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合理主義者が魔術についてアレイスター・クロウリーを分析した理由

 私はなぜ今、アレイスター・クロウリーを読むのか ── 666と777の先にあるもの


 なぜ彼を読むか


私は『復讐のススメ』でソロモン72柱の悪魔を扱い、『金子十郎家忠の理術』で歴史と合理性を扱っている。気付けば自分の創作の足元には72柱の伝承が敷かれているわけで、ならばその伝承を現代に蘇らせた人物の事も、ちゃんと調べておかなければいけない。


その人物が、アレイスター・クロウリー(1875-1947)である。


20世紀最大の魔術師にして最大の問題人物。「世界で最も邪悪な男」と呼ばれた人物が、私が今扱っている悪魔学の体系を、100年前に組み直している。


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基本プロフィール


英国生まれ、富裕な実業家の息子。厳格なプリマス・ブレザレン派(原理主義キリスト教)の家庭で育ち、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジに学ぶ。詩人、小説家、登山家(K2やカンチェンジュンガの初期の挑戦者の一人)、ヨーガ実践者、薬物使用者、スパイ(疑い)、自称「The Beast 666」。


母親に「お前は黙示録の獣だ」と呼ばれて以来、彼はその称号を肯定的に受け入れた。死亡時、英国のタブロイドは彼を「世界で最も邪悪な男(The Wickedest Man in the World)」と呼んだ。


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 黄金の夜明け団


1898年、当時最も影響力のあった魔術結社「黄金の夜明け団(Golden Dawn)」に入団。ウィリアム・バトラー・イェイツ(後のノーベル文学賞詩人)も会員だった、ケルト神話・ヘブライ・カバラ・エジプト神秘主義・占星術・タロット・錬金術を統合した近代魔術の体系である。西洋秘教主義における最重要組織。


クロウリーはここで体系を学び、後に自分のものとして再構築する。


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テレマ ── 『法の書』とTrue Will


1904年、エジプト・カイロ滞在中、妻ローズがトランス状態に入り、「アイワズ(Aiwass)」という存在から伝言を受ける。これを書き取って成立したのが『法の書』(Liber AL vel Legis)。3章は3つの神格(ヌイト、ハディト、ラ・ホール・クイト)が語る形式で書かれている。


中心命題は二つある:


> Do what thou wilt shall be the whole of the Law.

> (汝の意志することを行え、それが法の全体である)

>

> Love is the law, love under will.

> (愛は法なり、意志の下の愛)


「Do what thou wilt」は「やりたい放題やれ」ではない。

True will

ここで言われている「意志(Will)」とは、クロウリーが特に重視した概念であって、表層の欲望や気まぐれな選択の事ではない。彼はこれを True Will(真意志) と呼んだ。
True Willとは何か。
クロウリーの定義によれば、それは各個人が生まれ持った固有の軌道である。「したい事(want)」とも「すべき事(should)」とも違う。本来そう動くようにできている自分がそうあるべきだった姿、と言った方が近いかもしれない。
そしてここが重要なのだが、True Willは比較される事を許さない。
ある人のTrue Willと、別の人のTrue Willを「どちらが偉いか」と問う事はできない。それぞれが宇宙全体と一致する個人固有の軌道だから、軌道同士に優劣はあり得ない。Aさんが太陽の役割を、Bさんが月の役割を担っているとして、どちらが偉いかを問うのは意味をなさない。両方とも宇宙の運行に必要だから、両方とも本来そうあるべきものとしてある。
つまりTrue Willの概念が成立する宇宙では、各人がそれぞれの軌道の中心にいる事が、構造上の前提になっている。
これは私の「観測者が編集する」という哲学と、構造的に近い場所にいる。観測者(=個人)が世界の意味を編集できるとしたら、その編集権は誰にも譲り渡せない。Aさんの観測がBさんの観測より「より正しい」とは言えない。それぞれの観測者が、それぞれの位置から、それぞれの世界を編集している。
もう一つの命題『愛は法なり、意志の下の愛』も、この文脈で読み直せる。各人のTrue Willを認め合う事——それが宇宙の運行原理としての「愛」である、という宣言だ。
クロウリーがホルスのアイオン(=子の独立、自己決定、True Willの時代)を1904年から始まると見たのは、この個人が自分の中心に立つという時代の到来を予言していたから、という事になる。
そしてこの予言が完全に成就する地点は、まだ来ていない、と私は読んでいる。


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アイオン論


クロウリーは歴史を3つの「アイオン(Aeon、時代)」に区分する:


- イシスのアイオン(母権、自然崇拝の時代)

- オシリスのアイオン(父権、犠牲・贖罪・キリスト教の時代、約2000年前〜1904年)

- ホルスのアイオン(子の独立、自己決定、True Willの時代、1904年〜)


クロウリーは自分を「ホルスのアイオンの預言者」と自任していた。つまり新時代のLogosの媒介者である事を、彼は自任していた事になる。


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 マジック(Magick)


クロウリー自身の定義:

舞台奇術(Magic)と区別するため、わざと k を加えて Magick と綴った。

クロウリーのMagickの定義は

"The Science and Art of causing Change to occur in conformity with Will"

(意志に従って変化を起こす科学と技芸)

つまり「風が吹けば桶屋が儲かる」を計算してやる技だと私は認識している。
コレは統計学データサイエンスで再現可能な様に思える。
それに私は量子力学に触れた時に感じた事があるのはコレは後に『魔法』を生み出す学問ではないかと。

