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【🎨展覧会レポ】佐藤美術館「塩谷亮 刻を描くリアリズム」

【#340、約4,200文字、写真約50枚】
佐藤美術館(新宿区)に初めて行き「塩谷亮 ときを描くリアリズム」を鑑賞しました。その感想・レビューを書きます。

※ 本展覧会はすでに終了しています。

▶︎ 結論

予想外に満足感が高かったです!それは主に、今まで私は写実絵画を敬遠していたものの、塩谷亮の描く写実絵画は、写真のようで、写真にはない独自の面白さを実感できたためです。これは、パソコンのディスプレイ越しに作品を見ても、全くわからなかった価値でした。ホキ美術館などでは塩谷亮の作品を定期的に見ることができます。気になったら是非、訪問を検討してみてください☺︎

おすすめ度:★★★★☆
会話できる度:★★☆☆☆
混み具合:★★★☆☆
展覧会名:塩谷亮 刻を描くリアリズム
場所:佐藤美術館
会期:2026年1月8日 – 2月15日
休館日:月曜日
開館時間:10:00 ~ 17:00
住所:東京都新宿区大京町31−10 アート千駄ヶ谷ビル
アクセス:国立競技場駅から徒歩約5分
入場料(一般):800円
事前予約:ー
所要時間:1時間〜1時間半
撮影:9割以上が可能
巡回:ー
URL:こちら


▶︎ 訪問のきっかけ

訪問のきっかけは、1)佐藤美術館は未訪問だった、2)NHKの番組『アートシーン』でこの展覧会を知った、3)写実絵画をほぼ見たことがなかったことです。そこで、会期の最終週にふらっと訪れました。

▶︎ アクセス

佐藤美術館へは、国立競技場駅から徒歩約5分。見た目は一般的なオフィスビルだったため、少しびっくりしました。

展示室は3階〜5階

▶︎ 佐藤美術館とは?

現在の場所に、佐藤美術館がオープンしたのは2002年公益財団法人佐藤国際文化育英財団が運営しています。

1990年、第一不動産グループ創業者・佐藤行雄(1924~2009)が、美術館運営や美術専攻学生の支援を目的として、財団法人佐藤国際文化育英財団を設立しました(株式会社第一不動産は、バブルによる資金繰りの悪化により、2007年に倒産)。

国際花と緑の博覧会」(1990年)で、「第一不動産グループ 花と緑・日本画美術館」と題し、日本美術界を代表する現代日本画家50名(髙山辰雄、上村松篁小倉遊亀など)による新作を出展。それら作品の寄贈をきっかけに、佐藤美術館がオープンしました。

▼ 上村松篁、小倉遊亀の作品を収蔵する美術館

客観的事実から、佐藤行雄はメセナを目的に「国際花と緑の博覧会」に出展したと考えられます。そこで展示した作品をきっかけに、財団や美術館を設立。第一不動産は破綻したものの、財団としては志高く運営していたため、現在も継続しているのかな?と想像しました。

現在、佐藤美術館がメインで開催する展覧会は、武蔵野美術大学、多摩美術大学、財団の奨学生などによるもの。今回のような企画展は稀のようです。

フロアガイド

佐藤美術館は2階から5階で構成。それぞれのフロアへは、エレベーターや階段で移動します。受付は2階にあり、チケットやミュージアムグッズを販売。コインロッカーはありません(受付で荷物を預けることは可能)。

3階から5階が展示フロア。そこに看視員はいませんでした。オフィスビルを改装した室内は、天井が低く、広さも十分でないため、鑑賞環境としては集中しづらいと感じました。同じ印象は、UESHIMA MUSEUM(渋谷)でも受けました。

▶︎ 「塩谷亮 刻を描くリアリズム」感想

《Autunno》

現代写実絵画の第一線で活躍する画家・塩谷亮(1975 年生)による初の大規模回顧展を開催いたします。(略)油彩画の魅力に惹かれた中学時代を経て、武蔵野美術大学油絵学科に入学した塩谷は、絵画の造形研究に情熱を注ぎます。(略)絵画表現は、単なる「写し取り」ではなく対象を深く見つめ、古典技法を土台に、気配や空気感といった目に見えないものを描き出すことにあります。(略)5歳で描いた絵から高校・大学時代の習作、デビュー以降の代表作、最新作まで約50点を一堂に展観します。

公式サイトより

✔️ リアル以上にリアルな質感

《Resonance》

塩谷亮の作品は、写真のようで写真とは違う、独特なマチエールに魅力があると思いました。特に、髪のふんわり感がリアル!真っ白な髪がところどころ描かれています。それを遠くから見ると、髪全体の立体感が増して見えるのが不思議でした。

《Daria》
髪の毛の表現が美しい
《ダリアの解剖図》

近寄ってマチエールを見ると、塗った感はしっかりあります。しかし離れて見ると、完成した作品に見えます。騙し絵のような面白さも魅力でした。

左《2020 春》、右《息》

また、描かれた多くの人物は、フェルメールの《真珠の耳飾りの女》のように、目に白い点点綴技法ポワンティエ)が入っていました。それにより、瞳のみずみずしさ、立体感、生きている感が増していると感じました。

《遙視》

作品内の背景や空気感も、写真には出せない印象がありました。それは、現実以上に現実的に感じるような、現実的なのに非現実的に感じるような、不思議な感覚でした。

また、カメラで写真を撮れば、被写界深度によりボケが生じます。しかし、絵画はそれを無視して表現できます。塩谷亮の作品は、写真のようで写真でない、思想・感情が表現された「創作物」だと思いました。

