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【🎨展覧会レポ】パラミタミュージアム「HAIBARA 和紙がおりなす日本の美ー歴代榛原直次郎が絵師たちとつくりあげた世界 是真・暁斎・夢二・巴水」ほか

【#338、約5,600文字、写真約70枚】
パラミタミュージアム(三重県三重郡)に初めて行き、常設展や「HAIBARA 和紙がおりなす日本の美ー歴代榛原直次郎が絵師たちとつくりあげた世界 是真・暁斎・夢二・巴水」を鑑賞しました。その感想・レビューを書きます。

▶︎ 結論

期待せずに行きましたが、想定以上に満足度が高かったです!それは主に、1)個性のある作品群ボリュームのある展示数、2)展示内容と見せ方に工夫が豊富だった企画展、3)ガーデンで気分がリフレッシュ!、4)ジャスコ創業者の小嶋千鶴子に逢えたためです。三重県で美術館を巡る際はマストでオススメです!

おすすめ度:★★★★☆
会話できる度:★★☆☆☆
混み具合:★★☆☆☆
展覧会名:HAIBARA 和紙がおりなす日本の美ー歴代榛原直次郎が絵師たちとつくりあげた世界 是真・暁斎・夢二・巴水
場所:パラミタミュージアム
会期:2026年4月4日(土)~5月31日(日)
休館日:会期中無休
開館時間:9:30~17:30
住所:三重県三重郡菰野町大羽根園松ケ枝町21−6
アクセス:大羽根園駅から徒歩約5分
入場料(一般):1,000円
事前予約:ー
所要時間:約2時間
撮影:3割が撮影可能
巡回:パラミタミュージアム→石川県立美術館→上田市立美術館サントミューゼなど(会場によってタイトルも変更)
URL:こちら


▶︎ 訪問のきっかけ

1泊2日の三重アート旅行を企画した際「三重県 / 美術館」で検索。三重県には美術館が豊富でない中、不思議な名前に興味を引かれました。

▶︎ アクセス

無人駅

パラミタミュージアムへは、大羽根園おおばねえん駅から徒歩約5分。大羽根園駅は四日市駅から電車で約20分です。

駅出てすぐの看板に安心
のどか過ぎる
美術館の外観は地味

▶︎ パラミタミュージアムとは

パラミタミュージアムは(略)2003年3月開館しました。そして、2005年4月には(略)財団法人岡田文化財団(現:公益財団法人岡田文化財団)に寄与され、財団の美術活動における中核施設という役割を担うこととなりました。池田満寿夫の陶彫《般若心経シリーズ》をはじめとする多彩なコレクション群と、魅力あふれる企画展を両輪に、展覧会を開催してまいります。

公式サイトより

ジャスコの創設者、イオングループの共同創業者である小嶋千鶴子(2022年没、享年106歳!)は、両親の影響で20歳ごろから美術品を蒐集していました。小嶋千鶴子は、池田満寿夫の《般若心経シリーズ》すべてを手に入れた際「私最後のライフワークとして、必ず、これらの作品を展示できる美術館を建てます」と約束し、それを実現しました。

聞き慣れない「パラミタ」という美術館名の由来は、池田満寿夫の《般若心経シリーズ》です。

『般若心経』を正しく言うと『般若⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎心経』となります。梵語のパーラミターの音写波羅蜜多はらみた」(迷いの世界である現実世界の此岸から、悟りの境地である涅槃の彼岸に至ること)が使われています。命名は、新聞による一般募集だったそうです。

主なコレクションは、《般若心経シリーズ》の作陶全1,299点や、萬古焼を約1,400点、洋画家・小嶋三郎一(小嶋千鶴子の夫)の油彩500点など。

私は、小嶋千鶴子に関する本を読んだことがあります。彼女は、社員の教育を福祉とし、人事部を最重要と考えました。中でも「ゴミ箱のない部屋は汚れる」理論は記憶に残っています。

第2室と企画展は撮影禁止

美術館の外観は地味だった一方で、館内は広く、作品の展示数も多かったです。ゆっくり見ていると日が暮れるため、サクッと鑑賞しました。

第1室→第6室が順序として、提示されていました。ただ、第4室、第5室の企画展は大ボリュームだったため、疲れる前に1階の第6室を見た方がいいと思います。以下、私が観覧した順に紹介します。

✔️ 第1室:中山保夫

ガラス製造技術者であった中山保夫(岐阜県多治見市生まれ、多治見工場学校卒業)。陶磁器では成形不可能といわれてきた継ぎ目のないワインカップやコーヒー碗を一体成形することに成功し、最高級ボーンチャイナの洋食器を生み出したそうです。

▼ 多治見にあるミュージアムの感想

器が淡々と並ぶ

作品名以外の記載がありませんでした。観覧者は「きれいやねぇ、洒落てるねぇ」と鑑賞するのみ。作者からの一言などの情報もあれば、新しい気づきがあったかもしれません。

《菊型 万華譜 紅茶碗皿・珈琲碗皿》
《花鳥碗皿タイザンボク(黒)》

作品ごとに、ワイン用、コーヒー用、紅茶用、ケーキ用、サンドイッチ用などの記載があったため「何が違うねん。別に何に使ってもええんちゃうかな?」と思いました。私がコーヒーをすするなら、繊細で高級なカップではなく、ずっしりとした持ち応え、口当たりの良さを重視します(笑。

