2026年7月23日 医療なんわか配信
医療の未来は「病気になってから」だけでは語れない。今日は、病気にならないための国家戦略、地域で薬を揃える新しい仕組み、そしてサプリメントの危険をいち早く察知する制度——三つがバラバラのようで、根っこに同じ問いを持っていた。医療を、どう設計しなおすか。
今日の注目ニュース
1. サプリメントの健康被害、報告義務化へ——厚労省専門部会が方針合意
厚生労働省の専門部会は7月23日、サプリメントを扱う事業者が健康被害の情報を自治体に報告することを「義務化」する方針に広く合意した。2024年3月に発覚した小林製薬の紅麹サプリ問題を直接の契機とした対策で、これまで「特定保健用食品」「機能性表示食品」に限られていた報告義務を、それ以外のサプリメント全般へと拡大する。
少し背景を整理すると、日本のサプリメント市場は1兆円を超える規模があり、何千種類もの製品が流通している。しかし多くは「食品」扱いで、健康被害が起きても事業者に行政への報告義務はなかった。小林製薬の事件では被害の声がなかなか行政に届かず、対応が遅れたという苦い教訓がある。今回の義務化によって、異常のシグナルを早期に集められる監視体制ができることになる。
かかりつけ医に持っていく薬は処方されたものだとしても、自分で買って飲んでいるサプリの安全性は意外と見落とされがちだ。どんなサプリに健康被害が集まっているか、これからは「見える化」が進む可能性がある。自分が何を飲んでいるか、今一度確認してみる機会かもしれない。
2. 岡山・倉敷で始まった「薬の地域統一」——県内初のフォーミュラリが運用開始
倉敷市の基幹病院と医師会・歯科医師会・薬剤師会・行政が連携し、岡山県内で初めての「地域フォーミュラリ」を策定。6月29日から運用を開始した(薬事日報が7月23日に報道)。対象は高血圧の治療薬ARBと脂質異常症の治療薬スタチンの2系統で、地域全体で使う推奨薬と代替薬を共通ルールとして設けた。
「フォーミュラリ(formulary)」という言葉は聞き慣れないかもしれないが、一言でいえば「地域で処方する薬を揃えよう」という合意の仕組みだ。同じ効き目の薬が何十種類もある中で、地域ごとに「これを使う」と決めておくことで、入院と退院をまたいで薬が変わってしまう混乱が減り、大量調達による医薬品の安定供給にもつながる。近年のジェネリック医薬品不足の経験を踏まえ、注目が高まっている取り組みでもある。
かかりつけ医でもらっている薬と、入院中に処方される薬が違う、というのは実はよくある話だ。フォーミュラリはその不一致を解消する試み。倉敷の取り組みが成果を上げれば、全国に広がる波及効果が期待できる。
3. 「U.E.N.O.Plan」公表——厚労省が「攻めの予防医療」を本格始動
厚生労働省は7月23日、上野賢一郎厚生労働大臣の頭文字を冠した予防医療施策パッケージ「U.E.N.O.Plan」を公表した。U=Understand(疾患リスクを理解する)、E=Exercise(運動)、N=Nourish(栄養・食事)、O=Optimize(最適化)の4本柱で、「病気になってから治す」という従来型の医療モデルから「病気にならない・悪化を防ぐ」へと転換を図る「攻めの予防医療」を、政府として本格的に推進する方針を打ち出した。
なぜ今なのかというと、日本の医療費は年間約45兆円規模に達し、高齢化の進行でさらなる増加が見込まれている。病気になった後の医療は命を救う一方、費用がかかり続ける。それに対して予防医療は「そもそも病気にしない」という発想で、長期的には医療費の抑制にもつながると期待されている。骨太の方針2026でも予防医療は成長分野として位置付けられており、政策の優先度が上がっている。
直接の影響はすぐには出ないが、がん検診や特定健診の受診率を引き上げる施策、食事・運動に関する国民向けガイドの充実など、生活に関わる情報提供が厚くなっていく見通しだ。「医療は病気になってからのもの」という意識を少しずつ変えていく、長い取り組みが始まった。
医療なんわか配信より
今日の3本、ひとことで問うなら「設計しなおす、か」だと思う。サプリの届け出義務、薬の地域統一、予防医療の国家戦略——どれも今まで「仕方ない」とされてきた構造に手を入れようとしている。なかでもフォーミュラリは、医師・薬剤師・病院・地域行政が同じテーブルに着くことで実現する。日本の医療の「どこでも同じ医療が受けられる」という強さに、「地域で協力して効率を上げる」という発想が加わりつつある。変化は地味に、でも着実に動いている。また明日。
