【映画レポ】果てしなきスカーレット:戸惑い続けた111分。好きだった細田守はもういない
【#288、約4,100文字、写真約10枚】
細田守監督によるアニメ映画「果てしなきスカーレット」を見ました。その感想・レビューを書きます。
※以下、ネタバレを含みます。
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▶︎ 結論
誰にもオススメできないと思いました。それは主に、1)期待していた「細田守作品」でなかった、2)映像表現・世界観・メッセージともに「納得感」「リアル感」が不足して感情移入できず、終始置いてけぼりだった、3)原作=監督であるガバナンス上の課題があったと推測されることによります。「一体、私は何を見せられているんや…」と戸惑い続けた約2時間でした。細田守作品が大好きでしたが、また距離を置きそうです。なお、声優は素晴らしかったです。
映画名:果てしなきスカーレット
おすすめ度:★★☆☆☆
監督:細田守
上映時間:111分
公開日: 2025年11月21日
HP:こちら
▶︎ 鑑賞のきっかけ

2006年、私は『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(監督:細田守)が好きで『時をかける少女』を見ました。劇中で「お前、タイムリープしてね?」というセリフを聞いた時、鳥肌が立ったことを今も覚えています。そして私は、細田守の大ファンとなりました。

当時、大学生だった私は、映画館で同じ映画を2回見たことがなかったのに、合計3回も見ました。2回目以降は、同志社大学でサイン会も兼ねた上映会、ノベルティ欲しさに(今はなき)テアトル梅田でも見ました(1人で映画を見たのもコレが初めて)。
▼ 奥華子 / 変わらないもの&ガーネット(泣ける🥲…)
その後『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』も見て、それも私の大好きな作品になりました。



2014年には東京国立博物館で「時かけ」の野外シネマも行きました。

そして『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』まで見ました。しかし、私の求める「細田守作品」から徐々に離れていったため、それ以降の『未来のミライ』『竜とそばかすの姫』は、見ていません。
それは主に、当初はシンプルなストーリーや設定だったものが、徐々にスペクタクル化、現実離れしたものが多くなったこと、大衆迎合的な要素がイヤになった記憶があります。
そして「バケモノの子」(2015年)から10年。「秒速5センチメートル」の上映前に流れていた予告をきっかけに「久しぶりに細田守作品を見ると、何かうれしい発見があるかも?」と、見ることにしました。
▶︎ 人気のなさに驚愕

劇場に入ってびっくり。私を含めて4人しか観客がいませんでした。日テレと協業し、金曜ロードショーで細田守映画を4週連続放送する効果はなかったようです。

私は「細田守」を入り口に、鑑賞しました。確かに、メインビジュアルがあまりにも辛気臭いため、一般的な人は「見たい!」と思わないでしょう。
▶︎ あらすじ

スカーレットは、殺された父親の復讐をすべく立ち向かうが、服毒により返り討ちにあう。すると、生も死もないような、不思議な世界に迷い込む。そこで、聖との出会いや、父親を殺した敵との対決などを通して、多くを悟り、現実世界に戻る。そして、女王に返り咲いたと同時に、平和な世界を歩む、というお話。
▼ 詳細なストーリー
▶︎ 素晴らしい声優陣
主人公・スカーレットの声優は芦田愛菜によるもので、特に違和感はなかったです。常に彼女は怒っているか、泣いているかでしたが、1度だけ「恥ずかしい」と言ったセリフは、ギャップでキュンとしました(二の腕って、見られて恥ずかしいのかな?)。
そのほかの声優陣も豪華で、どこかで聞いたような声ばかりでした。特に、役所広司によるクローディアス(悪役)は迫力があったため、大御所感がすごかったです。
「秒速5センチメートル」の演技が素晴らしかった白山乃愛は「少女」役で出演。もちろん声の表現も良かったです。しかし、物語のフックとして「少女」の存在は必要だったのか、微妙でした。
▶︎ 受け入れ難い映像表現