《琳派屏風絵珈琲碗皿》
《ステム 珈琲碗皿 花ブドウ》

✔️ 第2室:辻輝子

辻輝子は、女流陶芸家の草分けとして活躍(1920年、東京・日本橋生まれ)。パラミタミュージアムは茶碗、香合など約400点を収蔵、国内随一の規模だそうです。

この部屋は撮影禁止、約100点の香合が並んでいました。チマチマしたものがたくさん並んでいるため、若干シュールでした。

「そもそも香合って何ぞや」と思いました(展示室内に説明があるとうれしい)。香合とは、香木や香料を入れておく小さな容器のことを指します。お香を焚くための容器だと思っていましたが「ただの入れ物」のようです。茶道は奥が深い。

✔️ 第3室:池田満寿夫

小嶋千鶴子が惚れ込み、美術館名や、設立の由来にもなった作品群です。しかし私は、全体を鑑賞して「ふーん、そうだねぇ」という印象でした。

MoMAで日本人初の個展を開催!

色即是空しきそくぜくう 空即是色くうそくぜしきは「目に見える物質や現象は不変の実体をもたないが、実体がないからこそ変化、存在できる」という仏教の根幹思想だそうです。

集合体恐怖症的な怖さがある…

私は過去、お寺で般若心経をよく聞いていました。そのためか、笑い飯の哲夫(奈良・桜井市出身)が「ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてー」などをネタにしているのを聞いて、反射的に笑っていました。

現代アート的な曼荼羅
初期のリトグラフ作品《空の空》
《般若心経シリーズ》とは随分作風が違う

✔️ 第6室:小嶋三郎一さぶろういち、小島千鶴子

小嶋千鶴子は、三重県四日市市生まれ。彼女の旦那は洋画家・小嶋三郎一(三重県松阪市生まれ)。私はパラミタミュージアムの事前知識ほぼゼロで行ったため、この美術館がイオン(ジャスコ)と関係があったとは、面白い発見でした。このようなセレンディピティが、旅行の醍醐味でもあります。

小嶋三郎一《椿》
小嶋三郎一《抽象》
小嶋三郎一《黄色のさくらんぼ》

さくらんぼの絵は、浜口陽三も多く描きました。大きさ、色、形など、何とも言えないかわいさが画家を惹きつけるのかもしれません。私がフルーツに生まれ変わるなら、人気者のさくらんぼになりたい。

展示室には、創業者・小嶋千鶴子の作品も並んでいました。70歳から作陶を始めたそうです。

中村晋也《小嶋千鶴子像》
小嶋千鶴子《古代回想》

✔️ スロープ:萬古焼ばんこやき

2階へのスロープも作品の展示スペースを兼ねているのは面白いアイデアでした。そこでは、萬古焼が展示されていました。

萬古焼とは、三重県四日市市を中心に生産される、耐熱性に優れた「半磁器」の伝統工芸品。特に土鍋の国内シェアは約80%を誇るそうです。

▼ 代表的な萬古焼の土鍋(実家でよく使ったなぁ…)

2階から見たパラミタガーデン

✔️ 第4&5室:企画展「HAIBARA 和紙がおりなす日本の美」

榛原はいばら」は、1806年の創業以来、220年にわたり東京・日本橋に店舗を構える和紙舗です。(略)榛原の当主たちは代々、同時代の画家たちに意匠を依頼し、ときにその活動を支援しました。(略)本展では、榛原と画家たちとの関わりに焦点を当て、主に明治から昭和初期にかけて製作された和紙小物(略)あわせて300点を超える作品を公開いたします。

公式サイトより

会場内は、一部の千代紙を除いて撮影禁止です。

⚫︎榛原とは?

私は、日本橋にある榛原の店舗を見たことがあります(日本橋高島屋の近く)。取り扱う商品の種類は思ったより広いです。自分用に買うのはハードルが高いものの、ギフトには喜ばれそうな商品が多い印象です。

⚫︎センスの光る会場構成

会場の外

会場には、千代紙、団扇絵、絵短冊、絵封筒、ぽち袋、熨斗などに加え、画家たちによる絵、榛原ゆかりの貴重な資料などが展示されていました。

この展覧会では、展示数が多いことに加え、見せる物、見せる方法が多岐にわたっていたため、知的好奇心を満たしながら作品を鑑賞できました。すべて真剣に見ると、ヘトヘトになるボリュームでした。

この企画展は、パラミタミュージアムの次に、石川県立美術館(2026年8月)、上田市立美術館サントミューゼ(2026年9月)など巡回予定。館によって展覧会のタイトルが変更されていることから、見せ方も地域に合わせて変更すると思われます。最後は、都内の美術館でも実施するのでしょうか。