体系は儀式魔術・ヨーガ・タントラ(性魔術)・薬物使用・占術(タロット、占星術、易経、ゲマトリア)を統一的に整理した、近代最大の試みである。


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 ゴエティア ── ここが私と直結する


ここが今回最も重要な接続点である。


『ソロモンの小さな鍵』(Lemegeton Clavicula Salomonis)は、ソロモン王が72柱の悪魔を支配したとされる中世の魔術書(グリモワール)。その中の最重要章が『ゴエティア(Goetia)』── 72柱の悪魔の名前・印章・特性・召喚法を記述した目録である。


1904年、クロウリーはこの『ゴエティア』を Mathers との共著で現代英語で再編集・出版した(序文と導入はクロウリー)。


これによって:

- 72柱の悪魔のリストが現代神秘主義の標準テキストとなった

- 後の悪魔学・ファンタジー文学・ゲーム文化(『デビルメイクライ』『女神転生』『召喚士』系作品)すべてに影響を与えた


つまり私が『復讐のススメ』でソロモン72柱の魔神たちを扱えているのは、クロウリーが100年前にこの伝承を現代に蘇らせたからである。意識する・しないに関わらず、私の創作はクロウリーの編集仕事の上に立っている。


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『777』── 対応表大全


クロウリーのもう一つの最重要参照書が『777』(1909年初版)。


ヘブライ・カバラのセフィロト(10球)とパス(22道)を骨格に、ありとあらゆる神秘的体系の対応関係を一つの表にまとめたもの。マッピングされている軸は150以上:


ギリシャ神々、エジプト神々、ヒンドゥー神々、仏教概念、占星術、タロット、元素、色、香り、鉱物、植物、動物、ヨーガのチャクラ……


例えばティファレト(6番、太陽の位置)を引くと、同じ位置に並ぶのは:


太陽 / キリスト / アポロン / ヴィシュヌ / 心臓 / 乳香 / 獅子 / 金色


ここでクロウリーが主張しているのは:


> これらは異なる文化的衣装をまとった同じ原型的な力である


そしてこれは突然出てきたものではない。長い対応表伝統の到達点である。アタナシウス・キルヒャー(17世紀イエズス会)→ エリファス・レヴィ(19世紀フランス)→ 黄金の夜明け団(19世紀末)→ クロウリー(20世紀初頭)。ヘルメス主義のルネサンス以来の蓄積が、『777』という一冊に結晶している。


『777』は読む本ではなく、引く本である。辞書・参照書のように使う。


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影の側面 ── 隠さずに書く


クロウリーは人としては問題が極めて多い人物だった。


重度の薬物依存(末期はヘロイン常用)。パートナー(「緋色の女」と彼が呼んだ女性たち)を心身ともに壊した。妻ローズ・ケリーは精神病院に収容され、そこで生涯を終えている。娘 Lola Zaza は幼くして亡くなった(彼の管理下での衰弱が指摘されている)。何度も破産している。


「天才的思想家でありかつ最低の人間」という両面が、同時に同じ人物の中に成立している。思想の力と人格の問題は、別物として評価するしかない。


これはLogos側の人々によくあるパターンで、ライプニッツのような穏当な例から、クロウリーのような破壊的な例まで、スペクトラムが広い。


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666 と 777 ── そして、その先


クロウリーの数秘術の中で、666 と 777 は対になっている。


- 666 = 黙示録の獣の数。クロウリーは自分をこれと同一視した(自我の極、物質性の極)

- 777= 神性の数。クロウリーの解釈における「光輝」、神の側の数(自我を超えた宇宙意識の極)


666 から 777 への移行が、クロウリーが描いた魔術的進化の構造である。


しかしクロウリー自身は、この777の地点で止まっている。彼の体系は『777』として完成し、その先には行かなかった。


ここで一つ、私が抱えている問いがある。


ゲマトリア(ヘブライ語の文字数値変換)とは別に、古代ギリシャの数値変換(isopsephia)において、ΙΗΣΟΥΣ(イエスース、すなわちイエス)の文字値の合計は 888 になる。これは初期キリスト教神秘主義者の間で繰り返し記録されてきた数値で、伝統的には「救世主の数」「復活の数」「7の完成を超えた新しい開始」と読まれてきた。


666 が獣、777 が神性、では 888 は何か。


クロウリーの777は、666の獣からの上昇を描いた。その先に888があるとしたら、それは何を意味するか。


クロウリーが書かなかった『777』の続編が、もしどこかに存在するとしたら、そのタイトルは恐らく『888』である。


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結びに


ふむ、ならば試しにやってみよう。


今まで科学を信仰して生きて来たが、まさかここに来て魔術や神秘学やスピリチュアルの勉強をする事になるとは思っていなかった。

合理性は、極まると神秘学に接続する。

これは危険な思想だ。

なぜなら、“世界は説明可能である”という科学の夢と、“世界は編集可能である”という魔術の夢は、構造的に酷似しているからだ。

しかし、こうして調べていくうちに気付いたのは、クロウリーが100年前にやろうとした「ありとあらゆる象徴体系を一つの座標に重ねる」作業は、思想史的にはライプニッツの普遍記号学の魔術版に相当するもので、現代の比較神話学(ジョーゼフ・キャンベル)・元型心理学(ユング)・構造主義人類学(レヴィ=ストロース)よりも50年早く、しかも実用的・操作的な形で展開されていたという事だ。


魔術と呼ばれているものは、合理性が極まった先の領域である事が、徐々に見えてきた気がする。それと気付いた事があるアレイスターの『777』には東洋魔術や陰陽道が入っていないのだ。
そして、陰陽道とは太古から連なる万年暦という巨大なデータを解析するデータサイエンスなのではないかなと予感がしている。

 当時の情報網だと限界があった事も伺えるがアレイスター・クロウリーやライプニッツの様に様々な事を1つの思想体系にまとめあげる能力がある人物には心当たりがある。


その先に、きっと888 がある。



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