クミ編 第3話:映画帰りの雨の中、33歳キャリア女子のメイクより先に“強いふり”が崩れ始める。

映画館のロビーは、土曜の夜の賑わいに満ちていた。
クミは少し早めに着いて、チケットカウンターの近くでユウキを待った。
コートの襟を立て、スマホを弄りながら、胸のざわつきを抑えようとした。

このデート、ただの映画…… それだけのはずなのに、
ユウキの顔を思い浮かべるだけで、心臓が少し速くなる。

ユウキが現れた。 カジュアルなコートに、笑顔。
「クミさん、待たせちゃいましたか?」 低音の声が、
クミの耳に優しく届く。
クミはクールに首を振った。
「……ちょうどいいですよ」

二人はチケットを受け取り、スクリーンへ向かった。
席は並び。 暗闇の中で、ユウキの肩がクミの肩に軽く触れる。
クミはそれを意識して、座り直した。
映画が始まる。

ロマンチックなラブストーリー。
画面の光が、クミの顔を照らす。
ユウキは静かにクミの横顔を見ていた。

感動のシーンで、クミの目が潤んだ。
ユウキはそっと手を伸ばし、クミの指先に自分の指を重ねた。
触れるか触れないかの距離で、映画の余韻に合わせて。
クミの指が、わずかに震えた。
ユウキはクミの耳元で、囁くように言った。
「このシーン……クミさんみたいですね」

クミは目を伏せ、指を軽く握り返した。
胸のざわつきが、強くなる。
この人……本当にわかってくれる。

映画が終わり、二人はロビーに出た。
クミは少し照れながら言った。
「いい映画でした……ありがとう」

ユウキは微笑んだ。
「僕もです。クミさんと一緒に見られて、いつもより深く感じました」

ユウキはクミの目を見て、ゆっくりと言った。
「このあと、ごはんでもどうですか? 近くにいいレストランがあるんです」

クミはグラスを握りしめた手のように、指を握りしめた。
胸の奥が、静かに満たされる。
この人となら、もっと甘えてもいいかも。

クミは小さく頷いた。
「……少しだけなら」

二人は夜の街へ歩き出した。
レストランは駅近くの落ち着いたイタリアン。
窓際の席に案内され、ワインを注文した。

クミはグラスを傾け、
今日の映画のシーンを思い出した。
「映画の主人公みたいに、甘えられたらいいなって……思いました」
声が、少し震えた。

ユウキは静かに頷いた。
「クミさんなら、甘えてもいいと思いますよ」

クミの頰が、ワインのせいか、
それとも別のせいか、熱くなる。

ワインが回り、クミの体が少しふわふわしてきた。
外を見ると、雨が降り始めていた。
クミはグラスを置いて、ユウキの目を見た。

「帰らなきゃ……」
でも、酔っぱらったのか、体が重い。

ユウキはクミの肩に軽く手を置いた。
「このまま帰るのは危ないです。
僕の部屋が近いから、雨宿りしませんか?」

クミは雨に濡れた窓を見た。
胸のざわつきが、強くなる。
このまま帰ったら、冷えるし、酔いが回ってる…… 少しだけなら。

クミは小さく頷いた。
「……少しだけなら」

二人はレストランから出て、雨の中を歩いた。
ユウキはコートでクミを覆い、肩を抱くようにしてホテルへ向かった。

エレベーターが静かに上昇する。
狭い空間に、二人の息遣いが混ざる。
クミは壁に寄りかかり、ユウキの横顔を見た。
穏やかな目、優しい笑顔。

部屋に入ると、窓から雨に濡れた夜景が広がっていた。
照明は落とされ、柔らかな光だけが二人を照らす。

ユウキはタオルを渡し、クミの髪を拭き始めた。
指先が髪を梳き、耳たぶの近くを軽く撫でる。
クミの体が、わずかに震えた。

ユウキは低く、耳元で囁いた。
「ここ……気持ちいいですか?」

クミは目を伏せ、息を止めた。
耳たぶに触れる指先が、ゆっくりと円を描く。
触れるか触れないかの距離で、焦らすように。
クミの息が、少し乱れた。
「ん……」 小さな吐息が漏れる。

ユウキは髪を優しく梳きながら、首筋に指を滑らせた。
円を描くように、ゆっくりと近づけるけど触れない。
クミの体温が上がる。

耳たぶに息を吹きかけると、クミの体がびくんと震えた。
「はぁ……そこ……」 クミの声が、かすかに震える。

ユウキは焦らず、髪を指で梳きながら首筋を優しく撫でた。
クミの肌は熱くなり、汗ばむ。

ユウキは肩に手を置き、背中を軽く撫で下ろした。
クミの体がびくびくと震え、吐息が漏れる。
「気持ちいい……」
クミは恥ずかしがりながらも、ユウキの胸に顔を寄せた。

ユウキは低音で優しく囁く。
「いいよ。全部、俺に預けて」

部屋は二人の息遣いだけで満ち、
土曜の夜は溶け合っていた。
初めての夜は、まだ始まったばかりだった。

——続きは、あなたの想像に任せるよ。

(クミ編 第3話 終わり)

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