見出し画像

英語教師・翻訳者が語るファイナンスのおはなし(8)資本コスト(WACC)

(↑のつづき)

1. 時間の価値(「現在価値」という概念)
2. 「リスク」の数値化(標準偏差というかたちで)

この2つに続いてファイナンス理論で第三に覚えなければならないことは、

3. 「資本コスト」

です。

資本コストとは、「元手にかかる費用」のことです。

ビジネスをするには元手となるお金がいります。

その元手は、銀行などから借りるか、あるいは株主から集めなければなりません。

銀行から借りるにしても、株主に出してもらうにしても、「ただ」というわけにはいかないというのは常識でしょう。

ところが、この常識が以前の日本の経営者のなかでは常識ではありませんでした。

たしかに銀行借り入れにはそれなりの調達コストつまり利息がかかるということはわかっていましたが、

株主に出したもらう資本金についてはその調達コストつまり配当などを意識することはほとんどなかったのです。

しかしこれは間違いです。

銀行借り入れも資本金も、ビジネスの元手を調達するという意味では、同じものです。

どちらにもそれなりの調達コストがかかるのです。

この点についての説明を『道具としてのファイナンス』から引用します。

☆☆☆
 
長い間、経営者に認識されてきませんでしたが、別の資金提供者である株主に対しても、コストを支払う必要があります。

株主に対しては、配当やキャピタルゲイン(株式の値上がり益)という形のコストが発生するのです。

企業が、債権者や株主に支払うこれらのコストを資本コストといいます。

企業の資本コストは、株主の要求するリターン(株主資本コスト)と債権者の要求するリターン(負債コスト)を加重平均することによって計算できます。

このため、

資本コストは、加重平均資本コスト(Weighted Average Cost of Capital: WACC)とも呼ばれています。

(『道具としてのファイナンス』、p.114)

☆☆☆
 
この「加重平均コスト」すなわちWACC(「ワック」と発音します)のパーセンテージ(たとえば10%とか)を算出することが、財務部の第一の仕事といってよいでしょう。

そしてその元手を使ってWACC以上のリターンを生み出すことができるプロジェクトこそが、本当の意味で利益を出す仕事だということになります。


ちなみに大企業であればWACCを10~20パーセント程度と考えても、あまり無理ではないと思います[1]

これはすなわち、そうした企業でのあるプロジェクトが10パーセント以下の利益しか出していないとすれば、それは実質的には赤字のプロジェクトだということを意味します。

現実は厳しいですね。

現在価値、リスク(標準偏差=ボラティリティ)、資本コスト。

ファイナンス理論は、この3つの概念を根幹として構成されているといって過言ではありません。

まずしっかりと理解しましょう。

あせってはいけません。

まずは基本の知識をしっかりと身につけましょう。

応用知識はそのあとです。


[1] もちろん財務体質や経済環境によって状況はそれぞれの企業で実際の数値は大きく異なりますが。

☆☆☆

☆☆☆

「ことさきく|成瀬由紀雄の日英文章・翻訳教室」では、このほかにも日本と日本人、英語・日本語・翻訳その他に関するコンテンツを数多くアップしてあります。総数は1000本を超えています。

いくつものマガジンを設定していますのでぜひチェックしてみてください。

いいなと思ったら応援しよう!