「良い提案なのに通らない…」を打破する。福祉の想いを経営者に届ける“言葉の翻訳術”
福祉施設の定着支援は「やさしさ」だけでなく経営戦略である
こんにちは、大阪市でストレスチェックやハラスメント対策・コミュニケーション向上プログラムを支援しております、株式会社EAPサポート喜びの中井裕規です。
結論から言うと、職員の定着支援や相談窓口づくりは、単なる「やさしい取り組み」ではありません。
特に福祉施設や就労支援の現場では、【人が辞めない仕組み】そのものが、経営を支える重要な戦略になります。
最近、ある福祉施設で働く専門職の方から、こんな相談をいただきました。
「利用者さんから雇用された方が多い職場なのですが、定着支援が手厚くなく、離職される方も多いです。相談窓口を作りたいと提案しましたが、通りませんでした」
私はこの話を聞いて、とても大事な視点だと感じました。
同時に、少し厳しいことを言えば、【必要性がある】だけでは、組織は動かないことも多いのです。
「良いことです」だけでは、提案は通らない
福祉の現場には、想いの強い方がたくさんいます。
困っている人を支えたい。
安心して働ける場を作りたい。
利用者さんが就職したあとも、孤立しないようにしたい。
これは本当に大切な視点です。
私自身も、EAPの仕事をするうえで「誰もがみな、喜びあふれる人生を歩めますように」という願いを大事にしています。
ただし、経営者や管理者に提案する時には、もう一段、翻訳が必要です。
それは、【その取り組みが経営にどう役立つのか】という視点です。
特に福祉事業は、一般的な物販やサービス業のように「売れば売るほど売上が伸びる」という構造ではないことが多いです。
制度、報酬単価、人員配置、定員、施設規模など、さまざまな枠の中で運営されています。
だからこそ経営者は、どれだけ想いがあっても、常にお金、人員、継続可能性を見ています。
これは冷たい話ではありません。
事業を続けなければ、支援そのものが続かないからです。
離職は「人が一人辞めた」だけでは終わらない
利用者さんが職員として働き始めたあと、定着できずに辞めてしまう。
これは本人にとっても、職場にとっても大きな損失です。
その損失は、感情面だけではありません。
たとえば、次のような影響があります。
・現場の人手が減る
・残った職員の負担が増える
・採用活動が必要になる
・新しい人を育てる教育コストがかかる
・職場全体に「また辞めた」という空気が広がる
・利用者さんやご家族、紹介元からの信頼にも影響する
つまり離職は、単なる人事課題ではなく、経営課題です。
相談窓口や定着支援を提案する時には、
「困っている人を助けたいです」だけでなく、
【離職防止、採用コスト削減、教育コスト削減、職場の安定につながります】
という言い方が必要になります。
「就職できた」よりも「働き続けている」が価値になる
就労支援の現場では、「利用者さんが就職した」という成果はとても大切です。
しかし、そこで終わってしまってよいのでしょうか。
本当に価値があるのは、就職したあと、その人が働き続け、役割を持ち、職場の中で必要とされている状態ではないでしょうか。
私はここに、福祉施設の大きなブランディングの可能性があると感じています。
「この施設は、就職後も支えてくれる」
「この施設から就職した人は、働き続けている」
「利用者さんが、職員としても活躍している」
こうした実績は、利用者さんやご家族にとって安心材料になります。
相談支援専門員、医療機関、行政、地域の関係機関から見ても、信頼につながります。
福祉施設におけるブランディングとは、きれいな言葉を並べることではありません。
【支援の結果として、人が育ち、働き続け、次の人の希望になること】だと思います。
内部の専門職が動けることには、大きな価値がある
外部EAPを導入することも、もちろん有効です。
外部だからこそ相談しやすいこともありますし、専門的な第三者として関われるメリットもあります。
一方で、内部に専門性を持つ人がいて、その人が定着支援や相談体制づくりを進められるなら、それも非常に大きな価値です。
なぜなら、現場の文化、利用者さんの背景、職員同士の関係性、代表の価値観を知っているからです。
外部の専門家には見えにくい細かな空気を、内部の人は感じ取ることができます。
そこにEAPや職場メンタルヘルスの視点が加わると、現場に合った支援が作りやすくなります。
ただし、ここでも大事なのは、専門性を振りかざさないことです。
「こうあるべきです」
「相談窓口は必要です」
「支援が足りていません」
これだけでは、反発されることもあります。
そうではなく、代表や経営層が見ている課題とつなげることです。
たとえば、こんな言い方です。
「職員の定着を高めるために、まず小さな相談の仕組みを作りませんか」
「採用や教育の負担を減らすためにも、離職前に相談できる導線が必要だと思います」
「利用者さんが職員として働き続けられることは、施設の信頼にもつながると思います」
このように伝えると、支援の話が経営の話になります。
EAPは「相談窓口を置くこと」だけではない
EAPというと、外部相談窓口をイメージされる方も多いと思います。
もちろん、それも大切な機能です。
しかし、EAPの本質は、ただ相談窓口を設置することではありません。
働く人が困った時に早めに相談できる。
管理職が一人で抱え込まない。
職場の問題を個人の弱さだけにしない。
必要に応じて、組織の仕組みや関係性にも働きかける。
こうした支援を通じて、【人と組織の両方を支える】のがEAPの大事な役割です。
厚生労働省の職場メンタルヘルス対策でも、セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアという考え方があります。
つまり、本人だけに頑張らせるのではなく、上司、社内担当者、外部専門家が連携して支えることが大切なのです。
提案が通る人は、正しさを「相手の言葉」に翻訳している
職場改善の提案が通る人は、正しいことを言っているだけではありません。
相手が意思決定できる言葉に翻訳しています。
福祉の現場であれば、支援の意義。
経営者に対しては、定着、採用、信頼、継続可能性。
管理者に対しては、現場負担の軽減。
職員に対しては、安心して相談できること。
利用者さんやご家族に対しては、就職後も孤立しないこと。
同じ取り組みでも、見る人によって価値の見え方は違います。
だからこそ、相談窓口や定着支援を提案する時には、
【誰にとって、どんなメリットがあるのか】
を丁寧に整理する必要があります。
想いだけでは弱い。
数字だけでも冷たい。
その両方をつなぐことが、これからの福祉現場にも、企業のメンタルヘルス対策にも必要だと感じています。
人が辞めない職場は、偶然できるものではありません。
人が育ち、働き続け、喜びを感じられる仕組みを、意識して作っていくものです。
その一歩として、相談しやすい仕組みづくり、定着支援、管理職支援、外部EAPの活用を、ぜひ経営課題として考えていただけたら嬉しいです。
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✍️ 中井裕規(なかい ゆうき)について
株式会社EAPサポート喜び 代表取締役
公認心理師/精神保健福祉士/社会福祉士/CEAP(国際EAPプロフェッショナル)
東京大学大学院 医学系研究科「職場のメンタルヘルス専門家養成プログラム」修了。
国際EAP協会日本支部 研修委員長
「誰もがみな、喜びあふれる人生を歩めますように」という願いを胸に、
企業のメンタルヘルス対策、ハラスメント防止、チーム力向上支援などを通じ、
「人が辞めない・育つ・活躍する職場づくり」を伴走支援しています。
🌐 メディア・公式サイト
Webサイト:https://eap-yorokobi.jp
公開セミナー:https://yorokobi.peatix.com/
💭 最後に
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職場のメンタルヘルスを「制度」ではなく、お互いを思いやる「文化」へ。
今日からできることを、一緒に広げていきましょう。
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