⚫︎有名アーティストとのコラボ

河鍋暁斎《桜と楓》

榛原の商材は、今も昔も高級和紙。江戸時代、紙づくりはこうぞが主流だった中で、高品質な和紙である雁皮紙がんぴし紙の王様)を主力商品としました。

河鍋暁斎《牡丹》

しかし、ただ美しい紙を売るだけではビジネスが成立しません。そこで榛原は、美しい木版刷りを施した和紙製品に注力しました。まるでユニクロのUTのような商売です。

河鍋暁斎《菊花》《牡丹》

当時、コラボレーションしたアーティストは、柴田是真、河鍋暁斎、川端玉章、竹久夢二、川瀬巴水はすい、川端龍子、鏑木清方など。紙屋さんの進化は、画家の進化と一心同体だったようです。

河鍋暁斎《牡丹尽くし》

なお、展覧会タイトルは「和紙がおりなす日本の美」。タイトルやポスタービジュアルを見ると、工芸技術を全面に出したような印象を受けました。

河鍋暁斎《重陽》

しかし、館内には、紙の文化的歴史や背景に加えて、ファインアートにも匹敵する作品がズラリ。メインビジュアルには、反復する千代紙の図柄ではなく、上記画家による風景や人物の作品を使った方が、集客に寄与すると思いました。

⚫︎千代紙?熨斗?祝儀袋?

会場には、河鍋暁斎がデザインした千代紙が多く展示されていました。それを見て「そもそも千代紙とは何ぞや?」と思いました。千代紙とは、和紙に木版多色刷りで伝統的な紋や絵柄を施した紙で、主に、折り紙、小物包み、紙細工の材料として使われます。当時は、1枚10銭や15銭でした。

河鍋暁斎と言えば、擬人化したかわいい動物を思い浮かべますが、おしゃれなデザインの仕事も多くこなしていたんですネ。

今まで、版画を見る際「これはどうやって作ったんやろう?」と意識を向けることが多かったです。しかし「これはどんな紙を使ったんやろう?」と思ったことはありませんでした。この展覧会では改めて、紙の歴史や種類への気づきを得るきっかけになりました。

▼ 木版画の展覧会の感想

そのほか、さまざまなデザインが乗った熨斗や祝儀袋も展示されていました。古代日本では、神事に供えられていた鮑を薄く伸ばして乾燥させた「熨斗鮑」を、不老長寿の縁起物として、贈り物に添えていました(のす=伸ばす)。江戸時代、この風習が簡略化されて「折熨斗」になったそうです。

熨斗紙(掛け紙)の内容(画像引用

百貨店などで「熨斗をつけますか?」と聞かれることがあります。私は「熨斗=水引きなどが印刷された紙」だと思っていました。しかし、紙のことは「熨斗紙(掛け紙)」と言い、「熨斗」とは「右上にある飾り」を指すんですネ。この展覧会に行った後に調べたことで、さまざま勉強になりました。

祝儀袋の数々

また、祝儀袋(関西:ポチ袋)は、芸能界や花魁界隈で、演者にお金を渡す際に袋に入れたことが起源だそうです。どんな袋を使うかによって、その人のセンスが問われそうです。

《祝儀袋貼込帖》
Something is better than nothing.(何もないよりはまし)とは、センスがある祝儀袋(笑

⚫︎商業美術館の面白さ

私は今年『商業美術家の逆襲』(NHK出版新書、山下裕二)を読みました。まさにこの展覧会で並んでいたような作品が、当時はファインアートと比べてワンランク下に見られていたのかな?と思いました。

✔️ パラミタガーデンほか

パラミタガーデンには、鈴鹿山麓に植生する山野草が彩る里山の散策を楽しめます。手入れが行き届いていることに加え、気温が20度前後の春先では、アート鑑賞に疲れた体を癒してくれました。アートのほか、自然も楽しめるのはうれしいです。

▼ 自然も楽しめる五島美術館

ガーデンのほか、パラミタミュージアムには、自由に休憩できるサロンもあります。

1階の廊下
中村晋也《 釈迦十大弟子 論議第一 迦旃延》
中村晋也《純陀ー最後の供物者達》
トイレの近くのさりげなく川端龍子の作品

▶︎ まとめ

買ったポストカード。
小嶋三郎一《黄色のさくらんぼ》

いかがだったでしょうか?行く機会をつくるのが難しい場所にあることに加え、特に期待していませんでしたが、想定外に楽しめました!個性のある収蔵品、クオリティの高い企画展、作品だけでなく自然も楽しめた美術館の設計が良かったです。また、ジャスコ創業者の小嶋千鶴子にも会えてうれしかったです。

▶︎ 今日の美術館飯

★3.2/ ホテルルートイン 津駅南 国道23号 (三重県/津駅) ー バイキング朝食 (¥0)

▶︎ 次回予告

次回の投稿は、食べログでレビュー件数2,800件を超える私が選ぶ「チェーン店で食べるモーニング ベスト10」を予定しています。


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