【第1話】お姫さまとオオカミさん~出会い~【ねんね前の読み聞かせ】

出会い
むかしむかし、あるところに お姫様とオオカミさんがいました。
お姫様はその国で一番偉い人だったので、 お友達がいませんでした。
オオカミさんは森の動物たちに怖がられていて、 友達がいませんでした。
そんな二人の物語です。
ここはユマール王国。 温かい風が吹く、平和な国です。
お城は石でできた三階建て。 大きすぎないけれど、しっかりしたお城です。
その一番上の角の部屋に、 八歳のお姫様――エイダが住んでいます。
エイダは小さな可愛らしい王冠を被り、 いつも綺麗なドレスを着ています。
「おはよう! 今日もいい日になりそう!」
エイダは窓を開けて、 光をいっぱい部屋に入れました。
本を読むのも、勉強も、嫌いではありません。 でも、エイダがもっと好きなのは――
お掃除です。
「埃さん、見ーつけた!」
エイダは箒を持って、 はたはたと楽しそうに歩きました。
そこへ――
ドシン、ドシン、カシャン、カシャン!
鎧の音を鳴らしながら、 お城の兵隊が駆け込んできました。
先頭にいるのは、兵隊さんのリーダー、名前はトーマス。
「お姫様! 今日も平和であります!」
トーマスはムキムキの体で、大きな声。 歩くたびに、鎧がぴかっと光ります。
「ありがとう、おはよう! トーマス!」
エイダはぱっと笑顔になりました。 でも、エイダには一つだけ、こっそり願いがありました。
(誰かと一緒に遊べたら、もっと楽しいのにな)
みんなは優しくしてくれます。 みんなはいつも丁寧で、お辞儀をしてくれます。
みんなが丁寧で優しい分、 「お友達」みたいに隣で笑える人がいなかったのです。
その日の昼。 エイダのお勉強が終わると、お城の人が言いました。
「お姫様。今日は森の入り口までピクニックに参りましょう。 花がとても綺麗だそうです」
「本当!? 行く!」
エイダの目がきらきらしました。
森はお城から少し歩いたところ。 お城の町を抜けて、草原との間の門をくぐると、 その先に一本道が続いています。
もちろん―― お姫様が外へ出るなら、みんなも一緒。
トーマス、兵隊たち、お世話をしてくれる大人たちが、 ぞろぞろ、ぞろぞろ。
エイダはちょっとくすっと笑って言いました。 「みんなでお散歩みたいだね」
でも、ピクニックの準備をしたのに、 走ったり、駆けっこをしたりはできません。 みんながいつもエイダの周りに並びます。
エイダはふと思いました。
(今だけ、ちょっとだけ… 普通の子供みたいに遊べたらいいのにな)
そこで、エイダはちょっとした悪戯を思いつきます。
森の入り口に着く前。 近くにいた、同じくらいの年のお城で働く女の子にひそひそ。
「ねえ、お洋服を交換してくれない? ちょっとだけ、だよ」
女の子はびっくり。 でも、エイダの目が真面目で優しかったので、 こくんと頷きました。
二人はこそこそ交換。 王冠も、女の子に預けました。
――すると、どうでしょう。 ぞろぞろの行列は、誰も気付かず進んでいきます。
エイダはそっと抜け出しました。
「一人探検! 行ってきます!」
森の一本道は明るく、鳥の声がいっぱい聞こえてきます。 「ホー、ホー」「キュキュ、キュー、キュー」「プルップゥ~、プルップゥ~」
葉っぱの隙間から、光がきらきら落ちてきます。
「わあ… 綺麗!」
エイダは嬉しくて、スカートを抑えながら走りました。 でも、楽しくて楽しくて―― いつの間にか、後ろの声が聞こえなくなりました。
「……あれ?」
エイダは立ち止まりました。 風がさらさらと囁きます。
さっきまで一人になりたかったのに、 いざ一人になると、胸の辺りがすーっと寂しくなりました。
「……でも、大丈夫。きっと戻れるよ」
エイダはそう言って、大きく息を吸いました。 そのとき――
ガサガサ!
