【展覧会レポ】丸亀市猪熊弦一郎現代美術館「大竹伸朗展 網膜」「猪熊弦一郎展 Since 1955」
【#279、約3,700文字、写真約65枚】
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(以下、MIMOCA)に初めて行き「大竹伸朗展 網膜」「猪熊弦一郎展 Since 1955」を鑑賞しました。その感想・レビューを書きます。
▶︎ 結論
とても満足した美術館でした!それは主に、谷口吉生による建築によります。MoMAを彷彿とさせる、作品第一主義を貫いたすっきりしたデザイン、心地よい鑑賞体験を後押しする空間設計は、是非、香川に来たら体験する価値ありです!大竹伸朗や猪熊源一郎の作品はピンとこなかったものの、今後の参考になりました。
おすすめ度:★★★★☆
会話できる度:★★★☆☆
混み具合:★★★☆☆
展覧会名:「大竹伸朗展 網膜」「猪熊弦一郎展 Since 1955」
場所:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
会期:2025年8月1日(金)-11月24日(月・休)
休館日:月曜日
開館時間:10:00-18:00
住所:香川県丸亀市浜町80−1
アクセス:丸亀駅から徒歩約1分
入場料(一般):1,500円
事前予約:不要
所要時間:約1時間
撮影:すべて可能
巡回:ー
URL:こちら、こちら
▶︎ 訪問のきっかけ

2泊3日で、香川県の美術館巡りを1人でした際、最終日に訪問しました。前日には、高松市美術館に行きました。
そのほか、どこに行こうと考えた時、以下が候補でした。
イサムノグチ庭園美術館
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
東山魁夷せとうち美術館
イサムノグチ庭園美術館に最も行きたかったです。しかし、調べてみると、開館日が火・木・土曜日のみ!断念せざるを得ませんでした。
直近で、谷口吉郎・吉生記念 金沢建築に行ったため、谷口吉生への興味が高まっていました。そこで、MIMOCAへ行くことに決めました。
▶︎ アクセス

MIMOCAへは、丸亀駅から徒歩約1分。駅から目の前に象徴的な建築がドーン!と建っているため、迷うことはありません。全国で初めての「JR駅前の美術館」と言われています。
▶︎ 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館とは?
✔️ 猪熊弦一郎とは?

私は、猪熊弦一郎を存じ上げなかったです。香川県高松市生まれ、昭和初期の洋画家だそうです(1902〜1993、90歳没)。生後から高校生になるまで丸亀市で暮らしました。フランスでマティスから直接指導を受けたり、三越の包装紙「華ひらく」をデザインしました。
当時、猪熊源一郎からその原画を受け取ったのは、三越の宣伝部に所属していたやなせたかしでした。
猪熊源一郎の代表的な作品は、上野駅にある《自由》(1951年)。日常にアートを取り入れるという思想を実践し、パブリックアートの先駆者だったとのことです。

MIMOCAがオープンした年、丸亀市名誉市民となりました。
✔️ 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館とは?

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(Marugame Genichiro-Inokuma Museum of Contemporary Art)は、市制施行90周年の記念事業として、1991年に開館。猪熊弦一郎が丸亀市に寄贈した約2万点の作品を所蔵・展示しています。
✔️ MoMAを思い出す建築

特徴的なのは、猪熊源一郎の希望による谷口吉生の建築です。私は、MIMOCAを訪れる1ヶ月前に「谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館」「鈴木大拙館」へ訪れていたため、感慨深かったです。



駅の目の前にある大胆なファサード!これを見たくて訪れる人も多いのでは。そして、そこにつながる空間とシマシマの道。これは、アメリカのランドスケープ・アーキテクトのピーター・ウォーカーが担当。駅前広場と美術館が一体となった設計を意識したそうです。




壁には、猪熊弦一郎の壁画《創造の広場》や、さまざまなオブジェが置かれています。とても開かれたデザインだと感じました。






3階建ての館内は、大きな吹き抜けが印象的でした。また、自然光がしっかり入るように設計された、パキッとシンプルなデザインでした。



1階にはミュージアムショップや休憩スペースがあります。




3階には特別展を行う、天高が7mある大きな展示室、2階には、常設展と企画展を行うスペースがあります。


そのほか、2階にはアートセンター、3階にはカスケードプラザやカフェが併設されています。




特に、3階と2階をぶち抜きにしたスペースに非常に開放感がありました。また、館内の壁は白、イスは黒といったコントラストの美しさが印象の残りました。庇をつかった構造や直線的なデザイン、作品が引き立つ設計は、MoMAに行った時の記憶が蘇りました。



