ミミ編 第1話:深夜のモニターの光だけで過ごす35歳フリーランスに、“ひと通のメッセージ”が届く夜。

ミミは35歳、
在宅でイラストレーターとして働くフリーランスだった。
中京の小さなマンションで一人暮らしを始めて5年。

朝から夜までパソコンに向かい、
クライアントの要望に沿ったイラストを描き続ける日々。

関東や関西からのリモート打ち合わせが増え、
人間関係は画面越しだけで完結する。

クールで自立した性格が幸いして、
仕事は順調だったが、
心のどこかで孤独感が募っていた。

特に土日の午後は、仕事が途切れ、部屋の静けさが重くのしかかる。
「また一人か……」
ミミはため息をつき、外出することを決めた。

そんなある土曜の午後、
ミミは中京美術館へ足を運んだ。
現代アート展のチケットを手に取り、静かな展示室を歩く。

作品の前に立ち止まり、
色使いや構図をじっくり観察するのが好きだった。
イラストレーターとして、常にインスピレーションを求めていた。

ある絵の前で、ミミは自然と立ち止まった。
抽象的な色彩が広がる作品。
青と紫のグラデーションが、どこか寂しげで、でも温かみがある。
ミミは無意識に呟いた。
「この色、落ち着く……」

隣にいた男性が、静かに反応した。
「僕もそう思います。この作品、寂しさの中に優しさがあるんですよね」
ミミは少し驚いて顔を上げた。
40代前半くらいの男性。
175cmくらいのがっしりした体型で、紺のジャケットが似合う。
穏やかな目で作品を見ていた。
名前は拓。

ITエンジニアで、土日の午後は美術館に来ることが多いらしい。
「僕も絵を描くのが好きで、インスピレーションをもらいに来たんです」
拓は低音の優しい声で続けた。

ミミはクールに振る舞いつつ、内心で共感した。
「私もイラストレーターなんです。この色使い、参考になります」

二人は自然に作品の感想を言い合った。
拓は「この青、夜の静けさを表してる気がします」と言い、
ミミは「そうですね……私も夜の絵を描くとき、
こんな色を使いたくなります」と答えた。
会話は途切れず、
展示室を一緒に回る流れになった。

静かな空間で、
作品の前で立ち止まりながら、
ミミの心が少しずつ開いていく。

拓の話し方は穏やかで、
押しつけがましくない。
ミミは疲れた心が癒されるのを感じた。

カフェコーナーで休憩することになり、
拓はコーヒーを奢ってくれた。
「イラストレーターさんなら、きっと面白い話がたくさんありますよね」
ミミは少し照れながら、
仕事の苦労やインスピレーションの取り方を話した。

拓は静かに聞き、
時々「それ、僕も参考になります」と頷く。
ミミは久しぶりに「誰かに話したい」と思える相手に出会った気がした。

展示が終わり、出口で別れの挨拶。 拓は名刺を差し出した。

「もしよかったら、
僕のSNSも見てみてください。
ゲーム配信のイラストも描いてるんです」

ミミは少し迷ったが、
スマホを取り出し、QRコードを読み取った。
「ありがとうございます。また、美術館で会えたらいいですね」
拓は微笑み、去っていった。

ミミは名刺を握りしめ、胸の鼓動が少し速くなるのを感じた。
土曜の午後は、まだ終わっていなかった。

——続きは、あなたの想像に任せるよ。

(ミミ編 第1話 終わり)

#官能小説 #大人の恋愛 #ロマンチック #深夜の妄想 #疲れた心に寄り添う #美術館 #イラストレーター #連作小説 #癒し小説 #感性が共鳴 #静かな出会い

いいなと思ったら応援しよう!