近くの草が揺れました。 エイダはびくっ、と驚きましたが、すぐに勢いよく言いました。
「そこにいるのは誰? 私は敵じゃないよ! お話しがしたいの!」
しーん…。
ガサガサ… 今度はもっと小さな音。
エイダはそっと振り向きました。 そこにいたのは――
小さな子オオカミ。 ふわふわの灰色の毛。 大きな目は、怖いどころか優しく丸い目でした。
尻尾はぴん。 でも、怖がっているみたいに小さく震えていました。
「……ぼ、僕……」
子オオカミは、小さな声で言いました。
「僕、リティ。オオカミ…」
エイダは目をぱちぱち。
「リティ。私はエイダ!」
リティはもじもじしながら言いました。
「……みんな、僕を怖がるんだ。近づくと逃げちゃう。 僕… 友達、いない」
エイダはちょっとびっくりしました。 でも、すぐに真っ直ぐ言いました。
「私も友達、いないんだ。 みんな優しいけど… いつも『お姫様だから』ってなるんだよね」
リティの尻尾がぴくん。
「……じゃあ、一緒?」
エイダはぱっと笑顔になりました。
「うん! 一緒!」
リティはほっとした顔で、えへへと笑いました。
「えへへ… 嬉しい」
そのとき、エイダはふと気付きました。 リティの胸に、小さな星の模様があることを。
「その星、綺麗だね」
リティは照れて、胸を隠しました。
「……生まれた時からあるんだけど、僕もよく知らないんだ」
二人はそれから、綺麗な花を探したり、 追いかけっこをしたりして遊びました。
「エイダ、こっちだよ」
リティは森の道をすいすい。 エイダはそのあとをてくてく。
すると―― 遠くから聞こえました。
「おーい! お姫様ー! どこですかー!」
トーマスの大きな声です。
「いたー! こっちー!」
エイダは手を振って叫びました。 トーマスが駆け寄ってきます。
カシャン、カシャン!
「お姫様! ご無事でよかったぁぁ! このトーマス、心配で、心配で…!」
エイダはぺこり。
「ごめんね。でも大丈夫! いい出会いがあったの」
トーマスはきょろきょろ。 でも、リティはもう草村の陰に隠れていました。
エイダはこっそり草村に囁きました。
「リティ、またね。今度、遊ぼう」
草村がふわっと揺れて、小さな尻尾がぶんぶん。
「うん! またね!」
その夜。 お城に戻ったエイダは、部屋の窓から星を見ました。
「今日は… いい日だった」
エイダは布団に潜り込み、 枕元に小さな王冠をそっと置きました。
森の方では、リティがふわふわの尻尾を丸めています。
星がきらきら。
「また明日ね」
おやすみなさい。
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今回のお話は「はじめての出会いと、さみしさを分かち合うこと」がやさしく描かれていました。
同じように、気持ちをそっと大切にしてくれる絵本はこちらです。
👇お子さまと一緒に読む方はこちら👇
(ひらがな版へ)
※ひらがながよめる おこさまむけに、やさしく かきなおしています
であい
むかしむかし、あるところに
ひとりの おひめさまと
ちいさな おおかみが いました。
ふたりとも、
いっしょに あそぶ ともだちが
いませんでした。
これは、そんな ふたりの
はじめての おはなしです。
ここは ユマールおうこく。
あたたかい かぜが ふいて、
とても おだやかな くにです。
おしろは いしでできた
さんかいだて。
おおきすぎないけれど、
しっかりした たてものです。
いちばん うえの へやには、
8さいの おひめさま、
エイダが すんでいます。
エイダは ちいさな おうかんをかぶり、
きれいな ドレスを きています。
「あさだよ!
きょうも たのしい ひに なりそう!」
まどを あけると、
ひかりが おへやに
いっぱい はいってきました。
ほんを よむのも、
おべんきょうも、
きらいじゃありません。
でも、エイダが いちばん
すきなのは――
おそうじです。
「ほこりさん、みーつけた!」
ほうきを もって、
ぱたぱた あるきます。
そのとき――
どしん、どしん!
かしゃん、かしゃん!
よろいの おとを ならして、
へいたいたちが
おしろに はいってきました。
いちばん まえにいるのは、
リーダーの トーマスです。
「おひめさま!
きょうも へいわで あります!」
おおきな こえで、
ぴかぴかの よろい。
「ありがとう!
