傷跡がある。アトピーがある。手術のあとがある。「見せたくない体」を預けてくれた人たちのこと
傷跡がある。アトピーの肌がある。手術のあとがある。
体型の話は、前に書きました。
今日書くのは、それとは少し違う話です。
体重やサイズの話ではなくて、「体の表面」に何かがある人の話。
傷跡
手術のあと
アトピーで荒れた肌
妊娠線
ケロイド
自分でつけた跡
こういうものを抱えている人が、私の前に来てくれたことがあります。一人や二人ではなく。
その人たちのことを書きます。
脱がなかった人のこと
夏でした。
ホテルの部屋に入って、空調の温度を少し下げようとしたとき、その方が言いました。
「あの、胸はあまり見ないでもらえますか」
私は「わかりました」と答えた。
「わかりました」と小さく答えました。理由はなんとなくわかってました。
でも私はそれ以上聞かなかった。
あの日、私が考えていたのは「どうやって見ないか」ではなく、「この人が安心できるにはどうすればいいか」でした。
見せてほしいなんて思っていない。
隠したまま過ごせるならそれでいい。
女風というお仕事上「見ない」というのが中々難しい場所ではありますが。
嫌なことはしない、という話を書いた記事がありますが、「見せたくないものを見せない」というのも、そこに含まれます。
2回目に来てくれたとき
その方が2回目に来てくれたのは、3ヶ月後でした。
同じホテル。同じ部屋ではなかったけど、似たような間取り。
今回も「あの、胸はあまり見ないでもらえますか」と。
ただ、少しだけ違ったのは、施術の途中からお客様が気にしなくなったこと。
何も言わずに。ゆっくりと。
私はそのとき何を感じたかを、正直に書きます。
胸からお腹までタテに入った傷跡が見えました。
50センチくらいあったかな。
私の目に入った情報はそれだけで、何も変わりません。
了解、了解という感じ。
少し体がこわばっていた。
それは緊張だったのか、体質なのかはわからない。
私はいつもどおり触れました。
特別な触れ方はしていない。
特別扱いもしてない。
その方が何を思ってあのときさらけ出したのかは、聞いていません。
聞く必要がなかった。
ただ、帰り際に「来てよかったです」と言ってくれたことだけ覚えています。
見せたくないものを抱えて来る人の共通点
傷跡がある方、アトピーの方、手術痕のある方。
抱えているものはそれぞれ違うんですが、予約前のLINEに共通点があります。
ほぼ全員が、聞かれる前に自分から言う。
「肌が荒れているんですが大丈夫ですか」
「手術の跡があるんですけど」
「見た目がきれいじゃないので」
体型の悩みを打ち明ける方は、当日になってから口にするケースが多い。
でも傷跡や肌の状態の話は、予約前の段階で伝えてくる方がほとんどです。
なぜだろう、と考えたことがあります。
たぶん「行ってから引かれるのが怖い」からだと思います。
体型なら、まだ服でごまかせるかもしれない。
でも傷跡や肌の状態は、触れ合う場面で隠しきれないかもしれない。
だから先に言っておいて、相手の反応を見たい。
もし引かれるなら、会う前に知りたい。
その気持ちはわかります。
私は毎回、同じことを返します。
「大丈夫です。何も変わりません」
これは社交辞令ではなくて、本当に何も変わらないからそう書いています。
むしろ「気にならないの?」と思われるくらい変わりません。
施術の内容も、触れ方も、過ごし方も。
肌にアトピーがあるからといって、私の側で何かを変える必要はない(もちろんアレルギーや刺激のあるものは使いませんしヒアリングします)
強く触れすぎないように気をつけることはありますが、それは誰に対してもやっていることです。
ちょっと脱線しますが、私はヴィジュアル系バンドが好きで、歌詞に「傷のない場所なんてどこにもない」みたいなフレーズがよく出てくるのですが。
「傷があること」を否定しない強さがあって、それは私がこの仕事をするうえでどこかに残っている気がします。
音楽の話を仕事に持ち込むのは筋が違うかもしれませんが。
「見せても大丈夫だった」を強制はしない
こういう記事を書くと、「見せたくないものも見せてみたら楽になりますよ」というメッセージに読めるかもしれません。
でも、私はそうは思っていません。
見せたくないなら、見せなくていい。
長袖のまま過ごしていい。
包帯を巻いたままでもいい。
「ここは触れないでください」と言えば、触れない。
見せたことで楽になった人はいます。さっき書い方のように。
でも見せなくても、ちゃんと時間は過ごせる。
安心できる時間は作れる。
「見せたから偉い」でも「見せないと意味がない」でもない。
あなたの体にあるものを、私がどうこうする立場にはないです。
ただ、あなたが「ここは大丈夫」と思える範囲で触れる。
それだけのことです。
青が合う人と、たぶん合わない人の話にも書きましたが、私は「隣を歩くタイプ」です。
前に立って「こっちだよ」とは言わない。
傷跡があっても、肌が荒れていても、私の隣にいてくれるだけでいいです。
それ以上のことは、あなたが決めてください。
私が知っているのは、あなたの体の「状態」ではなくて、あなたの肌の「温度」だけです。
触れたときに伝わってくるもの。それがすべてで、それだけで十分です。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
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