細田守といえば、影がないシンプルな表現が持ち味だと思っていました。しかし今作では、今までと違うさまざまな映像表現が特徴的でした。CGと写真を合成したシーンがあれば、セル画風のシーンなど、場面によって使い分けられていました。
表情もCGを使ったり、唇のシワまでリアルに表現されている場面がありました。それらは、どこかロボットのようで、細田守アニメならではの温もりやオリジナリティがなかったため残念でした。
これらは新しいチャレンジだったと思います。しかし、私が期待したものと違ったため、最後まで受け入れられませんでした。
なお、モーションチャプチャなどを駆使して、画面いっぱいに映るモブキャラたちがリアルに動いている様子は、単純にすごいと思いました。
▶︎ 物語の9割は退屈
予告を見た時は、タイムリープ系かな?と思ったため、少しワクワクしました。しかし実際は、そう単純ではありませんでした。
人が死ぬ(生死を彷徨う)と、現実と同じような「死者の国」に迷い込みます。そこでは、時代や地域もさまざま、痛みも感じます。その中で、死ぬような大ダメージを受けると、体が灰のようにバラバラの「虚無」となって消えていきます。最後まで、この世界に対する納得感が薄かったです。
また、急に歌い出すシーンでは、ポカーンと置いてけぼりになりました。さらに、物語のラストでは、過去に戦った敵が、予定調和的に友として助けてくれます。あまりにも唐突すぎて興醒めしました。
雰囲気は、全体を通して(メインビジュアル通り)暗いです。今までの明るい細田守の作風とは、180度違う印象を受けました。そして、物語の9割は退屈でした。設定やストーリーの整合性や作り込みが不十分なため「リアル感」がなく、感情移入できなかったことが大きいと思います。
映像技術はすごいです。ただし、物語自体に魅力がないと、宝の持ち腐れ、本末転倒です。鑑賞中、常に「違和感」「受け入れがたさ」「何とも言えなさ」がつきまとっていたため、この作品が日本中で大ヒットするイメージは全く沸きませんでした。
▶︎ まるでNHKの教育映画
老婆(声:白石加代子)が何度かつぶやく「人間とは?生きるとは?死ぬとは?愛とは?」がメインメッセージだと思いました(この老婆の存在は「火の鳥」のようなもの?)。メッセージ性は強くてシンプルですが、あまりにも壮大で普遍的すぎるテーゼであるため、最後までピンときませんでした。
まるで、NHKの教育映画か、宗教映画を見ている感じ。終始「私は一体何を見せられているんや…?」と戸惑いでいっぱいでした。
物語のもう1つの重要なキーワードが「復讐」でした。しかし、スカーレットの父・アムレット(声:市村正親)が最後に残した「許せ」という言葉と、半透明の父との対話を通して、そんなものを信じて生きるのではなく、自分の人生を自分らしく、主体的に、のびのび輝くことの重要性に、スカーレットは気づきました。
その後、スカーレットが聖に対して「家族をつくって、いいおじいちゃんになってね」と言うシーンでは、少しうるっときました。
物語の大半で「復讐、復讐…」と話すシーンが繰り返されていたため、それが解消されたことで「確かに復讐するよりも、もっと建設的なことをせなアカンな」と、私もハッとしました。
物語の最後「本当に争いがなくなる世界がやってきますか?」と言う民衆に、スカーレットは「あなたが賛同してくれたなら」と答えます。きっとコロナ禍後の世界の分断を見て、細田守に思うところがあったのでしょう。
このシーンでは、現在の日本・中国のゴタゴタを思い出しました。くだらないメンツの立て合いで、得をする民衆は1人もいません。今やインターネットで、他国の状況を国民はすべて知っています。私も、争いや復讐から得られるものはないと思いました。
物語のラストは晴々しかったため「いい感じに終わったぁ」と騙されそうになりましたが、やっぱり全体的に納得感は薄い作品だと思い直しました。
▶︎ 原作=監督のガバナンス課題
本作の原作は、細田守自身が書き下ろした小説です。なお、原作・監督をともに務め、大ヒットした映画は非常に少ないです。
そもそも原作小説に課題や力不足があったと推測されます。また、原作=監督の場合、脚本に対して意見があっても「いや、俺の書いた小説ではこうだから」と言われれば、議論の余地がありません。例えば、裁判官と検察を同じ人が行なっているようなものでしょう。
これはある意味、ガバナンスの課題だったと思います。本作では「餅は餅屋」「名選手は名監督にあらず」という命題が見えたのかもしれません。
また、劇中歌やエンディングの作詞も細田守が担当しています。本作は、色々なチャレンジをした結果だと思いますが、私にとっては、ツッコミどころが無限にあり、常に戸惑い続けた2時間でした。
▶︎ その他
弓を引く聖は、「fate」のアーチャーにしか見えませんでした(目つきも似ている)。聖は学生時代に弓道でもしていたのでしょうか?
「生きろ!」「生きる!」のやりとりは、ワンピースのニコ・ロビンとルフィにしか見えませんでした。
最後にクローディアスと対峙している時、スカーレット自身との対話シーンは、綾波レイがダブって見えました。
クローディアスの最期は、「青眼の白龍」による「滅びのバースト・ストリーム」で虚無化(苦笑。
▶︎ まとめ
いかがだったでしょうか?さまざまなチャレンジが詰め込まれた、新しい細田守作品でした。ただ、私の好きだった細田守はもういなくなってしまったと感じました。もし次の細田守作品が発表になったら「見にいきたい!」と言える自信は…ありません。
※ 見出し画像引用元
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