おはよう、トーマス!」
エイダは にっこり。
でも、こころのなかで
そっと おもっていました。
(だれかと いっしょに
あそべたら いいのにな…)
みんなは やさしいです。
でも、いつも ていねいで、
ちょっと とおくに いるみたい。
となりで いっしょに
わらえる ともだちは
いませんでした。
そのひの おひる。
「おひめさま、
もりの いりぐちまで
ピクニックに いきましょう」
「ほんと? いきたい!」
エイダの めが
きらきら ひかります。
もりは、
おしろから すこし あるいた ところ。
まちを ぬけて、
もんを くぐると、
まっすぐな みちが つづきます。
でも――
おひめさまが でかけるときは、
みんなも いっしょ。
トーマスも、へいたいも、
おせわの ひとたちも、
ぞろぞろ ついてきます。
「なんだか、
みんなで おさんぽ みたいだね」
エイダは くすっと わらいました。
でも、はしったり
あそんだりは できません。
みんなが いつも
そばに いるからです。
(すこしだけでいいから…
ふつうの こみたいに
あそびたいな)
エイダは、
ちいさな ひらめきを
おもいつきました。
ちかくにいた
おなじくらいの としの
おんなのこに、こっそり。
「ねえ、ふくを
かえてくれない?
ちょっとだけで いいの」
おんなのこは びっくり。
でも、うなずきました。
ふたりは こそこそ
ふくを こうかん。
おうかんも、あずけました。
すると――
だれも きづかないまま、
みんなは そのまま すすみます。
エイダは そっと
ぬけだしました。
「ひとり たんけん!
いってきます!」
もりの みちは あかるくて、
とりの こえが いっぱい。
「ホー、ホー」
「キュキュ、キュー」
はっぱの あいだから、
ひかりが きらきら。
「わあ… きれい!」
エイダは うれしくて、
はしりました。
でも――
いつのまにか、
うしろの こえが
きこえません。
「……あれ?」
たちどまると、
かぜが さらさら。
さっきは ひとりが
よかったのに、
いまは すこしだけ
さみしく なりました。
「だいじょうぶ。
きっと もどれるよ」
そのとき――
がさがさ!
くさが ゆれました。
エイダは びっくり。
でも、ゆうきを だして いいました。
「だれか いるの?
こわくないよ!
おはなし しよう!」
しーん…。
がさ…。
エイダが ふりむくと――
そこにいたのは、
ちいさな おおかみ。
ふわふわの はいいろ。
まるい やさしい め。
しっぽは ぴん。
でも、すこし ふるえています。
「……ぼく、リティ」
ちいさな こえ。
「おおかみ…」
エイダは にこっと。
「リティ!
わたしは エイダ!」
リティは もじもじ。
「みんな…
ぼくを こわがるんだ。
にげちゃうんだ。
ぼく、ともだち…いない」
エイダは うなずきました。
「わたしも いないよ。
みんな やさしいけど、
おひめさまって
よばれるだけなんだ」
リティの しっぽが
ぴくん。
「……じゃあ、いっしょ?」
「うん! いっしょ!」
ふたりは にっこり。
「えへへ… うれしい」
エイダは きづきました。
リティの むねに、
ちいさな ほしの もよう。
「その ほし、きれいだね」
リティは はずかしそう。
「うまれたときから
あるんだって」
それから ふたりは、
はなを さがしたり、
おいかけっこを したり。
「エイダ、こっち!」
リティは すいすい。
エイダは てくてく。
すると――
「おーい!
おひめさまー!」
とおくから トーマスの こえ。
「ここだよー!」
エイダは てを ふりました。
かしゃん、かしゃん!
「ごぶじで よかったぁ!」
エイダは ぺこり。
「ごめんね。
でもね、いい であいが あったの」
トーマスが みまわします。
でも、リティは
くさの かげに かくれていました。
エイダは そっと。
「リティ、またね。
こんど あそぼうね」
くさが ゆれて、
しっぽが ぶんぶん。
「うん! またね!」
そのよる。
エイダは まどから
ほしを みました。
「きょうは…
とっても いいひだった」
ベッドに はいり、
おうかんを そっと おきます。
もりでは、
リティが しっぽを まるめて
やすんでいます。
ほしが きらきら。
「また あした」
おやすみなさい。
このおはなしは、ここから つづいていきます。
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