MIMOCAがあるおかげで丸亀駅にたくさんの人が来る。建築のチカラにはすごいと、改めて感じました。


▶︎ 「大竹伸朗展 網膜」感想

〈網膜〉シリーズは、1988年に制作の拠点を移した宇和島のアトリエで着想され、1990年代初頭まで集中的に制作されたあとも、他のシリーズへの展開を伴いながら制作が続けられてきました。(略)大竹は、廃棄された露光テスト用のポラロイド・フィルムに残された光の痕跡を大きく引き伸ばし、その表面に透明の絵具としてウレタン樹脂を塗布する絵画作品のシリーズに、この名をつけました。

私は今まで、大竹伸朗に興味がありませんでした。過去、「ハワイ」と書かれたTシャツでハワイに行ったことがありました。そのTシャツが、大竹伸朗のデザインだったと、今回のMIMOCAで初めて知ったくらい無知でした。
✔️ 3階 展示室


3階の展示会場には、説明文や順路など何もありませんでした。展示室は、大きく2つのシンプルな構成。そもそも「網膜」って何だ?この大きな作品は写真か?プリントなのか何なのだ?大竹伸朗を知らない私にとっては、謎の世界観が広がっていました。





会場には子供も多かったです。みんな楽しく話しながら作品について話している光景は、とても心地よいものでした。中には、作品の前に立って、ピースサインで撮影している親子もいました。



作品からは退廃的な印象を受けました。しかし、決してネガティブではなく、会場にはポジティブな空気が流れている不思議な雰囲気でした。とはいえ、大竹伸朗の何が評価されているのか、メッセージは何なのか、今回1度だけの鑑賞では、腑に落ちませんでした。




✔️ 2階 展示室

大竹伸朗の企画展は2階にもつながっていました。



大竹伸朗の作品は、全てを通して「謎」という印象でした。背景を知った上で鑑賞すると、見え方が変わるのかもしれません。




2階の展示室でも、子どもが記念撮影する光景がチラホラ。まさに猪熊源一郎が望んだ世界がそこに広がっていました。
僕の場合、要素が過剰なくらい積み重なった混沌というイメージが強いんですけど、内側は結構シーンとしているんです。音楽でいえば、究極のノイズの先には静寂があるみたいな。絵にもそういうようなの、あるんですよ。
僕の場合は、怒りが必ずしも負ではないっていうか。世の中の人が「お前、何でそんなのにいちいち怒るの?」ってことでも、それが絵になればハッピーなんです。とにかく全部をクリエーションの方に転化する。そのきっかけさえあればなんでも良くて。
▶︎ 「猪熊弦一郎展 Since 1955」感想

猪熊は渡米をきっかけにそれまでの半具象的な表現を脱し、抽象的な絵画を開花させました。(略)約20年におよんだ猪熊のニューヨーク時代の作品には、それぞれマチエールの工夫と効果があり、油絵具とアクリル絵具という画材の違いもあらわれています。
ここに展示されている猪熊源一郎の作品は、上野駅の《自由》や、MIMOCAの入り口に設置されている《創造の広場》とは違い、かなり抽象的なものが多かったです。



大竹伸朗、猪熊源一郎の作品を見て、どの作品が好きだったかな?と振り返っても「うーん…」という感想でした。作品よりも、ダイナミックな吹き抜け空間や、作品とそれを引き立てるすっきりした建築など、美術館全体の美しさが印象に残りました。

▶︎ まとめ

いかがだったでしょうか?最も印象に残ったのは、谷口吉生による作品を引き立たせる、質実剛健で静謐な建築でした。大竹伸朗のダイナミックな作品を初めて見られたことに加え、丸亀名誉市民である猪熊源一郎のアートを知る機会となってよかったです。香川に来たら、マストで寄りたい美術館だと思いました!
▶︎ 今日の美術館飯


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