《奥海津霧景》
《晩春近江》
《月影》

館内には、モノ、自然風景、動物がモティーフの絵もありました。《蕗の薹》は、小料理屋や料亭に掛けてあったら、しっくりきそうです。

《蕗の薹》
《蒼》
《花韻》

塩谷亮のリアル以上にリアルな絵は、どことなく死生観を感じました。その作風は「三浦明範展」(秋田県立近代美術館)を思い出しました。

《海(5歳)》

塩谷亮が5歳の時に描いた絵もありました(かわいい…)。また、17歳の時の作品も展示されていました(すでに完成度がすごい…!)。

《静物(17歳)》

✔️ リアリズムに潜むメッセージ

《透》

写実的な作品は「すごい」と感じるものの、作者のメッセージはどこにあるんだろう?と疑問に思いました。

《森暎》

例えば私は、カナレットの「べドゥータ」(緻密に透視図法で描いた絵)を見た時「似たような絵ばかり見ていると若干飽きてきました」と書きました。

ただの写実的な技術だと、陳腐化していきます。しかし、塩谷亮の絵には、カナレットにはない良さを感じました。

《月華》

差異化するには、技術を世界一まで極めるか、オリジナリティを出すかしかないと思います。写真のようだけど、写真にない良さを感じる。そのちょうど良い塩梅が人気の秘訣なのかもしれません。

《颯》

なお、メッセージ性の強い現代アートを見るのが好きな私は、塩谷亮がどのような気持ちで描いているのか借問したいと思いました。

✔️描き方が気になる

3階、4階で作品を見ている時「こんなにすごい絵は、普通の人は描けへんなぁ。どんな工程とか道具で描いてるんやろ?写真撮って、それを写してんのかな?描いてる風景の動画があると面白いなぁ」と思いました。

すると5階に、制作過程の展示がありました(鑑賞者の気持ちをよくわかっている…!)。塩谷亮は、モデルを置いて、しっかりデッサンしていました。また、実際に描いている様子の動画も展示されていました。

塩谷亮は、ササっとした手捌きで、色を重ねたり、拭き取ったり。勢いのまま、下絵を連続的に描く過程は魔法のようでした

《邂逅》
《邂逅(エスキース)》
《邂逅》制作過程

描いている様子の動画は、観覧者として納得感のある展示手法のため、さまざまな展覧会でも実施してほしいです。

テンペラは秋田県立近代美術館で知りました
ヴェロッキオ工房《キリストの洗礼》部分模写

✔️ 平日でも大賑わい

狭い室内には常時約15人いるなど、賑わっていました。平日だからか、比較的高齢の方が多かったです。

このような写実的な作品は、アートに興味がない人も、年齢や人種も関係なく「おぉ…、すごぃ…」と楽しめるため、集客力があります

✔️ 撮影可能の功罪

展示作品の約9割が撮影可能でした(ホキ美術館の収蔵作品は不可)。

パブリックコレクションにホキ美術館

観覧者はみな、写真をバシャバシャ撮っていました。写実的な作品は、本能的に「すごい!」と思うため、撮影したい気持ちはよくわかります

中には、すべての作品1つ1つをスマホでサクサク撮影し、展示室を出る人もいました。室内の様子を眺めていると、そのような行動を取るのは、ほとんどが高齢の方でした。若い人は気になった作品があったら、サッと撮る程度。昔は、撮影NGの展覧会がほとんどだったため、その反動でしょうか。

他人に迷惑でなければ、撮影は問題ないと思います。ただし、すべての作品を作業的に撮る姿は、違和感が大きかったです。私には、バイキングで食べきれない量の食事を、嬉々としてお皿に盛っているような姿に見えました。

✔️ 印象に残った絵

《2020 春日》

私は《2020 春日》が印象に残りました。コロナ禍の際、幼児にもマスクを強いる場面がありました。当時、私はそれに対して違和感が大きく、辛かったです。そんな思いを、現実感のあるマスクの絵柄と、少女の目線から感じとりました。

✔️ その他

《午後の陽》
  • 館内にはふんわりBGMが流れていました。鑑賞では無駄な情報は要らないため、BGMは流さない方が鑑賞の質が上がるのでは?

  • 館内は冬でも暑かったため、脱ぎ着しやすい服装がオススメ。

左《遙視》、右《Lineage》
  • 館内はライティングが若干強いため、調整してもよいのでは?一部白飛びしており、作品本来の良さを損ねている印象もあり。

《余映》、《凪》

▶︎ まとめ

買ったポストカード
《森暎》

塩谷亮の写実作品は、どう感じましたか?思いつきで寄った佐藤美術館は、行って良かったと実感しました!私は今まで、リアリズム技法を避けてきました。しかし、実物を見るとその良さや魅力、面白さがよくわかりました。新しいアートの側面を提供してくれた佐藤美術館に感謝です☺︎

▶︎ 今日の美術館飯

★3.4/カフェテラスボンテ 信濃町店 (東京都/信濃町) ー モーニングセット (¥800)
★4.1/カフェ ウォール (東京都/新宿三丁目駅) ー WALLのバランスごはん (¥1,380)

▶︎ あなたにオススメ

▼ 不動産関連の企業が運営する美術館

▼ 佐藤美術館から近い美術館(約1km)

▶︎ 次回予告

次回は、豊田市美術館(愛知県)で開催中の「櫃田伸也展」などの感想を投稿する予定です。


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