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【赤いホッペと言われた】

評判の町医者という
看板に吸い寄せられた。

 


「ポンポン見せてね」




診察室に入って三十秒。
言葉を出す前に、
二歳児として扱われていた。



マスクを外すと、
先生は顔を覗き込み、
「赤いホッペだねぇ。今日、甘えたい日?」
抜かした。



間髪入れず、
ためらいのないタッチで頬をポンポンと叩く。
え、なにこれ。
赤ちゃんかペットのどちらかにされている。



「じゃあお口あーん」 




この先生は
私の扁桃腺に話しかけはじめた。



「おっ、いい挨拶だ。
キミ、今日すごく元気だねぇ。
声が『会いたかったよ』って言ってる」 

 

――誰がだ。扁桃腺はただ腫れてるだけだ。



視線が首元で止まる。
鍵のペンダントだけが長く見られている。



「その鍵ねぇ……
どこ、閉めてるやつ?開けていい?」



薄ら笑い。追撃の速さ。 


「ぼく、鍵師の資格も持ってるんだ。冗談だよ」


――どこまでが嘘で、
どこからが妄想なんだ。
シャイニング・ウィザードで葬るべきか。


聴診器を当てながら
「いい心音だ、リズムが恋の予感だねぇ」
呟いた。
謎の劇場を淡々と完遂している。



──見当違いな
欲望の誤読合戦は始まったばかりだった。





―再診の方はこちら―


 


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