焼きたての白い景色
うちには、白くまがいる。
もちろん北極のそれをつかまえてくるわけにはいかないので、当然ぬいぐるみの白くまだ。我が家にあるそう多くないぬいぐるみの中では、在籍期間が最も短い。
ひょんなことから我が家にやってきた白くま
彼?彼女?は黙秘を続けており、個人情報は何一つわからない。世帯主は、人気アイスの白くまが近隣のスーパーに在籍している可能性があるとして、引き続き、慎重に捜査をつづけている…とのこと。
また身元を調べている捜査本部長に直撃したところ
記者 :「白くまの出自を知りたがっている息子さんがいますが…」
部長 :『そんなことはどうでもいい!』
記者 :「息子さんのお気持ちはどうでもいいということですか?」
部長 :『コメントすることはない!』
記者 :「現場付近のスーパーは閉店したという情報がありますが?」
部長 :『スーパーの本部に聞いてくれ!』
記者 :「奥様からは何かありましたか?」
部長 :『熊みたいなお腹をどうにかしろ!…と(涙)』
記者 : …クスクス(笑)
部長 :(顔を赤らめ自宅ドアに入る)
記者 :「あっ!本部長!…」
部長 :『もうコメントすることはない!帰れ!』
記者 :「お…奥様が目の前に…」(笑)
本部 :『た…ただいま』
記者 : …クスクス(笑)
それはさておき、この白くまの身元はよくわからないが、銀行から自転車に乗ってきた白くまであることまでは判明している。
・・・
息子からこの白くまのぬいぐるみを託され、きれいに手洗いで洗浄し、もろもろの手段で消毒し、よく乾かして、神社にも参拝して、できるだけ丁寧に保護した。しばらく私の部屋の窓際を好んで過ごしていたが、いつのまにかデスク横にいて、私をなごませてくれている。なんとなく『白くまくん』と心の中で呼んでいる♪

白くまくんが、息子が保護する前にはどこにいたのか…それはわからない。きっと涙を流した子がいるかもしれない。あるいは涙を流した50近いおっさんがいたかもしれない。どこの、どんなかたの、どんな思いがここにあるのか…そんな想像力を働かせて、この白くまくんと共に過ごそうと思う。
なんてことのない話だ。
息子が拾ってきた白いくまのぬいぐるみを、きれいに洗って持っているだけの話。まぁ、しかしなんだろうか?白くまくんの哀愁なのだろうか?白くまくんの私への恩返しなのだろうか?白くまくんは私を恨んでいるのだろうか?白くまくんは元居たところへ帰りたいのだろうか?・・・
・・・
白くまくんには、自ら動くすべがない。この世に生まれてから、謎の流れにのり、天に定められた誰かの元で暮らし、誰かともにどこかへいき、誰かの手から他の誰かへ、これも…自分の意思とは無関係に。黙々とそこにいて、満足していようが不満だろうが不安だろうが、確かに存在する。
私は、ふつうに、何も考えずに動く。椅子の座り心地がしっくりこなければ、すぐ立ち上がって、椅子の状態を確認できる。座る姿勢を変えて快適な環境を整えることができる。でも、本質的には白くまくんと一緒で、私は自ら動くすべはないのかもしれない。自ら動いているつもりになっているだけで、むしろ景色が動いているのかもしれない。
白くまくんが、勝手に動いてきた?
白くまくんのいる【景色】が動いてきた。私のいる【景色】も動いているはずだ。そして、たまたま【白くまくんの景色】と【私の景色】が一致したとき、私には白くまくんが見え、白くまくんと私は、私の部屋という空間でともに存在している。
・・・
なにひとつ、動けない。でも、必ず動いている。そう感じられなくてもいい。【景色】のほうが勝手に、勝手なタイミングで動く。自分で動くことができない白くまくんが、私のところへ動いてきたのだ。動けるはずの私が動かないのは、動かないタイミングなのだ。
ずっと動かず、話もせず、とりあえず横にいる白くまくんは、たまたまここにいるだけだ。私も、このたまたまここにいるの「ここ」が【景色】。白くまくんは、ここまで旅してみてきた【景色】を語らずに語っているように思う。私に、旅してみよう!と背中を押しているのかもしれない。
白くまくん :「もう帰りたいんだけど!」(怒)
私 :『まぁまぁ、そう言わないで』
実は帰りたがっている…(汗)
えっ?
白くまくんが
お犬様に見えてきたんだけど…
嘘だろ?(笑)
白くまくんの写真…。なんだかパンに見えないか?
焼きたてほかほかの食パンを
いや、クロワッサンかな?
なんでもいいけど
おいしいパンを
まんなかでちぎったような…
もわもわぁ…と湯気が出そう♪
うまそうなパンの香りまで
届けてくれた…
息子に連れてこられた、白くまくん
意外とよろこんでいるのかもね。
私の大好きなパンに
化けてくれたくらいだからね
ただ…
白くまくんの目が、
私のお腹をにらんでいるような…
奥さんも……(汗)
ほかほかのパンを買って
みんなで食べよう!
白くまくんは
パンを食べるのだろうか?
サンキュー!白くまくん♪
これからもよろしくね。
