チャット・社外メール・カスタマー対応のそれぞれで、3つをどんな言葉で渡せばいいのか。断り・催促・クレームといった気を遣う場面では、どう調整すればいいのか。

そこまで踏み込んだプロンプトと、自分の言葉に寄せるカスタム指示のコツは、続編の有料記事にまとめています。「浮く」理由が見えてきた方は、続きでその型を確かめてみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。よければスキやフォローで、続きの更新も見てもらえるとうれしいです。


参考・出典

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